そんな話はさておき、剣の世界で第3話、お楽しみください。
森を抜けた俺は案内妖精エシリアからこの世界のことやスキルなどについて説明して貰った。そして、俺たちは今次の目的地であるバルトリア街の入り口に立っていた。(エシリアは浮いているが)バルトリア街は色々なところから商売人や商会が集まりとても豊かな街だそうだ。
「案外近かったな。歩いて20分くらいしか経ってないんじゃないか?」
「ラッキーだったねー、マスター。森とバルトリア街がこんなに近かったなんて。とりあえず街に入って、良さそうな飲食店を探そー。」
エシリアはそう言い、真っ先に街へと入っていった。俺もエシリアを追いかけるようにして街の中へと入っていった。
街の中は人が沢山いて、とても賑わっていた。俺たちは良さそうな店を見つけてそこで食事をした。これは、会計の時にわかったことだが、この世界では、金貨1枚で1000エギル(この世界でのお金の単位)、銀貨1枚で100エギル、銅貨1枚で10エギル、青銅貨で1エギルだそうだ。
会計は俺とエシリアの二人分(?)で合計865エギルだった。手持ちはわずかの135エギルである。
「これからどーする?」
食事を終えて眠くなったのか、エシリアが大きくあくびをしながら言った。
「とりあえず役所で個人登録カードを貰ってから冒険者ギルドに行ってみるか。」
俺はそう言った後にエシリアのあくびがうつったのか、大きくあくびをした。
俺はエシリアの案内で役所に着いた。中へ入り個人登録カード受付所というところがあったので、俺たちはそこへ行った。受付所の窓口には若い女性が一人いた。
「個人登録カード制作希望の方ですか?」
彼女はニッコリと優しく微笑んだ。
「はい。そうです。」
俺は少し緊張気味で返事をした。
「でしたら、こちらのカードに名前をお書きください。」
そう行って受付の女性は俺にスマホぐらいの大きさのカードを手渡した。俺は名前を書く欄に自分の名前を書いた。不思議なことに俺は自分の知らない文字を書いているがそれが読めるのもまた不思議なことだ。どうやらこの世界に飛ばされてくる時に何かされたのだろう。
俺は自分の名前を書き終わると受付の女性にカードを渡した。
「ありがとうございます。では、そのカードの魔法陣の中心にあなたの指をおいてください。どの指でも構いませんよ。」
受付の女性の言われた通りに俺は自分の右手の人差し指を魔法陣の中心に置いた。すると、カードは光り出し、次々と文字が追加されていく。そして、光がおさまると、受付の女性はカードを手に取り、書かれた内容を確認した。
「えーと。名前はケンマ ヒガシノ、変わったお名前ですね。性別は男性で、年齢は17歳。出身地は………ニホン?聞いたことありませんね。もしかして異世界から来たのですか?」
受付の女性は疑問に思いつつも笑顔で俺に質問した。
「はい。そうですけど、意外と冷静ですね。異世界の人はよくこちらの世界に来られるのですか?」
「いいえ、異世界の方を見たのはあなたが初めてですよ。しかしながら、異世界人に魔王討伐を協力してもらうというニュースが世界中に知らされていますから、あまり驚くことでもありませんよ。」
そうだとしても、ここまで冷静にはいられないだろう。これは客に対するプロとしての心得なのだろうか。
「すみません。話がそれましたね。では、続きを拝見させていただきます。あなたのステータスは…、筋力が高め、守備力は平均並みですね。あと、魔力も平均並みで、運も平均並みですね。全体的にステータスは高い方ですね。ステータスはモンスターと戦ったりして経験を積むことで少しずつ上がっていきます。また、経験を積んでいけば新たなスキルを習得することもできますよ。」
わかりやすい説明をありがとうございます、受付のお姉さん。
「取得済みのスキルは…『剣製Lv1』ですね。大変珍しいスキルですよ。」
異世界人なのか、俺のスキルは珍しいらしい。どれくらい珍しいのか聞いてみると、レアリティでは、上から2番目ぐらいの部類らしい。続けて受付の女性は話した。
「続けて取得済みのアビリティは…『呪い無効』…のみですね。」
受付の女性はそう言った後に小さく咳払いをし、話を続けた。
「あとは、健康状態も異常ありませんね。これで登録は完了しました。カードの情報は自然に更新されますのでこまめに確認してくださいね。」
そう言って受付の女性は俺にカードを手渡した。俺は受付の女性にお礼を言いながらカードを受け取った。
「もし時間がおありでしたら、冒険者ギルドへ向かってはいかがですか?お手軽に冒険者登録も出来ますし、その後すぐにお金を稼ぐこともできますよ。」
なるほど、だからエシリアは冒険者ギルドへ行こうとしていたのか。俺たちは受付の女性にお礼を言い、役所を出た。次の目的地は冒険者ギルドだ。同じ街の中とはいえ、何が起こるかわからない。俺たちは気をつけて進むことにした。
「……………。」
受付嬢は俺たちが役所を出てから少しぼーっとしていた。そしてクスッと小さく笑うと、
「『呪い無効』…ですか…。もしかしたら、彼がいずれ魔王を倒す勇者になるかもしれませんね…。」
そういった後に彼女は「まさかね。」と小さく呟き、自分の仕事へと戻るのであった。