過去ではなく異世界へGOしたトランクス   作:しろろ

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2話 計り知れない力

 

 

「なるほど、この世界には天使や堕天使、皆さんのような悪魔が存在するんですか」

 

「説明した身で言うのもあれだけど、そんな直ぐに信じられるものなのかしら・・・・・?」

 

 現在、ショボくれたトランクスは立ち直り、リアスからこの世界の講習を受けていた。

 

 あまりの飲み込みの良さ・・・・・というか、驚きの無さにリアスは苦笑を浮かべる。

 

「ま、まあ、こういう事態には慣れていますから」

 

 彼はサイヤ人と地球人の混血児。

 つまり半分は宇宙人の血が流れているのだ。

 

 宇宙人がいるなら、悪魔や天使、堕天使がいてもおかしくないのでは?と、トランクスは思う。

 

 それと、トランクスが未来人かつ異世界人と言うことだが、ホイポイカプセルとタイムマシンを実際に見て貰うことで信用を勝ち取ることが出来た。

 

 巨大なものでもカプセル一つでOK。

 

 そんな発明品はまさしく未来の技術力でしかない。

 

 兵藤一誠は、そんな発明品に瞳を爛々とさせながら、何度も出したりカプセルに戻したりを繰り返している。

 

「あ、飲み物も持ってきてるんですよ。良ければ飲みませんか?」

 

 そう言って、トランクスはカプセルケースから一つ取りだし、スイッチを押して空いているところに放った。

 

 小さな爆発音と共に現れたのは小型の冷蔵庫。

 中を開けてみると、多種多様な清涼飲料がぎっしりと入っていた。

 

「はい、はい、はい、はい、はいどうぞ」

 

 トランクスはキンキンに冷えた缶の炭酸飲料をリアス達に手渡していく。

 

「あ、ありがとう、頂くわ」

 

「あらあら、親切にありがとうございますわ」

 

「い、異世界の飲み物・・・・」

 

「見たことないメーカーだね・・・・」

 

「・・・・・美味しそう」

 

 リアス達は手元にある得体の知れない缶をそれぞれ眺めるが、トランクスは気にせず喉に通していく。

 

 その姿を見て、先陣を切ったのは小猫だ。

 

 プルタブを開けるとプシュッ!と音を立てて、臆する事なくそのまま豪快に一口仰ぐ。

 飲み口から口を離し、ぷはっと息をついでから一言━━━

 

 

「凄く美味です」

 

 

『━━━ッ!?』

 

 

 久しく見ることの無かった小猫の笑顔、それをこの炭酸飲料が引き出したとでも言うのか?

 

 リアス達はあまりの事で思わず固唾を飲み込む。

 

 幸せそうな彼女の表情。

 否が応でも気になってしまう、飲みたくなってしまう。

 

 

 そして一人、また一人とプルタブを開けていった・・・・・。

 

 

 

 

 

 ▽▼▽

 

 

 

 

 

「あれはもう、一種の麻薬ね」

 

「そうですね・・・・部長。トランクスはいつもあんな旨い飲み物を飲んでやがるのか!」

 

「市販のものだけど、満足してくれたならよかったです」

 

 すっかり異世界の飲料の虜になってしまったオカルト研究部。

 

 凄まじい勢いで飲み干していき、冷蔵庫の中身は残り数本となってしまった。

 

 本来ならば過去の世界の戦士たちに差し入れとして渡そうとしていたのだが、帰る手段が無い今、リアス達にあげても問題はあるまい。

 

「・・・・・」

 

 そして、感傷に浸るリアス達をよそに、“騎士”の駒を宿す木場裕斗だけがトランクスに視線を向けていた。

 

 警戒をしている訳ではない。

 ただ、純粋に闘志を滾らせていたのだ。

 

 トランクスはその事に気づき、敢えて笑みを浮かべて問いかける。

 

「何か、俺に用事があるのかな、木場裕斗くん?」

 

「はははっ、分かっていて聞いているのかい?もしそうなら、気兼ねなくお願いが出来るよ」

 

 裕斗はそう言うと、何処からともなく一本の西洋剣を出現させて切っ先をトランクスに向ける。

 

「僕と、一戦交えて貰えないだろうか?リアス・グレモリー様の“騎士”として、一人の剣士として、今の自分がどれだけ君に通用するのか試してみたい」

 

 裕斗とトランクスには絶対的な力の差がある。

 しかし、木場は百も承知で勝負を挑んだ。より高みを目指すため、少しでも得るものがあればそれでよし。

 

「私からもお願いできないかしら?あなたの力・・・・・この目で見てみたいの」

 

 リアスも同じようにお願いする。

 

 気が付けばトランクスは裕斗とリアスだけでなく、全員から視線を浴びていた。

 その中で、彼は徐にソファーから立ち上がる。

 

「勿論いいですよ。俺も丁度体を動かしたかったところなので」

 

「本当かい!?なら早速・・・・・っと、そう言えば剣は此方が預かっていたね。リアス部長、彼に返してもいいですか?」

 

「ええ、いいわよ」

 

 王の了承を得た裕斗は剣をトランクスに返し、見学者も含めて旧校舎の前へと移動した。

 

 万が一、駒王学園の生徒に見られた事を考慮して、リアスと朱乃は周囲からの認識阻害と、人寄けの結界を展開する。

 

 これで思う存分戦えるだろう。

 

 

 裕斗は煌びやかな装飾が施された西洋剣を。

 トランクスは対照的に飾り気の無い西洋剣を。

 

 それぞれが己の構えをする。

 

「俺はいつでも構わないよ、好きな時に始めてくれ」

 

「そうかい?なら・・・・・お言葉に甘えるよッ!!」

 

 

 タンッ!

 

 

 裕斗は一直線に駆け出した。

 その速度は常人には捉えられないほどで、残像がその場に残る。

 

 しかし、相手は格上だ。

 この程度のスピードが通用するとも思えない。

 ━━━だから、加速する。自分の限界なんて考えないで、ただひたすらに加速する。

 

 

「き、木場が消えた!?どこに行ったんだ!?」

 

「いいえ、イッセー君。裕斗君は消えていませんわ。“騎士(ナイト)”が有する特性で、目では追い付けない程の速度で移動しているのです」

 

「す、すげぇ・・・・・」

 

 朱乃の説明に一誠は唖然とした様子だ。

 加えて、リアスも説明をする。

 

「他にも、小猫は攻撃力と防御力に特化した“戦車(ルーク)”。朱乃は“兵士(ポーン)”、“騎士(ナイト)”、“僧侶(ビショップ)”、“戦車(ルーク)”の全ての特性を持ち合わせた“女王(クイーン)”で、最強の副部長よ」

 

「朱乃さんが、女王・・・・・何か納得できます!あれ?じゃあ俺は何の━━━」

 

 

 ギィィィイイインッ!!

 

 

 一誠の言葉を甲高い金属音が遮った。

 

 その音の正体は、側面から斬りかかる裕斗の剣をトランクスが片手で構えた剣で防いだ音だ。

 

「くっ・・・・!?」

 

 防がれたと分かる否や、裕斗は直ぐに距離をとって四方八方を高速で駆け回り、トランクスを翻弄させようとする。

 

 そして、死角に回り込んで剣を振るう。

 

「はあッ!!」

 

「甘い!」

 

 しかし、これもトランクスに防がれた。

 

 今度は鍔迫り合いへと移行する。

 騎士である裕斗がスピード勝負で敵わないとなると、残るは純粋な剣術での勝負だ。

 

 剣と剣が交差して火花が散る。

 

 常人の目では追い付けない剣速で繰り広げられる乱舞。だが、どうしても━━━━

 

 

 裕斗の剣はトランクスに届くことはなかった。

 

 

 ザンッ!!

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・参り、ました」

 

 息を切らす裕斗の手には、腹から両断された煌びやかな剣。そして、彼の首筋には剣の切っ先が添えられていた。

 

「ありがとう、悪魔との貴重な戦いだったよ」

 

 トランクスは剣を鞘に納め、緊張の糸が切れて脱力している裕斗に手を差し出す。

 

「僕なんかじゃ相手にもならなかった・・・。あそこまで圧倒されると、却って清々しいくらいだよ・・・」

 

 手を握り返して口ではそう言うも、裕斗の表情は晴れないものだった。

 

(分かっていても結構堪えるね・・・・・これは)

 

 自身で想像していたよりも遥かに遠い。

 人の身でありながらここまで強くなれるものなのか・・・・・?まるで底が見える気配がしない。

 

 内心でそのように思っているのは、何も裕斗だけじゃない。

 リアスも一誠も朱乃も小猫も、この場に居るものはトランクスに対する印象を更に強めていった。

 

 そして、同時にリアスは彼を手に入れたいとも考え始めていた。

 

 彼ほどの人材はそうそういない。

 是非とも眷属になって欲しいものだが、それはあくまで彼が頷いてくれたらの話。無理やりなんてもっての他だ。

 

加えて、彼は本来この世界にいるべき人間じゃない。未来の人間、別世界の存在。

 

今は無理でも、いずれは戻らなければならないだろう。

 

 

でも、それでも━━━━

 

 

(・・・・・私はあなたを手に入れたい)

 

 

トランクスが一誠と裕斗と話している姿を見ながら、リアスは胸の内に一つの感情を抱き始めていた。

 

 

 




と、言うわけでヒロインはリアスにしました!

ちょっと警戒を緩めるのが早すぎると思いますが、そこはホイポイカプセルのお陰だと思ってもらえれば嬉しいですね。

ただ、今のリアスは恋よりも物欲に近いです。
他にも可能な限りヒロインを増やしていければと思っている所存です!

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