~孤独の密室 後日談~   作:カロライナ

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~孤独の密室 後日談~ 15説

 ハードラックは、ざわめく乗客たちをこれ以上に刺激しないように配慮しながら、鉈とショットガン片手にバスの通路を歩いて行く。そして動じない他3人に警戒しながらも、アメリカ人らしい男性の傍に立つと彼に向けて手を出した。

 

「Excuse m... . あ。あなたは、日本人でしたネ。申し訳ないのですが、ソノ・・・ポケットの中に入っているスモークグレネード・・・ピンを付けたまま渡して下さいマセンこと? ツェペリ スモーキーさん。」

 

 ハードラックは懐かしむような視線を向け、はにかむように笑いながらアメリカ人らしい男性に話しかける。彼にとってハードラックは初対面だ。であるのにも関わらず、名前に加えポケットの中身を言い当てられると、ツェペリと呼ばれた男性は少しばかり驚いたような表情をハードラックに向ける。

 

「ここニハ、小さな子供もいらッシャいマスの。もしも、あなたがそのグレネードを投げマシタら、間違いなく必要以上のギセイが出ると思いマセンか? 医学的観点カラ、あの少女のハイカツ?量も分かるハズです。」

 

 それに畳を掛けるようにして、ハードラックは言葉を続け渡すように催促する。チラリと周囲の乗客を見回した後、観念したかのようにツェペリは大人しくポケットからスモークグレネードを渡す。ハードラックはそれを笑顔で受け取ると、ツェペリに一礼し背中を見せることはせず入り口まで戻る。

 

「そうデスわ。どなたか、どなたでも良いですカラ、この箱を使ってポリスを呼んで下さるカシラ? わたくしが呼べば済む話なのですけど、このキカイ?とやらの使い方を存じ上げマセンの。必要とあれば、わたくしの箱をお譲り致しマスわ。」

 

 すると思い立ったかのようにして、今度は警察を呼ぶようにと乗客に対して呼びかける。ハードラックが何を行ないたいのか、全く予測できない33人の乗客たちは、ある者は恐れを抱き硬直し、ある者は逆らったら殺されると思った者は携帯を取り出し連絡を取り始め、そして一部の者はツェペリに対して敵の一味ではないかと疑いの視線を向けられるのであった。

 

 ・・・・・・。

 

 時刻は23時を回る。

 相変わらず入口にはハードラックが、腕時計を確認しながら鉈とショットガン片手に佇んでいたが、先ほどよりもパニックに陥っている乗客は少なかった。むしろ心臓に毛でも生えてそうな乗客は、余程疲れているのかウトウトと転寝を始め、初めハードラックに手を振っていた少女も、今は母親の胸の中でハードラックの持っていた毛布に包まって寝息を立てている。

 しかし、ハードラックに視線を外さないものは4人居る。スモークグレネードを隠し持っていることを当てられたツェペリ。イギリス人のような男。身体のサイズは小さいが筋肉質な日本人。スキンヘッドに非常に肥った褐色肌の男性・・・。

 彼等だけはハードラックを警戒。または敵意を。はたまた状況を打開する方法について探っているようだった。

 

 




【後書き】
やはり第一クトゥルフ神話よりも長くなりました・・・。
初めの頃は全く想定していなかった人が、ここに居ます。
しかし、それもまた一興です。

バスジャック(未来変革・革命)編は、まだ始まったばかりです。


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