高2
朱雀高校 文化祭
「はぁー、人が多いわ」
周りを見渡すと人、人、人。
やれメイド喫茶をやっているだの。
やれお化け屋敷をやっているだの。
やれ100パーセント当たる占い(焼きそばパン付き)をやっているだの。
今まさに、朱雀高校は最高の盛り上がりである。
「何か面白いものないかしら」
廊下を歩き、いろんなクラスや部活などの屋台を一人で見て回る。
いつもなら誰かと一緒に行動するのだが、今回は誰も誘わなかった。
もちろん友達がいないわけではない。
「一緒に行きたい奴は誰かって聞かれたら、真っ先にあいつの顔が出てきたのよね」
同じクラスだから思い切って誘えばよかったのに。
私って案外ヘタレなのかしら?
「…はっ!もちろん好きだからとかじゃないわ。ディスティニィーランドに行ったとき話が結構合って、楽しかったからまた話したいなと思っているだけで…」
…私は誰と話しているのよ。
「…ディスティニィーのときにLINE交換しとけばよかった」
せっかく二年生になってからガラケをスマホに変えて、話題のコミュニケーションアプリを入れたんだからもっと活用しないと。
「まぁ今更ブツブツ言ってもしょうがないわ。
とにかく甘いものでも買いましょう」
そう言ってまた屋台を見るのに集中しようと思ったが、ほとんど無意識に通り過ぎる人に目をやる。
まるで誰かを探すように。
ゾンビのような目に姿勢の悪い猫背。
頭のてっぺんにはぴょこっとアホ毛が飛び出している奴…。
「そんな簡単に見つかるわけな「うわ…っぷ」…あっ!?」
前をちゃんと見ていなかったため誰かとぶつかってしまった。
幸い相手は私より小柄で、ぶつかりはしたが二人ともコケていない。
「すみません、よそ見してました」
「あっ、その、私もよそ見していたわ。ごめんなさい」
ぶつかったのは顔立ちから中学生くらいの女の子だと思われ、片手に文化祭のパンフレットを持っている。
そして頭のてっぺんには
アホ毛が揺れている。
「あの~、失礼ですけど朱雀高校の人ですよね?
ちょっと道を聞きたいんですけど…」
「ええ、構わないわ。
良かったらそこまで送るわよ?」
「ええ!いいんですか!?」
私は生徒会だし、それにどうせ暇だからね。
「ありがとうございます!
いやー、兄と待ち合わせしたんですけど場所がなかなか見つからなくて」
パンフレットの地図を指さしココです!と女の子は言う。
「へぇ、お兄さんと一緒に見て回るの?」
指を指している所を確認し、女の子を誘導しながら会話の続きをする。
「はい!うちの兄は妹がいないとダメダメですから」
「フフフ、仲いいのね」
思わず微笑む。かわいらしい妹さんだ。
「そう言えばお姉さんはお連れの方はいないんですか?
美人さんですから男の人とか」
「それがいないのよねぇ。
誘おうと思ってた人はいるんだけどタイミング逃しちゃって」
「それは残念です……。
それじゃあうちの兄はどうですか?
今なら無料でレンタルしちゃいます!」
「いや、それはさすがに…。
そもそもお兄さんは何年生なの?」
「二年生ですよ」
同い年か、案外玉木とかだったりするかもね。
「はい、着いたわよ。」
話している間に目的地に到着した。
「お兄さんいる?」
「えーとですねぇ……、あっ、いました!
あれですよ!」
妹さんが指さす人を見ると、どこかで見たことがある顔だった。
「あれって、…玉木よね」
まさか予想が当たるなんて。
「お兄ちゃん!こっちこっち!」
大きく手を振り玉木を呼ぶ妹さん。
それに気づいたのか向こうから玉木は歩いてくる。
正直全然似てないわ。
「おぉ、奇遇だね、小田切君
相変わらず友達いないのかい?」
フッと鼻で笑い、小ばかにしてくる。
「あん?あなたと一緒にしないでくれる?
それにあなたの妹連れてきてやったのよ」
やはり生徒会長の座を狙う者同士、仲良くできないわね。
「は?妹?」
何を言っているのか分からなそうな玉木。
目の前にいるのに見えないの?
「いやいやお姉さん、うちの兄はこの人じゃないですよ。
うちの兄はこの人の後ろにいるアホ毛頭です」
「ん?後ろ?」
玉木の後ろには確かに頭のてっぺんにぴょこっとアホ毛が飛び出している、猫背でゾンビみたいな男がいた。
「…うっす」
「ひ、比企谷!?」
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