俺は前の世界ではどんな風に過ごしてたんだっけ。
ここに来てどれくらいの時間が経っただろうか。俺は鈍い痛みを感じる左腕を抑えながらそう考えるのだった。
身を隠すように大きな大木にもたれかかりながら………………
時は数時間に遡る。目を覚ますとそこは濃い緑に覆われた密林のようなところだった。昨日まで俺は高校に通い、友達と喋ったり、家でゲームしたりと普通の生活を送っていたはずなんだけど。
目が覚めたら知らない所とか多分夢でも見ているのだろう。
もしこれが現実であったなら、漫画やゲームの世界である。
俺はそう思いながら周りを見渡した。
みる限り、周りは薄暗い密林のようで、コケだらけの木が見渡す限りに見える。
「夢にしては意識がハッキリしてるな…。」
と俺はひとりでに呟いた。
すると、何処からか、
「これは夢じゃあないよ。あなたは別の世界からここに飛ばされたんだよ。」
と声がした。
周りを見渡しても人の姿は見えない。しかし、確かに声は聞こえた。
「何処見てんのよー。ここよ、ここ。」
また声が聞こえた。俺はゆっくりと声のする方を見上げた。
するとそこには虫のような羽の生えた小さな女の子がいた。小さいと言ったが、身長は俺の靴と同じぐらいの大きさだ。小さすぎる…。
「初めましてマスター。私はこの世界の案内妖精のエシリアだよ。あなたはこの世界の魔王を倒すべく異世界から連れてこられたんだよ。」
異世界?魔王?思い切りファンタジーじゃないか。妖精までいるし。
「マスター。とりあえずこの森から出ようか。この森はモンスターが出るから危険だし。話の続きはその後で。」
俺は少し戸惑いながらも頷いた。
俺はエシリアに案内されながら森の中を進んでいく。
しばらく歩いていると、横の方からガサッと音がした。俺は少しびっくりして素早く右側を見る。何もなかった。
俺はホッとしてそのまま前を向こうとしたその時、
「危ない!」
叫びながらエシリアが思い切り俺に体当たりをした。しかし、エシリアの体の大きさでは、俺を少し後ろによろめかせる程度で吹き飛びはしなかった。と思っているのもつかの間。次の瞬間、何かが俺の腕をかすめた。
鋭い痛みが左腕に走る。俺は反射的に左腕を抑え、俺の腕をかすめたものの方を見た。
そこには大きなトカゲがいて、こちらを威嚇している。
「マスター大丈夫⁉︎あれはトカゲ型モンスターのプチリザードよ。攻撃的で素早さはそんなに早くないけど、さっきは油断して近づいてるのに気づかなかった。一旦逃げるよ!」
そう言ってエシリアは飛ぶスピードを上げた。俺も左手の痛みに耐えながら全速力でエシリアについて行った。
しばらくして俺たちは大きな木に身を隠した。モンスターは俺たちを見失ったがその場で俺たちを探している。俺たちを見つけるのも時間の問題だろう。俺はここが夢ではないとだんだん思うようになった。よく考えれば腕痛いしな…。
「ここから出てから話す予定だったけど、今は緊急事態だから簡単に説明するね。」
エシリアが小さく俺に話した。
「マスター、まず『スキル発動』って言ってみて。」
俺はエシリアの言う通りにその言葉を口にした。
「スキル発動。」
そして、次の瞬間、俺の右手付近が突然光り出した。
光が収まり、右手に視線を向けると、俺の右手には鉄でできた剣が握られていた。それ以外は何の変化もない。
「えーーー‼︎マスターのスキルってそれだけ⁉︎もっとこう、炎がドバーッとか雷がズドーンとかそんな感じじゃないのー⁉︎」
どうやら俺のスキルとやらは剣を作るだけらしい。使えるのか使えないのか…。
俺はそんなことを思いながらもモンスターの方を見る。
やはりモンスターはエシリアの声に反応して俺たちに気づいていた。
「マスター!仕方ないからその剣であいつを倒してきて!」
そう言ってエシリアは俺を木の後ろから引っ張り出した。
「さあ、マスター!ちゃっちゃとあいつを倒しちゃってー!」
「いやっ、俺前の世界では陸上しかしてねーんだから剣術なんて知らねーよ!」
「そんなのはデタラメでいいから、とにかく戦ってよ」
「お前も一緒に戦えよ!俺よりもこの世界に詳しいんだから少しは戦えるだろ!」
「マスターは私の体の大きさを見ても私が戦えると思ってるの⁉︎」
そんなやりとりをしているとモンスターが俺たちにかなり近づいていた。
「くそっ!」
俺はやけくそにモンスターに向かって剣を振り下ろした。モンスターはそれをかわしながら俺に飛びついてきた。俺はそれを右に避けてもう一度攻撃した。今度は剣はモンスターの尻尾を切り落とした。
モンスターは痛みでもがいていたが、すぐに俺に向かってもう一度飛びついてきた。俺は飛びついてくるモンスターに向かって剣を振り下ろした。今度は剣はモンスターの頭部に命中し、そのままの勢いでモンスターを真っ二つにした。
モンスターの二つに割れた体はピクリとも動かなかった。
「すごーい、マスター!相手が下級のモンスターとはいえ、初めて戦ったにしては十分以上の戦いだったよー!」
エシリアは嬉しそうに俺に言った。
俺はホッと息をついた。
俺はほんのすこしの不安と恐怖を抱きながらも、この世界を生き抜こう、そう思ったのであった。
小説書くのってむずかしいですね。