そんなことより、剣の世界で第9話が始まりますよー。
パーティでの会議をした翌日、俺たちはモンスター討伐のクエストを実行すべくバルトリア草原へと足を運んでいた。
「なかなか現れませんね、モンスター。」
セレスは周りをキョロキョロ見渡しながら言った。
今回俺たちが討伐するモンスターは土でできた魔人、『ゴーレム』だ。ゴーレムは駆け出しの冒険者にとっては少し苦戦するモンスターらしいが、厄介なのは弱点の核を破壊しない限り再生することと、斬撃が通りにくいところだ。あと、稀に魔法を使うゴーレムもいるとのことだ。気を引き締めていかねば。
「そうだねー。この時期になるとこの辺りのモンスターの生態系が変化して、たまに表にモンスターが出なくなるんだよねー。」
エシリアは俺の肩からセレスの頭へと移動しながらそう言った。
確かに街からここに来るまで一切モンスターに遭遇しなかったが、これは珍しいことでもないらしい。
「とりあえずこの辺りを探索してみるか。」
こうして俺たちは手分けしてモンスターを探した。
しばらく探索していると遠くからセレスの声が聞こえた。
「ケンマさん、エシリアさん!モンスターが現れました!急いで来て下さい!」
俺は急いで声のする方へ向かった。
そこには、ゴーレムとセレスが10mほど距離をとって睨み合っていた。
「ケンマさん、ゴーレムです。それでは、作戦通りお願いします。」
俺はセレスの合図で予め「剣製」のスキルで作った剣を構えてゴーレムに向かって走った。
俺たちの作戦は簡単に言うと、こうだ。
まず、俺がゴーレムとの間を詰めてゴーレムの注意を俺に向ける。そして、俺がゴーレムの気を引いているうちにセレスが魔法でゴレームの身体を崩し、俺かセレスのどちらかが核を破壊する、ということだ。
案の定ゴーレムは俺に向かって拳を振り下ろしてきた。俺はそれを剣で弾き、ゴーレムと少し距離を取った。ゴーレムが怯んだ隙にセレスが魔法で攻撃する。
「『ウインド』!」
セレスの杖から放たれた疾風がゴレームの左腕を貫いた。しかし、ゴームの核は胸部の奥にある為、致命傷ではなかった。ゴレームは魔法の勢いで体勢を崩し、膝をついた。俺はその隙を見逃さなかった。
「『剣製』!」
俺は大剣を生成し、それでゴーレムの右腕を切断した。両手を失ったゴーレムに向かって今度は胸部へと大剣を振り下ろした。
しかし、次の瞬間、俺の体が弾かれ、後方へと吹き飛ばされた。俺はかろうじて着地して体勢を整える。
「こいつ!魔法持ちか!」
俺はゴーレムの状態を確認しながらそう言った。ゴーレムの左腕が再生し始めている。
「はい。そのようですね。おそらくあの魔法は『ショック』です。威力はありませんが、近くの敵をノックバックさせる効果があります。」
セレスは敵の魔法を分析し、俺に伝えてくれた。
そうなると、俺の囮はあまり期待できないか。それなら、
「セレスは引き続きゴレームの身体を破壊してくれ。俺は最後の一撃を叩き込む。」
俺はセレスにそう伝え、セレスは頷いて、魔法の攻撃を続ける。
「『ウインド』!」
無数の風の刃がどんどんゴーレムの身体を削っていく。俺はトドメの一撃に備え、剣を構える。そして、セレスの魔法がゴームの胸部を削ったその瞬間、俺はゴームに向かって剣を突き立てながら猛スピードで突っ込んでいく。ゴーレムはこっちに気づいたが、もう遅い。キングボア戦で習得した新スキルを発動した。
「『ソードアサルト』!」
俺は一瞬でゴーレムの懐へと潜り込み、そのままの勢いで両手で持っていた剣をゴーレムの核に突き刺した。俺は勢いを止めることができずそのまま体勢を崩し、勢いよく転んだ。俺は急いで立ち上がり、ゴーレムの方を確認する。剣は見事にゴーレムの核を貫いていた。そして、核が破壊されたゴーレムはそのまま倒れこみ、一瞬にして全身が崩れた。そして、ゴーレムの体はただの土に戻り、そこに残されたのはバラバラに砕かれたゴーレムの核だけであった。
「まさか魔法持ちのゴーレムだったとはな。少し驚いたが、なんとか勝ったな。」
「ええ。まだ使った魔法が初級魔法だったからよかったものの、それ以上の魔法を使われていたらどうなったかわかりませんね。」
俺たちはそう言いながらも、バラバラに砕けた核を回収し、クエストクリアの報告をするためにギルドへと向かった。
「いやー、今回も無事にクエストをクリアできてよかったねー。」
街へと帰る途中、エシリアは俺の肩に乗りながらそんなことを言った。
「ええ、相手がゴーレムだったとはいえ、誰も怪我をせずに済んだのは良かったです。しかし、帰り道もモンスターが出す可能性があるので油断できませんよ。」
続いてセレスが俺たちに油断しないように注意してくれた。今の時期はモンスターの数が少ない時期だから、多分大事には至らないだろう。
「そういえば、マスターって剣の扱いが上手いよね。前の世界では剣術とか習ってなかったんだよね。」
エシリアはふと思い出したかのように言った。
「ああ、俺は前の世界では陸上っていう走ったりするスポーツをやっていただけだから、ここまでモンスターと渡り合えてるのが自分でも不思議だよ。俺がこの世界に連れてこられる時に何かされたんじゃないのか?」
俺がそう言うと、エシリアは俺の肩から降りて自分の羽で飛び、「そーかもね。」と言いながらその場で宙返りをした。
このあと、俺たちは何事もなく無事に街に到着した。あとはギルドへ行き、報酬を貰うだけだ。
これを読んだ方は是非お気に入り登録をお願い致します。