生き残り大尉の使い魔 作:シータが座ったァァア!!
場所は変わってここは、ルイズの私室。綺麗に丁寧に使われているであろう棚などの家具は未だに、傷は少ない。
そんな場所の一角で、青年はピンク色少女——ルイズと話を交わしていた。
「私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。使い魔である貴方のご主人様よ、ちゃんとご主人様って呼びなさい」
——了解。
因みに先ほどの医務室を出る前に、各員はちゃんと話し合っている。青年は自分の名前を【タイイ】と称して仮称を教え、自分は此処とは違う世界から来たであろうという事も伝えた。まあ、信じられてはいないようだが。
因みに青年——【タイイ】は今日この度使い魔となった。生きて初めての体験である、人間でありながら魔のモノとなるのは。
使い魔になったのは理由がある。一つはルイズは自分を使い魔に出来なければ進学出来ないという事。一つは自分はこの世界では寄る宛てがないという事。タイイを決断へと導いたのは後者である。理不尽なり。
「それじゃ、使い魔のあんたに使い魔の仕事を説明するわ」
唐突にルイズが話の話題を切り替えた。今までルイズがタイイに行ってきた地理や歴史についての話は、ひと段落ついたらしい。最低限の事は伝えたという訳だ。
さて、次はタイイ自身の仕事についてだ。
「まず、使い魔には主人の目となり耳となる能力が与えられるわ。視覚聴覚の共有化と言った方が良いわね」
でも、と言ってルイズは顔を顰める。その顔には、落胆の意志が現れていた。
「残念だけど、何も見えないわね。人間の使い魔だからかしら?」
どうやらそんな能力は与えられなかったらしい。使いこなせば面白い物だと思うのだが。共有化、実に面白そうである。
他には? と言って続きを催促する。
「次に挙げられるのは秘薬の材料集めね。けど……あんた、何も知らないんでしょう?」
魔法の事は知ってる癖に、と余計な尾ひれがついたが、だいたいはその通りである。何故なら、ここは魔法が存在する不思議世界、タイイのいた世界では銃と戦争だらけの世界だったのだ。住む世界が違う。
だからタイイから言えば秘薬と言われてもよく分からないし、どんなものが材料なのか、検討もつかない。まあ、調達マラソンも面白そうであると感じてはいるが。
「最後に挙げるとすれば、主人である私を守る事ね。……でも、あんた戦えるの?」
怪しむように覗き込む彼女に勿論だ、と言って胸を叩いて誇らしげな表情をする。
タイイはこれでも『大尉』である。軍人として戦闘・戦術・戦略のノウハウは学んでいる。一対一の戦いでもそれなりに活躍できるし、指揮も出来る。というかタイイの本領は部隊指揮である。
軍人であるからには、戦闘に関してがスペシャリストと言えるだろう。
「ふーん、そうなの。じゃ、ちょっとだけ期待しててあげるわ」
任せておけ、と良好の返事をして、この会話を終了させる。仕事のうち上記2つは無理そうだが、戦闘に関してはそれなりのものはある。頭の中にある情報通りならば、自身は一軍に匹敵する力を有する事となる。
——やはり、自分には戦いが似合っているのかもな。
そんな考えは、青赤の月光の中へと消えて行った。
余談だが、ルイズが就寝する前にタイイはルイズの衣服を洗うように言われた。あんたみたいな使えない使い魔は雑用してなさいとは、ルイズの談である。