~孤独の密室 後日談~   作:カロライナ

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~孤独の密室 後日談~ 4説

 早めの夕食を済ませ、時刻は夕方の16時を回った頃。

 ハードラックは旅立つのに十分な身支度を整え、一軒家の離れにある倉庫の中で四角いキューブ状の箱の前で、英語訳された取扱説明書を見つめながら、これから自分が飛ぶべきであろう過去の日付・時刻を記していた。

 そのハードラックの背後にはハードラックよりも年老いた男女が1人ずつ。ハードラックが泣き止むまで慰めていた女性が1人、黙々と作業する彼女を見つめていた。

 

「よし。これで良いですわね。」

 

 ハードラックはスッキリとした表情で取扱説明書を片手に、自分が飛び立つ年号/日付/時間が誤っていないかどうかの確認を行うと、満足げに四角いキューブに向けて頷きを見せた。

 

「・・・本当に良いのかい?」

「何がですの?」

「何が、って・・・祖先の記録によれば過去や未来を遡れば、名状しがたき生き物が君の事を襲うかもしれないとあるのだが・・・。」

 

 背後から眺めて居た男性がハードラックに対して声をかける。非常にうそぶく様子を見せるハードラックに対し、非常に心配の声が上がるが、ハードラックは特に気にする様子もなく、とびっきりの笑顔でその男性の方に振り返る。

 

「大丈夫ですわ。例え、そんな生き物が出やがりましたら、聖書+ニーソックスのブラックジャックで頭を砕いてぶっ殺して差し上げますから、御心配なさらず。・・・・そんなことよりも現代のファンブレラ家の皆様、このような わたくしを家族の一員として迎え入れて下さって、ありがとうございます。この御恩は生涯を遂げても忘れませんわ。」

「い、いや、こちらこそ貴重な1920時代の十分な話を聞かせて貰ったり、留守中の娘の相手をしてくれたりしたからね。こちらも感謝しているさ。それに、君は我々の遠い親戚であり家族だ。家族が家族を助けるのは当たり前のことだろう?」

 

 笑顔で振りかえった彼女は、そのまま男性に向けて頭を下げる。男性はそんな彼女に向けて照れるように はにかみながら手を横に振り否定の念を示した。ハードラックも男性に向けて一度はにかむ。頷いた後、四角いブロックに向き直る。

 

「ハードラック曾おばあちゃん。」

「だから曾おばあちゃんと言うのは・・・っ。」

 

 やれやれといった様子のハードラックが感じたのは、彼女が自分の背中に抱きつく感覚。

 そして生暖かい水滴が1920年代の衣服に染み渡る感覚だった。ハードラックは困ったなといった表情で髪を掻き上げる。抱きつかれた腕は まだ解かれない。背後から見守っていたハードラックより年老いた男女が離れるように彼女に対して伝えられるが、腕は離されない。

 

「・・・・しょうがないですわね。クラックス。腕を離して、顔を御上げなさいな?」

「・・・・?」

「はい、これ。」

「曾おばあちゃん・・・これって・・・。」

 

 彼女。クラックスが渡されたのは、ハードラックが常日頃から読んでいた聖書であった。最初は受け取れないと首を横に振るが、手を掴まれ聖書を強制的に握らせられる。

 

「神様は必要な時に助けてくれないですわ。私の友人達がそうだった様に。・・・しかし、聖書はイザっていう時には、鈍器にでも装甲にでもなるんですの。これがあれば、貴方は聖書に守られます。これをわたくしだと思って 預かっていて欲しいのと、この聖書はわたくしにとっても大事な物ですから、必ず取りに帰ってきますわ。だから信用して笑って送り出して下さいませんこと? あぁ、安心してくださいませ。日本にも『ROPPOUZENSYO(六 法 全 書)』とかいう、分厚い兵器があるそうですわ。聖書が無ければ、それを武器にしてみせますわよ。だから。ね?」

 

説得

ハードラック80→9【成功】

 

 ハードラックはクラックスに言い聞かせる。クラックスは返そうとしていた聖書を力強く握りしめ、袖で涙を拭う。そして彼女なりの精一杯の笑顔を作ると、抱きしめるようにしてハードラックの聖書を抱えた。ハードラックも彼女の頭を一度だけ撫でると、今度こそと仕切り直すかのようにして四角いブロックに対峙する。外のパネルを操作し、入り口を開ける。中からは真新しいプラスチックのような、新築のような匂いが、干し草の香りしかしない納屋を包み込む。

 ハードラックは開かれた入口から中に入り、未来の自分の子孫に対して笑顔で手を振る。

 彼女達もハードラックに向けて手を振る事だろう。

 

 

 

 そして。イス人の時空転送装置は、ハードラックを中に入れたまま閉じた。

 

 

 

 

 

 過去へ飛ぶためのスイッチを目の前に、ハードラックは息を整える。

 手元には1920年代で自分がゾンビ狩りをしていたころに持っていた得物、ポケットの中には彼女達に貰った日本へ渡日し、少しの期間 生活するためのドル紙幣と帰還用資金だ。聖書は無いが、ニーソックスを履いている。

 

「さぁ、グラトニーさん、村松さん、ツェペリさん、チンロックさんっ! 1920年代の使者ハードラック=ファンブレラ、あなた方を救いに推して参りますわっ!!」

 

彼女はそう叫んだあと、そのままスイッチを押した。

 

 




【後書き1】
4説が終了しました。
六法全書、国語辞典、聖書、CoCの基本ルルブは武器&装甲。
はっきり分かんだね。

さてはて、彼女の最悪の絶望の未来は回避することができるのか。

小説を書くという。しかも、他の話の後書きに書いている内容から
察する方も居ると思いますが、このまま最後までお付き合い頂ければ、
感謝。感謝。感謝の極みで御座います。

次の話は12時からではなく、20時投稿を予定しております。



【後書き2】
名前:クラックス=ファンブレラ(女)25
職業:警察官 出身:アメリカ
STR8    DEX14   INT13
CON11   APP8    POW18
SIZ17   SAN90   EDU15
アイデア65   幸運90   知識75
HP14    MP18    DB+1D4

職業技能
聞き耳=85 目星=80 追跡=70
日本語=41 運転=80 説得=80

興味技能
回避=78 ブラックジャック=80

・持ち物
衣服靴、財布、携帯、懐中電灯、
ZIPPOライター、タバコ、応急手当セット
アロンアルファEX、ニーソックス、聖書

・設定【2010s警察官データ】
アメリカで警察官の研修を行ったのち、日本での研修を重ねる為に日本に渡日。
日本語技能が、長けているのは日本のアニメが大好き。
ブラックジャックは最近1920sからタイムスリップしてきた曾おばあちゃんから学んだもの。
自宅が基本的に人里離れた場所に立地しているため、自動車の運転能力は若くともそれなりにある

日本におばあちゃんが『過去の忌まわしき事件から』友人を助け出すために出かけているので、後を追うように何かの拍子に出会えたら手伝いたいなと思っている。
『未来は変えられる。そう、曾おばあちゃんは教えてくれた。』

・そのほか外見の特徴
髪色:黒髪 瞳の色:翡翠 肌の色:白

・リアル探索者として存在
1回探索。見事生還。存命。
TRPG側では、SANが残り85

・所持武器ステータス
ブラックジャック
ダ1D8+DB 距タッチ 攻1 装-- 耐4


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