冬木市新都内、ヴェルデ内。
私、いい女こと美綴綾子は春物の洋服を見たくて、一人でヴェルデ内をうろちょろしていた。
暇なんだね、と言われればそうなんだけれど。
いやだって、遠坂つかまらないんだもの。そりゃ一人で春物をみにくるよ。
あれ?私は誰相手に言い訳してるんだろ。まあいいか。
とりあえず、春物のカーディガンとそれに会うスカートを手に入れて、さて、帰るにはまだ早い時間だし、とウィンドウショッピングと洒落込んでいるのである。
「あ、これ新作出たんだ、スルーしてたなあ…」
ゲームショップで足を止め、最近プレイを止めているゲームの新作のPVを見ていた。
と、そこに。
「あ、アヤコおねえさん…」
「ん?あ、アナちゃん」
さて、ちょっとどうしようかな、とゲームショップから離れようとしたところで、声をかけられた。
私に声をかけてきたのは、アナちゃん。ちょくちょく会う後輩の間桐妹の親戚さん。
いや、間桐妹の親戚なら兄のあれとも親戚付き合いあるはずなんだけれど、よく一緒に見るのは間桐妹のほうだな、とは思っている。
「アヤコお姉さんはお一人…ですか…?」
「うん、一人。アナちゃんは?」
「さくら…お姉ちゃんと後、りん…お姉ちゃんと…」
「マジ?遠坂のやついんの?」
「うん…あ、これ内緒だった…」
「アナちゃん、口止めされてた?」
「はい…会うとは思ってませんでしたし、いいかな、ぐらいでしたが」
「まあ、そうだよなあ。…さて、遠坂のやつにはなにか仕返ししてやらないとな」
なんて言って、アナちゃんの頭を撫でてやろう。
くしゃくしゃ、と髪をなでてやれば、ちょっと困りながらも嬉しそうに。
「アヤコお姉さんやめてください」
なんていうアナちゃん。
可愛い、妹がいればこんな感じなんだろうなあ、って思う。
うちにはむっさい弟しかいないからなあ。できれば妹が欲しかった。
妹と一緒にお出かけしたりしたら楽しいだろうなあ。
「…何してるのよ綾子」
「何、アナちゃんをかわいがってるのさ。よ、遠坂。美人でいい女な私の誘い断ってこんな可愛い女の子とデートか」
「仕方ないじゃない。私だって都合があるのよ」
「いいけどさー。なんかおごれよなー」
そう、アナちゃんを超なでていたら一緒に来ている遠坂が現れた。
とりあえず私はジト目を遠坂に向けてやる。
「と、遠坂一人か?間桐妹は?」
「桜とは今別行動。まあ、後でフードコートで合流するから、一緒に来る?」
「お、奢ってくれんのか?」
「仕方ないわね」
ふぁさっと髪をなびかせる遠坂。
それを見て、ふふっとなる私とアナちゃん。
「まあ、私とアナちゃんの分で許してやるか」
「あ、あとサクラ…おねえさんのぶんも…」
「そうだな。ちゃんと奢れよ、遠坂」
「わかったわよ。仕方ないわねえ」
アナちゃんを大分可愛がれたし、ケチな遠坂が奢ってくれるレアなケースを楽しむ。
まあ、そんな日だったから私としては大満足だ。
ところで、時々遠坂のやつが私とアナちゃんをみてニヤニヤしてるのは何故なのだろうか。
なにかあるのだろうか。それだけ聞いとけば良かったが、なんだかそれは怖くもあったのでやめておいた。
やったぜ。