~孤独の密室 後日談~ 作:カロライナ
聞き耳
ハードラック80→43【成功】
ハードラックが荷台に忍び込んでから、5分もしないうちに嗚咽を漏らすあの運転手の足音が聞き耳をせずとも聞こえてきた。しかし、ひとりだけではない。もう一人の足音がバスの中に入って行くことが分かる。そして何かを話しているようだ。ハードラックはその話し声に耳を傾ける。
「いやー、12連続勤務お疲れさま。」
・・・先ほどの運転手の男とは別の男の声。
「あぁ・・・・。運転するだけなら まだしも、時には怪物みたいな乗客を相手にしなきゃならねぇからな。ほんと、転職しようかと考えてるぜ。重い荷物もトランクに搬入しなきゃいけねぇし。やってらんねぇよ。」
ハードラックが先ほどまで話していた運転手『
ハードラックは、そのまま物音を立てないように配慮しながら、運転手と男の話に耳を傾け続ける。
「腰痛を患って退職して行った奴も居るしな。まぁ、前半戦 頑張ってくれよ。先に仮眠を取って、0時を回ってパーキングに着いたら運転を交替してやっから。」
「頼んだぜ・・・・嗚呼、眠眠打破やエナジードリンクを飲んでねぇと、ホントにやってらんねぇ。」
そのまま会話はそこで手短に区切られ、運転手の男の大きな欠伸をする音が聞こえてくる。そして、その仮眠を取る場所は夜行バスの後方にあるのか、足音はハードラックの真上を通り過ぎ、奥の方に消えて行った。
聞き耳
ハードラック80→21【成功】
それから40分ほど身を潜めていると、この夜行バスの隣。外側に位置する場所がザワザワと時間が経過するにつれて騒がしくなり始める。耳を澄ませ、外の様子を探るとそこには待ち望んだ友人達の懐かしい声が聞こえる。ハードラックの胸も喜びによって高鳴るのを感じていた。
喜んでいると次の瞬間、荷台が勢いよく開かれ冷たい外気がハードラックを包み込む。そして荷台には、夜行バスに乗る乗客の荷物であろう巨大なキャリーケースが仕舞われていく。
ハードラックの気分は一転。いつか、自分が忍びこんでいることが発覚してしまうのではないかと背筋に冷汗を流しながら、荷台の扉が閉じられるのを待つ。時々見え隠れする運転手の腕が、いつかハードラック自身を見つけ、指を指し引き摺り降ろされるのではないかと。今、ここで発覚すれば、友人を助け出す機会は失ってしまう事だろう。ハードラックは必死に、現代に置いてきた聖書に対して祈りをささげ続ける。
そして、そのまま発見されることもなく、一通りの荷物が乗せられると搬入扉は閉まった。
【後書き】
いやー、バスの荷台に乗れたハードラックが
私はうらやましくて仕方がないです。
実はバスのトランクに乗ってみたい派なんですよね。
普段、乗れない場所に乗ることができるって何か特別な気がして
ワクワクするんです。
まぁ、でも。
実際には暗くて、居心地悪くて、景色も見えないのでつまらないの4拍子なんですがね
でも子供の頃はトランクに乗ることについて、よくわかりませんが憧れたものです。
席と席の間の座席は、急な急ブレーキによる前方へ転がったことから
もう二度と乗りたくありません。乗る機会など もうありませんが。