千歌の目の前には、思わず目を瞑ってしまいたくなるほど眩しい光へと続く道がある。そして、光の先ではAqoursの登場を今かと待ち続けるファン達の声援が聞こえる。
「いよいよ……なんだね。」
ポツリと呟くと大きく深呼吸をして、本場前という緊張と大きな夢という高揚によって、激しく脈打つ心を落ち着かせる。
今日、横浜アリーナでAqoursはファーストライブを行う。沼津や豊洲で、ミニライブを行ってはいたが、今回はまるで規模が違う。
「千歌ちゃん。ここにいたんだ。」
後ろから、梨子が立ち尽くす千歌に声を掛ける。本番前ということで梨子の表情は固く、まるでコンクリートのよう。
「梨子ちゃん、緊張してるの?」
「当たり前でしょ。こんな大きなライブは初めてだし……それにこんなにたくさんの人達が見にきてると思うと……緊張しちゃって。」
声を震わせながら梨子は弱音を吐く。Aqoursが結成してまだ二年で駆け出しにも関わらず、たくさんのファンがこの会場に……否、全国のライブビューイング会場でAqoursの輝きを見守りに、そして応援しに駆けつけてくれている。今回のライブで把握しきれないほどファンの前でパフォーマンスをするとなるとやはり、緊張せずにはいられない。
「そうだよね。私も緊張してるけど、それでも楽しみの方が大きいかな。」
「ふふ、千歌ちゃんらしいね。」
千歌らしい前向きな言葉に梨子は思わず笑みを溢してしまう。しかし、千歌のそういうところに惹かれ、今、こうやってAqoursに参加してるいのだ、改めて実感した。
「あっ!千歌ちゃん!ここにいたんだ。」
「曜ちゃん!」
すると、曜も準備を終え、千歌の元に駆け寄った。
「ねぇ、2人とも見た?すごいたくさんの人だったよ!……私達、ここまで来たんだね。」
「確かにここまで来たよ。……だけど、私達だけの力じゃない。ファンのみんなや、会場の人達、スタッフ方々……そして、μ`sがいたからこそ私たちはここにいるんだ。」
千歌は確信していた。Aqoursがこの場所に立っているのは決してAqoursだけの力だけではないと。Aqours支えてくれたファン、スタッフ、そして、「ラブライブ!」という礎を築いたμ’sの活躍があったからこそ、今のAqoursがある。千歌はその全てをこのライブを目の当たりにし、気づいたのだ。
「そうかもね。でも、全部が全部じゃないと思う。私達に魅力がなかったら、ファンも付いてきてくれなかったと思う。だから……自信を持っていいと思う。」
曜は後ろからゆっくりと千歌に抱きつき、耳元で優しく囁く。おそらく、千歌は圧倒的なプレッシャーに気圧されていたのだろう。曜はそれに気づき、励ましたのだ。
「……そうだね、曜ちゃんの言う通りだ。」
千歌の表情がゆっくりと明るくなっていく。すると、続々とAqoursメンバーが千歌の元に集まっていく。
「緊張してるの?私がハグしてあげようか?」
「果南ちゃん!……だいじょうぶ!もう、元気100倍だから!」
いつもより、若干元気のない千歌を自分なりに元気づけようとする果南。
「全く、千歌さんがしっかりしてくれないと私達が困りますわ。」
「そうね。折角のStageだもん。enjoyしないとね!」
厳しくも優しいダイヤに、ハイテンションでマイペースな鞠莉。
「ピギィ!緊張する……。」
「ふふ!堕天使であるこのヨハネにとって、申し分ないわ!」
「善子ちゃん。緊張しすぎて、衣装の後ろ前反対に着ていたずら。」
「それ言わないでよ!ずら丸!それに善子言うな!」
気が弱くも、しっかりと前へと進むルビィに自分らしく振舞う善子、みんな支える花丸。
「千歌ちゃん!行きましょ!」
「最高のライブにしよう!」
「うん!」
そして、ずっと側で支えてくれている曜に梨子。増えてもいけないし、欠けてもいけない。この8人がいたから今の自分がいて、Aqoursがいる。
それはやはり奇跡としか言えない。千歌はその奇跡は大事にしたい。そして、その奇跡をもっと輝かせたいと決心した。
「みんな行こう!」
千歌の掛け声ともに9人は集まり、親指と人差し指を出し、大きな円を作る。
「このファーストライブは私達の最初に踏み出す大きな一歩!そして、輝くための大きなステップ!私達、そして、見に来てくれたみんなを楽しませるために、絶対に成功しよう!」
「「「「「「「「うん!」」」」」」」」
「Aqours!」
サンシャイン!
掛け声ともに9人は天高く人差し指を上げる。
そして、歓声が鳴り止まない光の向こう側に大きな一歩を踏み出したのだ。
いかがでしたか?千歌ちゃんがライブ前にどんなことを思い、そして馳せているのか自分なりに考えた結果、この作品になりました。
因みに自分は2日のLVに参戦します。
さぁ、Aqoursのファーストライブ!みなさん楽しみましょう!