インフィニット・ストラトス 『罪の王冠』(リメイク版)   作:超占時略決

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第0話 物語はここから始まる

No Side

 

二〇XX年、地球に青紫色に輝く謎の隕石が落下しようとしていた。謎の隕石が地球に落下すると、落下地点である日本や日本の近辺にある国だけでなく、世界中が混乱に陥るであろうことは誰の目にも明らかだった。

隕石の落下を防ぐために世界各国の軍事兵器が秘密裏に投入されたが、何一つ大した成果は得られない。

そして、各国の首脳陣は隕石の落下を防ぐことを諦め、我先にと宇宙飛行船を使用して宇宙へ逃げる算段を立てていた。

隕石の落下は変えられない未来であると分かってから漸く、隕石の落下について世界各国で報道された。落下地点である日本では、その場で空をぼんやり眺める人で溢れかえった。

何故なら、落下までのタイムリミットが三十分を切っており、何処へ逃げようと落下地点からは逃れられないことを悟ったからだ。

しかし、そんな中で一人の勇者が立ち上がる。

その勇者は純白の装甲を身に纏って巨大な剣と荷電粒子砲を持つ、女性的なシルエットの機械だった。名を『白騎士』と言う。

白騎士は隕石に向かって荷電粒子砲を放つと、隕石は一撃でバラバラになった。そして、バラバラになることで生じた隕石の破片を、白騎士は巨大な剣と荷電粒子砲を用いて一つずつ塵にしていく。

その結果、隕石は完全にその姿を消し、死亡者数、怪我人ともに〇人である事が国際連盟によって発表された。

しかし、各国の首脳陣は白騎士に恐れた。無理もない。自分達では如何することも出来なかった隕石をいとも容易く消し去ってしまったのだから…

よって、国際連盟の決定により各地で白騎士を狙ってミサイル、総数二七一五発がこれまた当時は秘密裏に発射される。

しかし、白騎士はまるで赤子の手を捻るかのように、ミサイルをどんどん破壊していく。さながら舞を踊る巫女のように。

結果として、無傷でミサイルの嵐を乗り越える白騎士に、各国が戦艦や戦闘機を用いて白騎士にさらなる攻撃を仕掛けた。

これも全てが白騎士に当たる前に落とされていき、全戦闘機、全戦艦が白騎士によって破壊された。尚、この破壊においても死亡者数、負傷者数ともに〇人である。

そして、白騎士は太陽が沈むと共に姿を消し、行方を暗ました。

次の日、篠ノ之束博士が世界に大々的に白騎士を発表した。白騎士はインフィニット・ストラトス、通称ISという宇宙探索を目的としたマルチフォーム・プラットスーツであり、ISは女性しか動かすことが出来ないのだと。

更に、篠ノ之束博士は言った。ISはどんな既存兵器を用いても倒すことが出来ない。即ち、ISはISでしか倒すことが出来ないのだ、と。

これにより、各国は混乱に陥った。そして、篠ノ之束博士によって提供されたISの核となる四六七個のISコアと、白騎士と白騎士の開発データを使用して、ISの軍事開発が推し進められた。

世界を変革したこの一連の流れを、後の時代の人々は『白騎士事件』と呼ぶようになり、人類の歴史に大きく刻み込まれた。白騎士の搭乗者は未だ分かっていない…

(構業社 『中学で学ぶ世の中の歴史』より抜粋)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side ???

 

白騎士事件から約十年が経った今日。僕にとっては人生を大きく左右される重要な日。それは、僕が志望する高校、藍越学園の入試当日である。

藍越学園の入試会場は僕の住む家からは四駅程離れた所にあるんだけど、僕はとある理由でその会場にはいなかった。ならどこにいるのか?っていう疑問に当然至ると思うんだけど…

 

「今日はどのような行動をしたのか、一から説明して貰おう」

 

正解はー、刑事ドラマなんかでよく出てくる取調室でしたー!

何でそんな所にいるかって?その理由はおいおい分かるかと思うけど、今は目の前にいる、かっちりとした黒のスーツを着込む政府の人の質問に丁寧に答える。

 

「はい…まず、今日は彼と一緒に入試会場に行きました。理由は彼と同じ高校を受験するからです。

そして、会場に着いたのはいいのですが、僕達は会場で迷ってしまいました。もちろん、僕達は会場にいる大人の人にどう行けばいいのかと聞いたんですが、曖昧な返答しか返ってこなくて…

そして、しびれをきらした彼が「次にあったドアを開けようぜ!大体俺はそれでいっつも合うんだから!」と言って、廊下の突き当たりにあったドア開けたんです。

そこにはISが一つぽつんと鎮座してあるだけでした。それを見た彼が「ISをこんな近くで見たの初めてだ…なあ、触ってみようぜ?」と僕に言ってきました」

 

「君は止めたのかね?」

 

「止めましたよ…危ないしやめた方が良いって。でも、彼が「大丈夫だって!ちょっと触るだけだからバレねぇよ」と言いまして…」

 

「で、起動させたと?」

 

「はい…」

 

僕は左手で頭をかきながら頭を下げる。すると、政府の人は長いため息を吐くと頭を強く掻きむしった。僕だって頭を掻きむしりたい気持ちだよ…

ここまでくれば分かると思うけど、僕は人類史上初の男性IS適合者、織斑一夏爆誕☆の一部始終の唯一の目撃者となってしまった。そのせいで、僕はこうして事情聴取されている。

一夏のせいで僕の高校受験はおしまいだぁ…ほんっと、これからどうしたらいいんだろう……

 

 

 

 

「今日は話を聞かせて貰い感謝する」

 

政府の人が僕に軽く頭を下げる。僕は手を横に振りながら何でもないように装うけど、同じ事を何度も何度も説明させられて頭と体がクタクタになっていた。

 

「いえ…気にしないでください」

 

チラッと見えた時計の時刻は十四時十分。あっ、僕もう絶対入試に間に合わないよ…一夏のせいで政府の人に事情聴取されて受験はパーってあ!この事情聴取って一夏に関することだから僕は何にも関係がないよね!もしかしたら、追試とか受けさせてくれるんじゃ…

 

「あ、あの…今日の入試なんですが追試みたいなものってやってくれたりしますか?」

 

「勿論だ。こちらで掛け合ってみよう」

 

よ、良かったぁー。これで一安心だよ…僕は一夏と違って合格圏内に入ってたから、テストさえ受ければ何とかなるからね。

 

「でもその前に君にやってもらいたいことがあるんだ、杠桜華(ゆずりはおうか)君」

 

「な、何ですか?」

 

もう説明することは全部し終えたし、これ以上何をやらせる気ですか…?もう、ほんとに帰りたいんですが…

 

「念のために、君にもISに触って欲しいんだ。協力よろしく頼む」

 

「あっはい…でも、僕が触っても多分起動しませんよ?」

 

まさか、これがフラグになろうとは、この頃の僕は知る由もなかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 桜華

 

取調室から場所は変わり、ここはどこかの倉庫みたいだ。最近は使われていなかったのかどこか埃臭い。

そして、目の前には全体的にゴツゴツとした、さっきと同じ見た目をしたISがある。

 

「では、このISに触ってもらえるかな?」

 

僕は冗談でも何でもなく、一夏以外にもISが動かせるのかほんとに試されているみたいだ。

そんな、ねぇー。何処かの二次小説じゃあるまいし、僕がISを動かせるわけないでしょ?僕は一夏と違ってパッとしないし、モテないし、朴念仁じゃないひ…

僕は適当なことを考えつつも左手でISに触れる。すると、視界が光に包まれーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっ?なに、これ…って、ここどこ…?」

 

気がつけば、僕は空が白く塗り潰された場所に立っていた。地面を見ると青紫色の草花を模している結晶が辺り一面に生成している。

そして、僕と同じで桜色の髪を生やした人が目視できるギリギリの場所にいる。

 

「あのーすみませーん!」

 

声を呼びかけてみても、まるで反応する気配がしない。仕方ない、僕は桜色の髪の人に近づいてみることにした。

僕と桜色の髪の人の距離が縮まるにつれて、だんだんと声が聞こえてくる。耳を澄ませてみると、どうやら何やら歌を歌っているみたいだね。

すごい綺麗な歌声だ。これなら、何時までも聞いていられそうだよ…

僕が近づいたのを気付いたのだろうか、桜色の髪の人は歌うのを止めて僕の方に振り向く。

やや垂れ目で瞳の色は紅。ラインがすっきりとしている小さな鼻に、ぷるんとしているけど小ぶりの唇。そして、桜色の髪を左右に結ぶ赤いリボンとともに靡かせ、かなり露出の多いぴっちりとした服を着る女の子。それが、桜色の髪の人の正体だった。

ぼ、僕と似てる…最初の印象がそれだった。彼女の瞳には彼女を少しだけ、いやかなり男っぽくした人が写る。かなり違うからね!ほんとだからね!ボクウソツカナイ。

彼女の瞳に写る僕を見ていると、彼女は手に持っていた赤い細長の紐で作った、あやとりで言うはしごを僕のほうに向けながら声をかけてくる。

 

「取って」

 

「えっ、どうゆうこと?」

 

疑問符が頭を支配する。余りにも唐突過ぎて何を言ってるのかさっぱり分からない。

 

「やれば出来るかも知れない…でもやらないと絶対に出来ない…杠桜華は臆病な人?」

 

桜色の髪の女の子は小首を傾げながら言う。いや、自分では臆病ではないと思ってるんだけど…ていうか、そもそもまだ頭が君についていけてないんだけど。

 

「取れば、いいのかな…?」

 

僕がはしごに指を指しながら言うと「取って」と返答された。成る程、はしごを取れ、と…何故に?

それに、さっきは軽くスルーしたけど何で僕の名前を知ってるんだろう?取り敢えず話を聞いてみた方が早いのかな…?

 

「き、君は僕の名前を何で知ってるのかな?」

 

「早く取って」

 

桜色の髪の女の子は早く取れと催促するかのように僕をじーっと見てくる。

えーっ…何ですかこれはまさかこのはしごを取るまで話が進まないパティーンですかどんだけだよー。はぁ…もういいよ。何が起こるか分からないけど、兎に角取ればいいんだね!

僕は短い時間で色んなことを考えて、結局はしごを取ることにした。多分、僕がはしごを取らない限り話は進まないんだろうね…容姿のこととか、この場所のこととか、聞きたいことは沢山あるからね。

 

「……取るよ」

 

そして、僕は赤い紐で作られたはしごをおそるおそる()()で取った。

 


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