高1
あれから何だかんだ文句を言いながらも小田切とつるむようになった。
「やっぱり、副会長になるには優秀な成績をとっておいた方がいいわね」
「まあ成績良くて損することはないだろうな」
「後は今の副会長がどんな人でどこが良かったのかなどの情報が欲しいわね」
「直接聞きに行ったらいいんじゃねえの?」
「それと生徒会のメンバーで誰かと仲良くなっておきたいわ」
まぁこの通りてきとうに相槌を返しているばっかりだが。
「あんたも働きなさいよ」
「ん?俺は特にすることなさそうだが?」
「安心しなさい、明日の放課後にある校庭の草刈りのボランティアに私のと一緒に申し込んであるから」
「小田切さん、マジですか?」
「マジに決まってるでしょ。人数多い方が早く終わるから助かるわ」
これはさぼっても文句を言われないやつですね。
「それに、話し相手がいた方が楽しいでしょ」
「…ちっ、しゃあねえな」
しぶしぶ承諾すると小田切はクスクス笑いながら言った。
「あなた、文句を言いつつもやってくれるわよね」
「ただの気まぐれだ」
「そう?でも私、比企谷のそう言うところ結構好きよ」
「そーですか」
ここで“あれ?こいつ俺の事好きなんじゃね?”って思う奴は三流だ。
一流ボッチのハートはこの程度では砕かれない。
ちなみにダイヤモンドは砕けないと言う言葉を聞いたことがあるかもしれないがダイヤモンドは普通に砕けるらしいぞ。
「探したぞ小田切」
小田切と会話していると急に後ろから声が聞こえてびっくりした。
「あら、潮君」
後ろを見てみると結構背が高いメガネをかけた男がいた。
うむ、なかなかのイケメンだ。さぞかしモテるのだろう。
リア充は○ね!っとどこかの隣人部の部長なら言うだろうが、俺はその程度のことでそのような汚い言葉を吐かない。
......いや、本当にちょっと背が高くて眼鏡が似合っててイケメンな位な位じゃあ俺はイライラしたりしない。
本当にちっとも羨ましくないし......。
......。
リア充は○ね!
「紹介するわ、この人は五十嵐潮君。で、こっちは比企谷よ」
「こいつが比企谷か…、五十嵐だよろしく」
「はぁ、どうも」
......ふむ、小田切の仲間か。
この前小田切を嵐の様だといった気がするが、また一つ嵐が増えちまったな。
五十嵐だけに(ドヤ)。
……。
…くだらねぇ。
・・・
・・
・
高2
「ふぅ~、とりあえずはこんなもんね」
土曜の夜、来週にある林間学校の荷物をキャリーケースに詰め込み終わり、少し休憩する。
最近は何かと忙しいのよね。生徒会の仕事をメガネ(会長)に押し付けられたり、生徒会長になるために親衛隊のメンバーを増やしたりで。
ブツブツ文句を言いながらリビングにジュースを取りに行くと弟がお風呂からでてきた。
この子は小学6年生でもう一人中学3年の弟がいる。
「ねーちゃん、風呂空いたよ!」
「ハーイ、今から入るわ」
少し疲れていたので丁度いい。そう思って着替えを取りに行く時に思い出した。
「あぁ、荷物にバスタオル入れてなかったわね。あと歯磨きセットも…」
*
これはどうゆう状況だ。
今、俺はデパートのフードコーナーで三つ椅子のある丸形のテーブルの一角に座っている。
隣には玉木、もう一方には小田切が腰かけている。
「小田切君、少し空気を読んでくれないか。僕は比企谷君と話があるんだ」
偉そうに言ってるけどラノベの話なんだよなぁ。
「アーラ、あなたこそ空気を読んだらどうなの?
私は比企谷と話があるのよ」
小田切の方は何の話か知らないがどうせろくなことないだろう。
「そもそも、なんで君がここにいるんだい?こんなところで油を売っている暇があれば生徒会の仕事でもして会長のポイント稼ぎをした方がいいんじゃないのかい?
まあ、生徒会長になるのはこの僕だけどね」
「うるさいわね、来週の林間学校のためにバスタオルと歯磨きセットを買いに来たのよ。
あんたなんかに言われなくても仕事は完ぺきにこなしているわ。それに、私を支持する親衛隊のメンバーも増えてきているし、このままだと私の圧勝で生徒会長になるでしょうね」
「「………フフフ」」
こいつら二人とも生徒会長の座を狙ってたな。あと宮村と言うイケメンを入れた3人が今期の生徒会長候補だろう。
どうでもいいけど向こうで話してくれないかな?俺関係ないから。
そして地味に買い物リストかぶってるし。
「まあいいわ。それより比企谷、あなたも私の親衛隊に入らないかしら?」
「…いや、遠慮しとくわ」
「そうそう、比企谷君は僕の味方だからね」
あんな変な奴らの一員になるのはごめんだな。
「別に遠慮しなくてもいいわ。今のうちに入っていたら私が生徒会長になったとき何かと得するかもしれないわよ」
「ボッチはどの集団にも属さないんだよ。
それに俺いてもいなくても大差ないだろ」
「そうそう、比企谷君には僕がいるからね」
さっきから横の奴うるせえな。
「そう…、じゃあ今日はこの辺にしとくわ。
……どうせいつでも仲間に入れれるしね」
それじゃあね、と言って小田切は立ち去って行った。
さっき小声でボソッと付け足された言葉の意味を俺は理解している。
小田切は虜の能力を持つ魔女、相手を能力にかければ簡単に言うことを聞かせられるだろう。
「全く、いやな女だね。
だが彼女が言っていた通り親衛隊とか言う連中の数も増えてきているし、やっかいな敵だ。
どうやって倒そうか?」
小田切が立ち去ってから玉木が口を開いた。
「俺に聞くな、自分で何とかするんだな」
「…相変わらずつれないね」
はぁ、とため息をして、玉木は何かを考える。
「…僕が思うに、彼女は魔女の力を持っていて、
それであれだけ自分の支持者を増やしていると思うんだ」
「ほぉ、面白い考え方だな」
まぁ実際その通りなんだが。
「だからもしこの考えがあったっていれば、彼女から能力を奪えば勝ったも同然というわけだ」
「そうだな、おめでとさん。
それじゃあそろそろ俺も帰ろうかな」
そう言って席を立とうとしたら玉木に止められる。
「少し待ってくれ、まだ話の続きがある」
「なんだよ、まだあるのか」
「たださっきの作戦には問題があってね。
君は知っていると思うけど、僕は生徒会長に頼まれて既に能力を持ってるんだ」
「ああ、透明人間だろ」
「そう、この能力は僕も気に入っているんだよ。
つまり他の魔女の能力は奪えない、そこで君に頼みがある」
「断る」
もう嫌な予感しかしない。
「もし彼女が魔女の能力を持っているなら君が奪ってほしい。
僕と同じ“魔女殺し”の力を持つ比企谷八幡君」
「そんな事だろうと思ったよ」
玉木が言っている通り、玉木の能力では一人の魔女の能力しか奪えない。
だからもし小田切の能力を奪いたいのなら、俺に頼むのは当然のことではあるが、
「断る。そもそもお前らの勝負なんだから自分で何とかしろ
俺は帰ってプリキュア見る」
「そんなぁ~、頼むよ比企谷君」
そして今度こそ席を立ち上がり、帰ることにした。
そもそも玉木にこんなに絡まれるようになったのも、あいつが俺と同じ能力を持ってるって知ってからだったな。
…山崎先輩め、余計なことしやがって。
「頼むよ比企谷くーん」
「…」
「無視しないで!透明人間の能力なんてかけてないでしょ!」
「…」
「比企谷くーん」
もちろんこの後何度も頼まれたが、すべて無視した。