比企谷君と虜の魔女   作:LY

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第二十八話

高2

 

朱雀高校2-B教室にて

 

 

「それじゃあ魔女集めしようぜ!」

 

「まずは誰から声をかけるんだい?」

 

 

昨日、宮村先輩の家に行ってから山田も玉木もやる気が出たようで、二人とも昨日より元気がある。

 

 

「効率重視で考えると手分けして集めるのがいいかもな」

 

「ふむふむ、なるほどな」

 

 

山田は納得すると、教室の前にある黒板にそれぞれの魔女の名前を書き、その上に何かの絵を描く。

 

 

「…山田君、その名前の上に描いている変なキャラクターは何かな?」

 

「は?似顔絵に決まってるだろ。

こうすると分かりやすいと思って描いたんだよ」

 

 

どうやら魔女たちの似顔絵だったらしい。

 

絵のレベルは幼稚園児と比べればいい勝負をしそうだ。

 

 

「とりあえず生徒会の仲間である西園寺リカは後回し。

それと宮村先輩からメールで言われたが、儀式は魔女本人じゃないとできないらしい」

 

「ふむふむ、なるほどな」

 

 

山田はうなずいているが本当に理解しているのか?

 

 

「…つまり元々透明人間の能力を持っていた飛鳥美琴が必要って事かな?」

 

「そうなるな。だから玉木は飛鳥先輩とキスして能力を元に戻さないといけない」

 

「え!?能力って元に戻せるのかい!?」

 

 

こいつ知らなかったのか。

 

 

「とにかくさっき言った西園寺リカと飛鳥美琴は後回しにした方がいいだろう。

となると白石、小田切、大塚、猿島、滝川の五人に手分けして協力を頼む」

 

「じゃあ誰が誰を担当する?

俺と玉木はあいつら全員から忘れられているからな」

 

 

俺が面識を持っているのは大塚以外、しかし小田切は俺が魔女に関わっている事を知らない。

 

山田に白石を頼むのは×。

 

玉木は小田切と敵同士だからそれ以外。

 

 

 

つまり一番いい分配は……。

 

 

「…俺は白石と猿島に声をかけてみる。山田は小田切と大塚、玉木は滝川を頼む」

 

「えぇ!なぜ僕があの生意気な小娘を担当しなければならないんだ」

 

「別に深い意味はない。普通に声をかけるだけでいいんだよ。

もし断られたら後から三人で行けばいいしな」

 

「…まぁ比企谷君の頼みならば仕方ないか」

 

「それじゃあ早速行こうぜ。

大塚は漫研部だからすぐに見つけられるし、小田切はその辺にいるだろ」

 

「滝川は一年の教室でも見てみるよ」

 

「分かった。じゃあ一通り終わればまたここで」

 

 

 

こうして俺達は手分けして魔女を集め始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺が向かったのは超常現象部。

 

白石はここにいるはずなのでとりあえず協力を頼む。

 

 

 

 

コンコン

 

 

 

「はい」

 

 

ノックをすると女性の返事が聞こえた。

 

 

「あら、比企谷君。こんにちは」

 

「おう」

 

 

部室のドアを開けて出てきたのは白石だった。

 

 

「どうかしたの?」

 

「あぁ、ちょっとな」

 

 

部室の中には白石以外いないようで、俺にとっては絶好のチャンスだ。

 

 

「その、…今すぐじゃないんだが、今度用事があるから集まってほしい」

 

「集まり?誰が来るの?」

 

「魔女の奴らを集めてやってもらいたいことがある」

 

 

我ながら変な事を言っているが大丈夫だろうか?

 

 

「……魔女?

魔女って朱雀高校の七不思議にある魔女の事?」

 

 

「......?

 

もちろんそうだが......」

 

 

おかしい。思っていた反応と違う。

 

 

「フフ、意外ね。比企谷君はそう言う話は信じない人だと思っていたわ。

 

私も魔女の力があったらいいなって思ったけれど」

 

 

…この何かズレた感じは二回目だな。

 

 

「…そうだな。変な事言ってすまん。

とにかく今度来てほしいから前もって話しておこうと思ってな」

 

「分かったわ。その時はまた言ってね」

 

「ん、ありがとな」

 

「ええ、……あっ」

 

 

話が終わったので帰ろうと思ったが、白石が何かに気づいたような声を出した。

 

 

「どうかしたか?」

 

「そう言えば忘れていたわ。比企谷君にはこうした方が良かったわね」

 

 

白石は顔を隠すように、両方の手のひらを顔につけた。

 

 

「…あの、何をなさっているんでしょうか?」

 

「この前こうするのが趣味って言ってたから喜ぶと思って」

 

 

白石は指の隙間からチラッとこちら見てくる。

 

 

何これ、めちゃめちゃ可愛いんですけど。

 

 

 

「ああ、前の事は忘れてくれ」

 

 

多分山田の告白後に会った時のことを言っているのだろう。

 

 

「そう?

それじゃあ約束ちゃんと覚えておくから」

 

「あぁ、またな」

 

 

 

白石は別に目上の人ではないが、俺は軽く会釈をして踵を返しその場から歩き出した。

 

 

 

 

 

「ねぇ、比企谷君」

 

 

「ん?」

 

 

 

話はもう済んだと思っていたが、数歩進んだところで白石は俺を呼び止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「“約束よ”」

 

 

 

 

 

 

 

 

「………え?」

 

 

 

 

一瞬、頭が真っ白になった。

 

 

 

「約束、比企谷君忘れそうだから念を入れてもう一度言ったのよ」

 

「…ああ、さすがに自分から言い出したことだから大丈夫だ」

 

「それなら良かったわ」

 

 

 

クスっと少しだけ笑って白石は部室に戻って行き、廊下は俺だけになった。

 

 

 

 

 

 

「……猿島探すか」

 

 

さっきの言葉を気にしないように、俺はまた歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから校内をぶらつき猿島を探してみたがなかなか見つからない。

もうすでに下校してしまったのだろうと思ったので2-B教室に戻った。

 

 

「おう、比企谷。

どうだった?」

 

 

教室には山田がいた。玉木はまだの様だ。

 

 

「白石には声をかけておいたから大丈夫だ。

だが少し面倒なことがあってな、白石は自分が魔女であることを覚えていない」

 

「……そうか。

白石は俺と偶然キスして自分の能力を自覚した。

だから俺との思い出を消されて、自分が魔女であることも忘れちまったのかもしれない」

 

 

なるほど。まぁ本人が分かっていなくても儀式に関係ないから大丈夫ではあるが…。

 

 

「そっちはどうだった?」

 

「漫研部に行ったら大塚はいたがめちゃくちゃ警戒してきて話にならなかったわ。

小田切も見かけたが忙しいって言って話を聞かなかったし…。

何かあいつまだ七人目の魔女を探してたぜ?」

 

 

ふむ、西園寺先輩が記憶をいじったせいで色々おかしなところがあるな。

 

 

「だが俺も収穫ありだ!猿島を見かけて魔女の話をしたら信じてくれてな!

儀式の事も頼めたし、ついでに能力をコピーさせてもらった!」

 

 

能力のコピーって、つまりキスしたって事だろ。

 

…猿島よ、

帰国子女だからってキスに抵抗なさすぎだ。

 

 

「あとは玉木だな。あいつ遅くねえか?」

 

「確かに」

 

 

玉木は滝川を探しに行ったはず。

そんなに時間がかかるものなのか。

 

 

 

そんな事を話していると、タイミングを狙っていたかのようにドアが開いた。

 

 

「遅くなってすまない」

 

 

噂をすれば影、玉話をしていたら玉木が来た。

 

 

「滝川の奴全然話を聞いてくれないし、取り巻きの三人に追い払われるし、苦労したよ」

 

「それで結局、滝川と話せたのか?」

 

「ああ、それがむかつくことに比企谷君の名前を出したら目の色変えて話を聞き出したよ」

 

「…そうか」

 

 

まぁこれで三人。

 

一日目にしては上出来だろう。

 

 

「とりあえず今日はここまでにして帰ろうぜ」

 

 

山田はそう提案し、俺も玉木も賛成した。

 

 

「それじゃあ比企谷君、一緒に帰ろうか」

 

「一人で帰れ」

 

 

それから下校するため廊下を歩き、下駄箱に到着した。

 

 

「…またか」

 

 

下駄箱を開けると封筒が入っていた。

 

前回もこのような事があったので、誰からの手紙かすぐわかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

[比企谷君へ  明日生徒会室に来てください]

 

 

 

 

 

どうやら動き出したのは俺達だけではなく、生徒会も同じ様だ。

 


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