良ければ暇つぶしに読んでください。
超常現象研究部 部室にて
この部室には色々な思い出がある。
俺が新入部員となり宮村先輩と山崎先輩がはしゃぎまわってパーティーをしたり、魔女探しの事で話し合ったり、テスト勉強に使ったり、宮村先輩がハサミで壁に穴をあけたり、その穴を隠すために山崎先輩の持っている変なお面を壁にかけたり。
いろんなことをここでやった気がする。
……だが、
今の様な事は、一度もなかった。
——————*
「さぁ始まりました、“ヒキタニの事を一番理解しているのはこの私!!”選手権。
司会は毎度おなじみ超研部伊藤雅と」
「白石うららです」
「待て待て、何だそれは」
「いやーそれにしても、何だか久しぶりの登場な気がするね」
「ええ、三カ月ぶりくらいかしら?」
「そう言う発言やめろ。相変わらず無茶苦茶な奴らだな」
俺の声は届かず、ノンストップ彼女たちは話し続ける。
「とまぁ軽い雑談をしていたいところですが、選手の皆様が今か今かと待っていますので選手の紹介をさせてもらいます。
うららちゃん、お願いします」
「はい、それでは早速一人目」
完全に無視。
本当に何するの、これ?せめて説明してくれよ。
「エントリーナンバー1番。
“比企谷が欲しくば私を倒して行け”
もはや比企谷君の姉的存在である宮村レオナ先輩です」
「ああ、よろしく」
白石が手元の紙に書いてある文を読み終えると、宮村先輩は椅子から立ち上がりぺこっと挨拶をする。
…何ださっきの紹介文。
「宮村先輩は比企谷君の部活の先輩で、一年の二学期の放課後はほぼ毎日会っていたというキャリアを持っています」
「期待できそうですねぇー」
何に対する期待だよ。
「続きまして、エントリーナンバー2番。
“比企谷さんの事を一番理解している?そんなの私以外に誰がいるというのですか?”
もはや比企谷君のストーカー的存在である飛鳥美琴先輩です」
「よろしくお願い致します」
先ほどの宮村先輩のように飛鳥先輩も椅子から立ち上がりぺこっと挨拶をする。
…だから何だその紹介文。
それに飛鳥先輩ストーカーって言われてるんだから否定しろよ。
と言うかお願いだから否定してくれ。100円あげるから!!
「飛鳥先輩は今大会の出場者の中では一番比企谷君との接点が少ないですが、かなりの情報を持っているそうです」
「期待できそうですねぇー」
「続きまして、エントリーナンバー3番。
“比企谷について勝負する?……まぁ、暇だし参加してもいいかしら。暇だし…。
別に比企谷の事だから参加したいとかそういう事じゃないから。別に比企谷の事だからってムキになってるわけじゃないから”
元生徒会副会長で比企谷君のクラスメート、小田切寧々さんです」
「ちょっと、私の紹介文だけ長いんだけど!」
…お前も参加するのかよ。
「彼女は二年の春から比企谷君と同じクラスなので接点も多く、林間学校では同じ班になり、休日にはディスティニィーランドでデート、文化祭では一緒に見回ったほどの実力者です」
「ちょ!あんまり言いふらさないでよ!!」
「期待できそうですねぇー」
お前さっきからそれしか言ってないぞ。
「そしてそれだけでなく、実は小田切さんと比企谷君は一年の時から仲良くしていたという新たな情報も入っています」
白石よ。誰にそんな事教えてもらった。
「そして最後の一人。エントリーナンバー4番。
今回唯一の男性、玉木真一君です」
「僕の紹介文は!?」
「長いので省略させてもらいます」
こいつは無視。
「はい、というわけでこの四人にヒキタニについての質問を早押しでしてもらい、一番多く答えられた人が勝者となります。
ちなみに、この四人は予選を通過した猛者達です。白熱した戦いが期待できそうですね」
「予選?そんなのあったのか?」
俺の問いかけを聞き、目を合わせてきた白石が言う。
「ええ、さっきじゃんけんで決めたのよ」
「じゃんけんかよ…」
じゃんけんで勝った奴らを猛者とか言うな。
「観客には予選で敗退してしまった猿島さんや、滝川さん、それに山崎先輩。
あと普通に見ているだけの宮村君、山田君、椿君がいるわ」
「丁寧なご説明ありがとう」
今超研部では、司会席とか言って左奥に白石と伊藤が座っており、左側の真ん中になぜか俺が待機させられ、手前の方には観客。
そして向かい側には椅子と机を並べられて、そこに四人が座っている。
「ではルールを説明します。
こちらが出題する問題に対し、答えが分かった方は手元のボタンを押してください。
早押しですので、問題が言い終わる前にボタンを押しても構いません」
「答えの正誤はヒキタニに判断してもらうわ。机の中に問題書いた用紙が入っているから確認しておいてね」
誰だよヒキタニ君。俺の代わりにやってくれ。
「そして、見事優勝した方には豪華景品が!」
「「「「おぉ!!」」」」
豪華景品と言う言葉にやたら食いつく四人。
何を期待しているんだ。
「それはまさか、比企谷に何でも命令できる的なあれじゃないでしょうね」
「……何でもですか。…そうですか」
「優勝賞品は勝ってからのお楽しみとさせてもらいます。
……では早速、第一問!!」
まて、優勝賞品先に言ってくれ。場合によっては本気で逃走するから。
「えー、比企谷君の嫌いなた[ピンポーン]……はい、飛鳥先輩」
……ボタン押すの早過ぎだろ。
「トマトですわ」
……しかも合ってるし。
「さぁヒキタニ、判定は?」
……俺の嫌いな食べ物は確かにトマトだ。
が、しかし、今回の答えは俺が決めていい。つまりここで俺が嘘をつけば飛鳥先輩の得点にはならない。
……この人だけには勝たすわけにはいかねぇ。
「残念ながら不せい「なお、ここで嘘をついた場合は後から飛鳥先輩にお仕置きしてもらいます」……正解です」
「……クス、私としては嘘をついてくれても良かったのですけど」
「飛鳥先輩1ポイント!」
おぉ!!と観客から歓声が上がる。
「クッ、さすがは山崎の秘書をしていただけはある。
まさか先手を取って来るとはな」
「ああ、比企谷君の親友として絶対にこの戦いに負けるわけにはいかない」
「何で比企谷の嫌いな食べ物知ってるのよ……」
先を越され悔しがる二人と、当然の疑問を持つ小田切。
誰でもいいから頑張って飛鳥先輩に勝ってくれ。
「さぁ皆さん次に行きますよ。続いて第2問!」
「えー、比企谷君の好きなの[ピンポーン]……はい、飛鳥先輩」
だから早すぎーー。
「マックスコーヒー」
「ではヒキタニ、判定は?」
机の中に入っていた問題用紙には好きな飲み物について、と書いてある。
……つまり合ってるな。
「せ、…正解です」
おぉ!!とまた観客から歓声が上がる。
確かにすごいけども…。
「フフ、私の圧勝になりそうですね」
「「「「…早すぎて手も足も出ない」」」
「他のお三方も頑張ってください。
続いて第3問!!」
「えー、比企谷君のきゅ[ピンポーン]……はい、飛鳥先輩」
……もうツッコまない。
「特に出かけず家でダラダラする」
問題文、比企谷君の休日の過ごし方。
「……正解です」
「「「嘘だ!!」」」
三人が一斉に叫びだす。
「あらあら、皆様負け惜しみとはみっともないですよ」
「いや、いくら何でもこれはおかしいだろ。
おい司会者、問題が漏れているんじゃないか?」
宮村先輩にギロっと睨まれ、一瞬おびえる電波女(伊藤)。
そうだ、そうだ。絶対におかしいわ。
チートやチート! チーターや!!
「い、いやぁ、そんなはずはないですけど……」
おどおどしながら答える伊藤を見ているとさすがに少しかわいそうになって来たので、宮村先輩を落ち着かせる。
「まぁまぁ宮村先輩。飛鳥先輩は早押しクイズが得意なだけですよ。
別に問題を知っているとかじゃないと思いますよ」
「…うーむ、確かに、さっきは言いすぎたかもしれないな」
こうして宮村先輩はすまんな、と言って伊藤に軽く謝る。
まぁ宮村先輩も怒っていたわけではない。
彼女が怒れば必ずハサミが出てくるから。トーレス、オンするから。
「……ちょっと考えたのだけれど、比企谷君について誰が一番知っているか、と言うのを競うものだから、さっきのように早押しだとちゃんと競えないと思うの」
先ほどまで静にしていた白石が新たな提案をする。
「少しやり方を変えて、早押しではなく、みんなが答えられるようにした方がいいんじゃないかしら?答えを紙か何かに書いて一斉に発表するの」
「…確かに、そちらの方が僕達も答えられるしいいかもね」
ふむふむと皆様納得したようで、少しやり方を変えるらしい。
正直どうでもいい戦いのどうでもいい争いだったのでどうでもいいのだが。
「私からも提案があります。
長々と問題を出していても意味がないと思うので、一番難しい問題を一題出すのはどうでしょう。それを正解した人の優勝と言う事で」
「……意味がない、とはすごいですね。どのような問題を出されても答える自信があるのですか?」
「ええ、なので一番難しい問題を答えて早々に勝たせてもらおうかと」
「「「ほーう」」」
完全に対立する飛鳥先輩と他三人。
かなり闘争心を刺激されたようだ。
「………はい、ではこちらで考えさせてもらった一番難しい問題を紙に書いて一斉にお答えしてもらいます。比企谷君も紙に書いてね」
「あぁ」
そうして電波女がさささっと紙とペンを配り、準備が整った。
「さぁ予定より早く最後の問題がやってきましたが、泣いても笑ってもこれが最後。
張り切って行きましょう、最終問題!!」
「えー、比企谷君の好きなものは?」
………。
……ん?
「……好きなもの?」
「はい、比企谷君の好きなものを書いてください。
もの、と言いましたが生き物でも食べ物でもアニメでも人でも何でもいいです。
この問題のみそは比企谷君が好きなものと聞いて何を答えるのか、というところまで予測しなければならない事です」
「……なるほど、さっきまでの問題と違い比企谷の思考まで理解していないといけないという事か」
「ふむふむ、なるほどな」
……俺が好きなものか。
何を書くか迷うな。
「「「フフフ、これなら楽勝」」」
「え!?」
問題を理解した途端、小田切以外の三人はペンを走らせる。
そして取り残された小田切は頭を悩まし、何かを書いては消し、何かを書いては消し、と悩んでいるようだ。
……俺まだ何もかけてないのに、何で三人は書けるのでしょう。
そして1分後
「はい、時間となりましたので発表とさせてもらいます!!」
「「「…勝った」」」
「…難しい」
やはり自信満々な三人と、最後まで悩んでいた小田切。
自信なさげに小田切がチラッとこちら見てくるが、普通にドキッとするだけなのでやめていただきたい。
「ではでは皆さま、一斉にお答えをどうぞ!!!」
電波女の掛け声で、四人が一斉に紙をこちらに向かって広げる。
「これに間違いない!!!」
宮村レオナの解答: 私!!
「小学生の低学年レベルの問題でしたわ」
飛鳥美琴の解答: 私
「あまりなめてもらっちゃ困るね」
玉木真一の解答: 僕
「……なんか他の人と違う」
小田切寧々の解答: 妹さん
「ではヒキタニ、答えをオープン!!」
「ん」
比企谷八幡の解答(答え): 小町
「と言う事で!優勝は小田切寧々さんです!!!!」
「「「そんなバカなぁぁーー」」」
君達バカなのかな?
こうして、観客のおおぉ!!!という歓声と、
三人の叫び声で戦いの幕は閉じられた———————。
………何だこの雑な終わり方は。
*
ちなみに優勝賞品は
「小田切さんには、私達超研部が文化祭の時に売り出した、“山田君が素材にこだわりぬいた最高級焼きそばパン”一月分を贈呈します。
おめでとう、小田切さん」
「……別に欲しくないわ」
と言う事で、後日小田切さんは優勝したからと言う理由で比企谷君にデートへ連れてってもらいました。
前まで読んでくださっていた方々、お久しぶりです。
比企谷君と虜の魔女の続きは書くと思いますが、今は他の作品を書いていますのでそちらが落ち着いてから書き始めようと思っています。
ちなみに今書いているのは俺ガイルと東京喰種を混ぜた作品です。
興味があれば読んでみてください。