場所は変わって永遠亭。
美鈴はあれから三日間の入院を強いられ、今日めでたく退院となった。
「本当に……お世話になりました。永琳先生」
「お大事にね。何があったか分からないけど、もうニ度と毒物なんて口にしちゃ駄目よ」
「あはは……は、はい。では私はこれで……」
美鈴は永遠亭の住人たちに一礼し、帰路へ発った。
(あれから三日か……お嬢さまたちの気まぐれも、もう収まっている頃かな?)
美鈴は完全に回復した体をならす様に駆け足で紅魔館に向かって行った。
そしてしばらくして、氷精たちが住む湖に到着した。そこで少しだけ荒くなった呼吸を直すために徒歩で紅魔館に向かおうとした。
だが、美鈴は何か違和感を感じた。
美鈴のいる所は、紅魔館のすぐ前の湖であり、ここから紅魔館を覗きこむ事が出来るはずなのだが……。
別に霧が出てるわけじゃない。きちんと遠方まで見渡す事が出来る。なのに、紅魔館の姿が見えなかったのだ。
美鈴は急いで紅魔館に急行した。嫌な予感がする。美鈴は足を速め、紅魔館の『在った』場所に到着してしまった。
「こ、これは………」
そこには紅魔館が存在していなかった。いや、一応、瓦礫と言う形として健在していた。
美鈴は辺りを見渡した。
すると、そこにはボロボロになりながら瓦礫を片付けている咲夜の姿があった。
「さ、咲夜さん!」
「え? あ、ああ。美鈴、もう体はいいの?」
咲夜の顔には生気が宿っておらず、いつもの完全で瀟洒なメイド長の姿は何処にも無かった。
「い、一体、私が居ない間に何があったんですか!?」
「……」
死んだ魚のような目をした咲夜は何も答えなかった。
「敵の襲来ですか!? お嬢様たちは……!?」
とにかく状況を知りたかった美鈴は咲夜の肩を力強く掴んで、事情を聞こうとした。
咲夜はしばらく反応しなかったのだが、とうとう我慢の限界が来たようだった。
「うわあああぁぁぁんッ!」
「なッ!?――さ、咲夜さん!?」
「わ、私に……私に言わせないで……お願い」
泣き崩れるように、咲夜はその場に垂れこんでしまった。
そのままずっと泣きやまずにいるため、美鈴も対応に困ってしまっていた。
そんな咲夜の鳴き声を聞きつけてか、パチュリーと日傘をさしたレミリアがやってきた。
「――美鈴。」
「お嬢様、パチュリー様! 良かった、御無事だったんですね。……この状況は一体……」
美鈴はレミリア様子が何か変である事に気付いた。
元気がないと言うか、ずっと俯いたままだったのだ。まあ、屋敷が崩壊して元気になれる者などいるわけもないのだが……
「パチュリー様、何が起きたのですか?教えてください。」
「レミィがメイドをやったら紅魔館が崩壊した。――それだけよ。」
「……は?」
状況を上手く把握できない美鈴はレミリアの方を見た。
レミリアはプルプルと震えながら、思いっきり叫んだ。
「も、もう……もうメイドなんて絶対にやらないんだからッッ!! うわあああぁぁぁんッッ!!」
結局、美鈴は状況を把握する事が出来ず、しばらくの間、混沌がその場を支配してしまっていた。
レミリアの叫びは、眩しい位の晴天に吸い込まれるように消えて行った。
そして紅魔館が出来上がるまで、彼女たちはプレハブ暮らしを強いられる事となり、天狗やら野次馬たちに珍妙な目で見られ続ける事となった。
完結ウゥゥッ!
お、終わった。疲れました
ここまで読んでくださった読者の方々には感謝してもしきれません。
基本的に10万文字以内に収まる作品を作っていこうと思います。
のこれからもよろしくお願いします。