もし、自分の親しいものが怪物になったとしたら、貴方はどうしますか?
自分を殺そうとしている、家族だったモノを殺せますか?
これは、狂気に満ちた、国家というモノが崩壊した後の日本のお話であるーー
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そのウイルスが侵食を始めたのは今から半年前の事だった。
感染すれば10秒と経たずに、怪物となる。
彼らは脳のリミッターが外れているのかは分からないが、筋力が強く人間の四肢なぞ簡単に引き千切ってしまう。
パンデミックが起こってからは慌ただしかった。
そこらじゅうで暴動が起き、死者は数万人にものぼった。
そして、その騒ぎを聞きつけけたのか、怪物が人を襲い始めた。
酷い有様だった。
町中が血で塗れ、死体の山が重なる。人がいなければ、死体を片付ける者もいない。
ただ、怪物は其処まで強くはなかった筈だ。
知性は無く、歩みも遅い。落ち着いて対処すれば簡単に鎮圧できた筈だった。
しかし、もっとも恐ろしいものは人間だった。
世界の終わりだと騒ぎ、喚き、パニックとなった。
住民の暴走のために警察や自衛隊が出動した。
そうなれば怪物を鎮圧に行くものは少数になる。
自衛隊はまともに機能せず、あっという間に壊滅した、
自衛隊がいなくなった日本は、すぐに崩壊した。
◆◇
「………」
荒らし尽くされたコンビニを見て溜息をつく。
もうそろそろこの町から離れなくてはいけない。
この町に暮らして半年が経った。
付近の
しかし、問題は食糧だ。
食糧が無ければ移動するしかない。移動しなければ餓死する。
最初の頃は自分にも仲間がいた。
でも、殺した。
その仲間を殺した理由は様々だ。
ゾンビに噛まれて感染したものを殺したり
裏切り者を殺したり
「もう疲れたな…」
ねぐらに戻ってから、そう呟いた。
もう心身ともに限界だった。
だが、そうも言ってられない。
僕は生きなければならないーー
ーー外から騒がしい。
身体が怠い。どうやら眠ってしまっていたようだ。
気だるい体を起こしながら外を見る。
するとそこには男女がいた。
何処から連れて来たのかゾンビに襲われている。
自分以外に生きている奴がいたのは驚いたが、助けなくてもいいだろう。
そう思っていたのだが。どうやら恐怖で動けないようだ。
眺めているうちに男が噛まれた。
男が叫び声を上げながら辺りを血で染めていく。
そろそろ彼も怪物と化すだろう。
冷めた目で見ていると、女性がこちらに気が付いた。
「助けて!お願い!助けてください!」
それを冷めた目で見ていると男が起き上がった。ゾンビ化だ。
僕は窓を閉めると再び眠りに就いたーー