~孤独の密室 後日談~   作:カロライナ

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~孤独の密室 後日談~ 2説

「・・・・・・。」

「・・・。」

 

 しばらくの間、互いに一言も話すこともなくダイニングルームキッチンには、聖書が一枚一枚捲られる音のみが響く。

 

「・・・ねぇ、曾おばあちゃん?」

「・・・・なんですの?」

 

 先にその静寂を破ったのは黒髪の女性の方だった。彼女は何も言葉が交わされない空間に対して、話しかける直前 忙しなく動いた後 何か決心したかのような表情で話しかけたのだ。

 

「本当に、おばあちゃんはパパの祖先が所持していた形見の品を使うの?」

「・・・・・・・。」

 

 その問いにハードラックは答えない。しかし、聖書を読むその手は止まっていた。

 

「私には、あんな物使える気がしないんだけど・・・・。それに祖先が残した記録にもさ、腐った犬に追い掛け回されるとか何か嫌な不吉なことが書かれていたし、本当に使う気なの?」

「・・・・・・。」

「パパも言ってたよ。あれは、現代の科学でも刺し測れない科学力が秘められた危険な道具だって。・・・突然何を言い出すんだって思うだろうけど。曾おばあちゃんが初めて この家に来たときは怖がったり、アメリカの悪い人達に復活させられて1920sから現代に現れたと言った時は頭のおかしい人かと思った。だけど、その後DNA鑑定をして本物の親族であることが分かったんじゃない。ファンブレラ家に訪れる前に、散々辛い思いして、お父さんに撃たれそうになって、それでもなんで。なんで、そんなに危険を顧みずに過去に戻ろうとしているの? 曾おばあちゃんは、過去に戻るのは助けられなかった友人達を助け出すために必要なことだと言っていたけど、別に曾おばあちゃんが頑張らなくても良いんじゃないかな? ほら、その人たちはそこで死ぬ運命だったっていう奴っていうか・・・。」

 

 彼女が言い終えるか終えないかの瞬間、ハードラックは手にしていた聖書を閉じる。そして、静かなダイニングキッチンにパタンと聖書が閉じる音が響く事だろう。

 ハードラックは俯くような姿勢になりながらも、座っている女性の方を向く。女性は『失言をしてしまった』とでも言いたげに表情を青ざめると、何かしら言葉を取り繕うとするものの瞬時に単語が出てこないようで、口からは詰まった言葉しか出てこない。

 

「・・・・それでも。」

「・・・・・・?」

「それでも約束したんですの。グラトニーさんや、ツェペリさん、村松さん、チンロックさんと。別れ際に 長生きや子孫を通じて、『貴方達が死んでしまう未来・時代を捻じ曲げに行くから、未来で待っていてください』と。」

「・・・・。」

「わたくしには、限られた枠組みの中で、生存権を1920年代から来たわたくしへ。僅かな希望に掛けて、わたくしを助けて下さった友人達を見捨てることなどできないですわ。それが例え、どんな茨の道を突き進むことになろうとも その約束は果たされるべきですの。彼等は、今でもあの部屋で待っているかもしれません。」

 

 ハードラックは俯いた姿勢から一転。決意を込めた瞳で、隣に座る女性を見つめ伝える。その瞳の奥には何か執念のような物が燃えているのが、向かい合う彼女には分かったようだ。そして思わず、彼女はゴクリと生唾を飲み込んだ。

 

 

 

 




【後書き】
2説目終了
セッションでは後日談をする卓は、なかなか無いですからね。
このようにして何かしら形にして彼等が確かに生きて、共に戦った
軌跡を残したかったのです。

グラトニー、村松 大輝、ツェペリ スモーキー、チンロック パンムズ・・・
彼らは、PC,PL共々、本当に素敵な方々でした。
具体的にどのような部分が素敵部分であったかについては、
3説からハードラック=ファンブレラを通じて語りたいと思います。

そして次回はネタバレが最も含まれている箇所のため、そのすべての閲覧者の皆様方に
勇士をお伝えできないのが、非常に悔やまれるところです。
20時頃に、また投稿する予定でございます。



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