剣(つるぎ)の世界で   作:ネギ丸

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すみません。更新遅れました。


第11話 : 大忙しな1日

ゴーレムを倒し、その後に黒猫魔法道具店へ行った日の翌日の朝、俺たちはとある採取クエストを受けていた。

 

「なかなか見つからないねー。」

 

エシリアは額の汗を拭いながらそう言った。今回俺たちが受けたクエストは魔力を注ぐと熱を発する特殊な鉱石『ヒートサイト』の採取だ。最近沢山の魔法道具が開発されるのと同時にそれらの材料が減ってきているとのことだ。そのため、冒険者ギルドでもそういった道具の材料の採取を依頼しているらしい。そして今回俺たちはその依頼の一つのヒートサイトの採取を受け、バルトリア街近くの鉱山でヒートサイトの採取をしているのだ。

 

「さっきからマナクリスタルや魔鋼鉄などの鉱石は見つかるのですが、どれも魔力の濃度が低くて買い取って貰えるかわかりませんし…。」

 

セレスも少し困ったように言った。今回の採取は、俺が先日のゴーレム戦の後に習得した新スキル「探索」を使用して魔力を持つ鉱石のみを探知できるようにしているのだが、目的の鉱石がなかなか出てこない。

 

「まずいな。このままだと昼を過ぎるかもしれない。」

 

今の時間は午前10時ごろ。俺たちが探索を始めて約2時間が経過している。午後からはセレスが頼んだ杖を黒猫魔法道具店に取りに行かねばならない。しかし、目的の鉱石は一向に見つかる気配がしない。

 

「こういったときには盗賊の職業の方がいたら簡単に済むんですけどね。」

 

セレスは苦笑しながらそう言った。今後、盗賊のパーティメンバーを募集しようかな。

 

「んー、こうなったら仕方ないわね。これを使うと少し疲れるけど、このままだと日が暮れてもおかしくないから最善は尽くすべきね。」

 

エシリアはそう言って深呼吸をした後に魔法を唱えた。

 

「『ラッキープラス』!」

 

すると、柔らかい光が俺とセレスを包んだ。エシリアは少し疲れたように俺の肩に乗った。

 

「これはピクシー族に伝わる運勢の上がる魔法よ。私の魔力だと1日一回が限度だけど、効果は期待できるよ。」

 

そう言うと、エシリアは俺のカバンに入った。どうやら中で寝るようだ。

 

「エシリアさんも頑張ってくれたことですし、私たちも頑張って採掘を続けましょうか。」

 

セレスはそう言うとせっせと作業に戻った。俺もエシリアの頑張りに応えようとさっきよりも作業のペースを速めた。

 

 

 

 

 

「今回お持ちいただいた鉱石の買取価格は120000エギルとなります。」

 

そう言って受付嬢のカリータさんは俺に今回の報酬金の入った袋を手渡した。

あの後、エシリアの支援魔法を受けた俺たちが鉱山を掘り進めていると、それはそれは気持ち悪いほどに大量のヒートサイトが採掘された。そしてそれに加え、魔力の濃度が高いマナクリスタルなどの貴重な鉱石も少なからず採掘することができ、予想以上の金額になったのだ。

 

「なんか、すごかったですね、あの時は…。」

 

セレスは疲れたようにそう言った。次から次へと鉱石が出てきたので、かなりの量を採掘したと思う。疲れて当然だろう。

 

 

 

報酬を貰った俺たちはギルドの酒場で昼食をとり、黒猫魔法道具店へと向かった。店に着き、俺達はその店の扉を開けて中へ入った。今はちょうど昼過ぎ、多くのお客さんが店の中で買い物をしていた。

 

「いらっしゃいませ。この度は黒猫魔法道具店にご来店いただきまことにありがとうございます。」

 

この前と何一つ変わらないエルさんの挨拶が元気よく聞こえた。

 

「こんにちは、エルさん。昨日注文した杖を取りに来ました。」

 

「おー、セレスだにゃ。ちょうどさっきできたところだからちょっと待っててほしいにゃ。」

 

そう言って、エルさんはレジ裏の扉を開け中へと入っていった。そして、一本の綺麗な杖を持って出て来た。

 

「待たせたにゃ。これが頼まれてた杖だにゃ。我ながら会心の出来だったにゃ。」

 

そう言ってエルさんは持っていた杖をセレスに手渡した。その杖は暗い色の木をベースとし、赤い装飾が施されている。そして、杖の先端には赤いマナクリスタルが輝いている。

 

「うわあ〜〜!ありがとうございます!このマジックオークの色艶ッ!マナクリスタルの輝きッ!最高です!」

 

杖を受け取ったセレスはかなり興奮しながら杖を色々な角度から見ている。俺はその様子に思わず笑ってしまった。それに気づいたのか、セレスはハッと我に返り、顔を赤くさせ、下を向いた。

 

「にゃはは。気に入ってもらえて何よりだにゃ。いつでも修理は受け付けるから、壊れたら持って来るといいにゃ。それじゃあ、私は仕事に戻るからまた何かあったら声をかけてくれにゃ。」

 

ルナさんはそう言って小走りでレジへと戻って行った。

 

「この後どうする?」

 

俺はセレスに聞いた。さっきのことを気にしているらしくセレスはまだ顔を赤くしていた。

 

「そ、そうですね。今日このあとなにも予定入れてなかったですね。どうしましょうか。」

 

セレスは少し考えながらそう言い、そして、なにかを思いついたようにハッとし、少しニヤつきながら言ってきた。

 

「今からクエストを受けません?すこし時間もありますし、新しい杖の性能も確かめたいですし。」

 

セレスはまるで子供のように目を輝かせ、興奮を抑えきれないようにウズウズとしている。こうなってしまっては、断ったらなんか悪いと思い、俺はセレスの意見に賛成した。

 

 

 

 

黒猫魔法道具店を出た俺たちは冒険者ギルドで受けるクエストを探していた。

 

「出た、どのクエストを受けるんだ?今回はセレスの提案だし、任せるよ。」

 

俺はそう言い、クエスト掲示板に貼られているいくつかのクエストに目を通した。

 

「そうですねー。今回は杖の性能を確かめたいので、できれば体の大きいやつがいいですね。」

 

セレスはそう言いながら、受けるクエストを選んでいる。そして、しばらくして一枚の依頼者を手に取り、俺に見せた。

 

「それでは、これはどうでしょうか?農家を襲うジャイアントゴートです。羊型モンスターの変異種とされており、体長は平均で2〜3mで、人も襲うことがあるそうです。動きもそこまで素早くないですし、魔法の標的にするにはオススメですよ。」

 

「それじゃあ、それにするか。やばい状況になったらとりあえず退散ということで。よし、出発するか。」

 

こうして俺たちはジャイアントゴートが出没しているという農家畑の近くまで行くことにした。午前中にクエストを受けていたので、特に用意するものもなく、俺たちはすぐに目的地へと向かった。

 

 

 

 

農家の畑に着いてからすぐに俺たちはジャイアントゴートと出くわした。体長は約3mほどで全身は黒い体毛で覆われている。そのせいで物理攻撃があまり効果がなく、冒険者も手を焼くほどらしい。

 

「それでは、私は魔法の詠唱をしますから、ケンマさんはなるべくジャイアントゴートの気を引いてください。私が合図したら全力でジャイアントゴートから離れてくださいね。魔法に巻き込まれる可能性がありますので。」

 

セレスはそう言って魔法の準備に取り掛かる。そして、セレスの高まる魔力を感じ取ったのか、ジャイアントゴートがセレスの方に突進してきた。素早くないとはいえ、あの巨体にぶつかったらひとたまりもないだろう。

俺はスキルで片手剣を作り、ジャイアントゴートへと近づき、剣を振った。しかし、厚い体毛のせいで剣はジャイアントゴートの体には届かず、体毛を削ぎ取った態度で、ジャイアントゴートにはダメージは通らなかった。しかし、ジャイアントゴートは攻撃してきた俺に気づき、標的をセレスから俺に変えた。その隙を見たセレスが詠唱を始める。

 

「我が魔力に秘められし焔の精霊よ。汝、我が魔力を糧とし、我が敵に大いなる災厄をもたらさんー」

 

すると、前に突き出されたセレスの杖の先から紅い光をまとい始めた。俺はセレスの詠唱が邪魔されないようにジャイアントゴートに向かって攻撃を繰り返した。

 

「ー汝がもたらす災厄は、鉄槌の如く天を貫く業火の一線。」

 

セレスが詠唱を続けていると、ジャイアントゴートが立っている地面が大きな魔法陣で覆われた。俺はセレスの合図を確認し、その場から全速力で逃げた。ジャイアントゴートは魔法陣に気を取られ、その場から動かない。そして、セレスの魔法が炸裂する。

 

「『ライジング・フレイムロード』‼︎」

 

すると、魔法陣から一筋の巨大な炎がジャイアントゴートを飲み込み、はるか上空に向かって放たれた。その魔法の熱気は遠くに離れた俺にも伝わるほどで、近くにいたらひとたまりもなかっただろう。

炎が完全に消え、安全を確認した俺は黒焦げになった地面に近づきその場の様子を伺う。そこにはジャイアントゴートの姿はどころか何一つ残っておらず、黒焦げになった地面から煙が上がっているだけだ。

 

「あの〜、セレスさん。モンスターが跡形もなく消えてるんですけど、これ、どうやってクリア報告するんですか?」

 

俺はなぜか敬語でセレスに聞いた。セレスは満足のいく魔法が打てたのか、上機嫌で答えた。

 

「そのことに関しては大丈夫ですよ。個人カードに倒したモンスターとその日付が記録されるようになっているので、それを職員の方に見せればクエストクリアが認められます。基本は討伐したモンスターの部位を持ち込むのですが、やむを得ない時には個人カードの記録を見せるようにしてるんですよ。」

 

なるほど、個人カードにはそんな機能が付いていたのか。あとで色々確認しておくか。

 

 

 

 

何事もなくモンスターを討伐した俺たちはそのあとギルドへと足を運び、クエストクリアの報告をした。報告を終え、ギルドから出た俺たちはそれぞれの宿へと帰り、明日へと備え体を休めた。今日はなんかとても忙しかった気がする。ベッドで横になると、俺はそんなことを思いながらそのまま眠りについてしまった。


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