【完結】妖精さん大回転!   作:はのじ

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【重要】
 このお話には艦隊これくしょんで実装されていない、または実際には就航されなかった艦船もいてたりします。ただイメージ出来ない艦娘を出しても味も素っ気もないのでフレーバーですが。これは、僕の設定上の都合ではあります。ですのでタグに【ご都合主義】を追加しました。

追加のタグとして【残酷な描写】【鬱】も追加しています。合わせてご注意下さい。


本作は艦隊コレクションをリスペクトしております。アンチしているつもりは一切ありません。

長いので休み休み読んでください。
力尽きたので誤字脱字はとりま勘弁してください。

とりあえず最終回です。( ー`дー´)キリッ





最終話 Thank you for all the fairies(終)

「私たちはみんなの所に挨拶に行くわね。一人前のレディとして当然のことよね。さぁ行くわよ」

 

 暁が暁型の三人を連れて提督旗下の艦娘の所へ挨拶へ向かった。三者三様に提督と龍驤に声を掛けていく。

 

「はーい。じゃ龍驤、あと説明よろしくねっ。私たちは天龍探してくるから」

 

「お願いするのです。はわわわっ!先に行かないで、なのですっ!」

 

Увидимся позже(また、後で)。腕が鳴るね」

 

 順に暁、雷、電、Верный(ヴェールヌイ)である。

 

「うちが行くまで始めたらあかんよ」

 

 龍驤は楽しそうに走り去っていく四人の背中に声をかけた。龍驤は振り返り提督と相対した。

 

「援軍はとりあえずうちらだけやね。直ぐとは言えんけど他の所も順次駆けつけてくれるんやないかな」

 

 応援に駆けつけてくれた艦娘を代表して軽空母龍驤が事情を説明した。

 

 白雪から援軍要請を受けた初風が艦娘同士で連絡を取り合い、各地の戦地で戦う提督に援軍を求めた。しかし、軍の横槍で巣の攻略を前倒しにした大規模攻略の為、即座には動けない連合艦隊が多かった。一度巣に入ってしまえば外部と連絡が取れず、突入した連合艦隊が撤退を決めない限り羅針盤の気まぐれもあり、いつまで留まっているか巣の外で待機している者にもわからない為だ。

 

 そこで待機している予備部隊から必要最低限を残した上で有志を募り余剰の資源を保たせ先行部隊として駆けつけたという訳である。龍驤と暁形の暁、Верный(ヴェールヌイ)、雷、電の五人は同じく待機していた自らの提督の許可をもらいここにいる。他の戦地でも同様の処置が取られていることだろう。

 

「なぁキミィ。なんかあったらうちを頼ってもいいっていうたん、忘れてへんやろな?ちゃあんと来てやったよ」

 

 背伸びをし、提督を見上げながらニヤリと笑う龍驤。艦娘は皆、義理堅く、慈悲深く、仲間想いである。所属は違っていても、糧食を、弾薬を、燃料を分け合い、命を助け合い命を預けあった関係は今も昔も変わらない。

 

「……ありがとう…お陰でみんな助かった……」

 

「言いっこなしやね。うちらも何度も助けてもらってるし。お互い様っちゅう奴や。ほらほら、そんな顔せんと。うちらもみんなのとこ行くで」

 

 龍驤は提督の背中を押して、ゆっくり他の艦娘のところへ向かうよう提督を促した。自身は提督の半歩後ろで決して提督の顔を見ないように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんなすまんかった」

 

 提督は艦娘達に頭を下げた。指揮内容に対してではない。大口と悪姫を前に恐怖に震え、艦娘全員を無駄に死なせかけた事についてだ。偉そうに演説を垂れて、俺達と一緒に死んでくれと言ったことだ。

 

 場所は後方基地から本土よりに数十キロの海上。設定していた海域に撤退した艦娘は護衛艦に集合し、甲板上で提督に頭を下げられたのである。今頃は後方基地のある島は深海棲艦に占拠されているだろう。

 

「提督。あの悪意は人間には耐えられません。それにあの深海棲艦は提督を標的に悪意を放ってました。しっかりと立ち直って指揮をとってくれたではありませんか。ここに提督を責める艦娘()はおりません」

 

 鳳翔が艦娘を代表して提督に応えを返した。ほぼ全艦娘が頷いていた。一部、こいつ何言ってんだ?的な目で提督を見る艦娘もいた。摩耶とか摩耶だ。

 

 開戦初期から深海棲艦を近海から押し返していた時期に似たような事は何度も体験してきた歴戦揃いだ。装備も補給も練度もままならない中、命を張ってきたのだ。今更言われるまでもない事だ。

 

「そうよ!雷達の提督も初見であれを見てお漏らししたくらいだから気にする必要ないわよ!」

 

「なのです」

 

「知ってるのか!?雷電!?」

 

 艦娘の許しを得た事もあるが、未知だと思っていた深海棲艦の群れを束ねる個体が既知であったと、予想外の雷と電の軽い返しに思わずボケで突っ込む提督。

 

「レディにお漏らしの事を聞くなんて失礼しちゃうわ」

 

「そっちじゃない」

 

 暁にボケで返され素に戻った提督は素で突っ込み。

 

「私達がここに向かう直前、同じ個体と戦っていたんだ」

 

 Верныйが場を纏め状況を説明した。

 

 複数の提督が協力して組んだいくつかの連合艦隊は各戦域で巣の攻略を近海から遠海に広げていた。龍驤達もここに応援に来る前は連合艦隊に所属し、深海棲艦の巣を攻略する艦隊の露払いと予備の部隊として参加していた。

 

 粗方の深海棲艦を撃滅し、後は巣の最深部のみとなり、戦艦と正規空母を含む本命の艦隊が最終攻略に向かった。その艦隊が半日と持たず、瀕死の状態で帰還したのだ。大破多数であったが幸いなことに轟沈は出ず、羅針盤がなければ深海棲艦に追いつかれ死者が出ていただろう。

 

「で、雷の提督が睨まれてお漏らししたって訳」

 

 雷がケラケラ笑いながら補足した。生きていたから笑えるのだろう。深海棲艦の分類・名付けが好きな提督が『戦艦棲姫』と名付け、提督達が攻略の協議をしている最中に、援軍要請が入り龍驤達が駆けつけたという訳である。。

 

「あんなのが他にもいるのかよ」

 

 艦娘達は強くなっている。深海棲艦が強くならない道理はない。

 

「攻略方法はあるのか?」

 

「あるっちゃーあるんやけどねぇ……」

 

 提督の質問に龍驤が歯切れ悪く答えた。

 

「徹甲弾に弱いっちゅう事は分かったんやけど、結果を待たんとこっちに来たわけで……」

 

 戦艦棲姫からの撤退時に、戦艦の一人が砲撃した徹甲弾が偶然戦艦棲姫をかすめた結果、追撃が緩んだ。その隙に全軍撤退が出来た。

 

「おっさん!」

 

「少ないが二発あるな」

 

「マジ少ねぇな!」

 

 提督は徹甲弾を使用する戦艦を旗下に置いていない為、当然基地には保管がない。戦艦を旗下に持つおっさんに確認するとやはり当然持っていた。ただ、徹甲弾は元々弾数が少なく、明らかに必要と思われる戦闘以外の持ち込みは最小限に留まっている。

 

「安心しい。初風達が飛び回って援軍頼んどる。急いで駆けつけたから少ないけど資源もちぃっと持ってきた。ここを抜かれたら本土まであっちゅう間や。うちらも全力で頑張ったる」

 

戦艦棲姫(あれ)を倒すのは前提条件だぞ」

 

 巣を出てきた以上、群れを束ねる個体を倒さない限り本土に大集団が向かう。倒して逃散するか、暴走するかは現時点でも博打である。

 

「キミがすることは出来るだけ時間を稼いで生き残ることやね。最悪うちらが盾になる。記憶はなくなるけど、うちらは復活可能なんや。でもキミらか死んだら、うちらは戦う意義がなくなんねん。絶対に死んだらあかん」

 

 本来の提督の旗下を離れ、現在龍驤達は一時的に提督の旗下に入っている。つまり龍驤達も、天龍のように提督を生かすため自分の身を犠牲にすることはいとわないだろう。

 

 提督はため息をついた。どう返事すればいいか分からなかったからだ。全員で生き延びると思いは強いがその為にどうすればいいかわからない。

 

 遠征隊が回収していた資源は、取り尽くしたのか妖精さんの案内でも近場にはもう見つからない。あるのは龍驤達が持ってきた分と、おっさんが島を撤退する時に回収した分のみ。

 

 護衛艦に積み込んだドックからはおもったより早く妖精さんが消え、艦娘の治療は今後不可能だった。

 

 戦艦棲姫を倒せるかもしれない徹甲弾は僅かに二発。しかも効果の程は不明。

 

「いい話ねぇなぁ」

 

 生き残る作戦が浮かばず、悲観的なった提督の呟き。

 

「うちらが来たやん」

 

「失礼しちゃうわ」

 

 言葉とは裏腹に艦娘達は提督の呟きに怒ってはいない。信頼し敬愛する提督たち人間がいかに弱い人間であるか、長い付き合いで熟知していた。そしてその提督がもし強い人間であったならば、艦娘達が支え助ける必要はなくなる。艦娘達は戦場以外でも、そして提督たちの心の助けとなりたいのである。

 

「そうだな。失言だった」

 

「露払いはうちらにまかせてや」

 

 龍驤が笑いながら、気にしてないアピール。提督は感謝しつつ、今後の戦闘の事を考えることにした。

 

「鳳翔。燃料と弾薬はどれくらい残ってる?」

 

「すみません。全員の全力出撃には足りていません……」

 

 いきなり出鼻を挫かれた。しかし元々資源は足りていないのである。この帝都は問題とは言えない。

 

「おっさん、富士達戦艦はいけるか?」

 

「先程の撤退戦で砲身が焼きついて壊れた。工廠がない以上修理は出来ん。予備は無い。お前も大型の砲塔は持ってないだろう」

 

 後方基地での提督旗下の艦娘は軽巡洋艦の天龍が一番の重量艦だった。大型の砲塔などある訳がない。

 

「信濃は?」

 

「空母としては運用は無理だ。数が足りん上に艦載機の妖精が鳳翔になついて戻ってこん。一旦本土に戻らんと使いモンにならん。騙し騙し使っていた修理機は今日完全に壊れた」

 

 鳳翔が信濃から一時借り受けた艦載機は機種が違うため最初はお互い戸惑っていたが、今は妖精さんも鳳翔によくなついている。信濃は廃棄して溜め込んでいた艦載機の残骸から妖精さんが使えるものを直し使っていたが元が元だ。無理な機動と艦娘の盾としての運用で完全に使用不可能になっていた。

 

「伊吹は?」

 

「中破だ。ドックはもう使えん。後ろから牽制程度はできよう。吹雪型は初雪の艤装が焼き付いた。海の上には立てん。浦波は儂らが負けた時の連絡要員だ。磯波は儂の側から離さん」

 

 どんだけ遠征回したんだよ、と思いつつ彼女達の献身で戦うことが出来たのだ。どれほど感謝してもし足りない。

 

 駆逐艦の艤装は特型と睦月型の違いで、艤装を融通しようにも規格の違いで改修に一日かかる。しかも工廠がない現状では無理だった。

 

 提督がうーむと頭を悩ませていると、治療を終えた天龍が戻ってきた。ドックの妖精さんが消えた為、完全とは言えず艤装の一部は壊れたままであったが、小破以下に収まっているようであった。

 

「バカ天龍。大丈夫か?」

 

「誰に言ってんだよ。バカはおめぇだっつーの。びびりやがって」

 

 照れ隠しで天龍が提督に悪態をついた。そんな天龍に妖精さんが駆け寄った。

 

「テンリュー」

 

「悪ぃ悪ぃ。心配かけたか。ちょっとだけ無茶しちまったな」

 

 妖精さんは定位置となった天龍の頭まで移動して天龍に問題がないか調べている。天龍の体に問題はない。厨二回路がショートしているだけだ。

 

「あっ!天龍!元気になってよかったわ。沢山持ってきたのが無駄になっちゃうところだったわ」

 

 目当ての天龍が治療中だった事もあり、他の艦娘と話をしていた雷達がめざとく天龍を見つけた。何やら天龍に用がある様子だった。

 

「ん?なんの話だ?」

 

「えい」

 

「いててててて。何しやがる!」

 

「鬼、なのです」

 

「なのですじゃねーよ!鬼じゃねーし!角ねーし!」

 

「あ!ほんとに角がないわよ。折れてるみたい」

 

「角じゃねーって言ってんだろうが!これは、で!ん!た!ん!」

 

「まぁ折角だし。えい!」

 

「全然上手いこと言えてねぇからな!いて!響!豆を配んな!」

 

Урааааа!(ウラーー!)

 

豆投撃戦(まめなげきせん)、開始するぴょん!」

 

「あっ、思わず手が。鬼は外にゃ」

 

「よーし。いっちょ可愛がってやるか!」

 

「ボクも、手加減しないよ」

 

「いてぇつってんだろうが!」

 

「目標は……加賀!……はやめて。……摩耶!……もやめて。ぇえ、天龍だクマ!……天龍、すまんクマ。」

 

「うちもうちも!響、早く豆よこしーな」

 

「テンリュウーイジメルナー」

 

「あの、皆さん程々に……えいっ。ふふふ」

 

鳳翔(ブルータス)!お前もか!」

 

「私の計算通りだったわ。この豆は連撃仕様ね」

 

「痛い。豆? そう、節分の……って私に当てた子は誰?」

 

「!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 提督とおっさんは騒ぎ出した艦娘に巻込まれないよう少し距離を置いていた。炒り豆とはいえ、艦娘が投擲する豆は人間には少々以上にダメージを貰う。

 

「騒がしいな。お前のところはこうだったか」

 

「おっさんの所の比叡も騒がしいと思うけど?」

 

「あれは騒がしいというより……いやなんでもない」

 

 おっさんは普段の比叡を思い出して苦笑いをする。

 

「長崎の金剛はいっつもいっつもバーニンバーニン言ってるし」

 

「金剛型で静かなのは榛名だけか」

 

「いやそうでもない。戦闘の時ずっと叫んでる。お残しは許しまへんえーって」

 

「そうだったか?少し違う気がするが」

 

 騒ぐ艦娘を見ながら昔を思い出す二人。思い出補正がかかり、酷かった思い出も美化されていることだろう。おっさんがふと気がついた。

 

「比叡がいないな」

 

 いつも騒がしい比叡が艦娘の中に混じっていなかった。普段なら天龍と一緒に豆を投げられていてもおかしくない。

 

「比叡はあそこ」

 

 提督が指をさす方向に比叡がいた。体育座りでどよんと落ち込んでいた。

 

「成る程」

 

 比叡が落ち込む必要はない。不調の上に重圧を押しのけ、乾坤一擲の一撃を戦艦棲姫に与えたのだ。結果的にダメージは通らなかっただけで、提督の想定した戦術を完璧にこなしていた。それでも一時的とは言え、旗下に入った提督と艦娘の仲間達に危険を及ばしてしまった。戦場で唯一の戦艦として責任を果たせなかった。そんなところだとおっさんは理解した。

 

 後方基地に押し寄せた深海棲艦が、人間不在に気がつき本土に向かうのは直ぐだ。確証がないとは言え、徹甲弾を使用できるのは比叡しかいない。艦娘の戦闘力は気力が充実している時に最大限発揮される。このままでは成功するものも成功しない。おっさんが比叡にかける言葉を探している時に現場が動いた。

 

 加賀を遠巻きにしながら天龍に豆をぶつけていた(いなづま)が比叡に豆をぶつけたのである

 

「なるべくなら、比叡さんにお豆を投げたくないのです……。し、仕方ないのです。え、えいっ!」

 

「あっ!比叡、みーつけたっ!元気ないわねー。そんなんじゃ駄目よぉ!」

 

 雷が追い打ちをかけたが、今日の暁型は一味違う。

 

「暁が比叡を元気にしてあげるわ。ほら。金剛からのお手紙よ。預かっていたのにあなた達ずっと移動してるから渡せなかったんだから。渡し忘れていたわけじゃないんだからっ」

 

 暁が指に挟んだ封筒。手紙を見つめる虚ろな比叡の瞳に光が戻った。

 

「金剛お姉様!」

 

 封筒から手紙を急いで取り出し目を通す比叡。次第に瞳がうるみ、目元から一筋の涙が溢れた。おっさんは慰める必要が無いことを知った。

 

「元気が出たようね!それじゃみんなも待ちくたびれてるから次の鬼は比叡よろしくね!」

 

 雷の後ろには豆を握った艦娘達が勢揃いしていた。大量の豆から開放された天龍の目は飢えた野獣の目をしていた。

 

「ひ、ひ、ひえーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっさん。全員が生き残るいい案ねぇの?」

 

 命のやり取りの最前線で笑い合う艦娘達を失いたくなかった。提督はおっさんに頼る。

 

「自力で出来ることはないな。援軍が早まればなんとでもなろうよ。あとは戦艦棲姫()が群れを掌握していることを祈るだけだな」

 

 おっさんと提督は立ち位置が違う。刺し違えて時間が稼げればいいおっさんは現状に満足していた。時間を稼ぎ、最大限間引くという当初の目的はほぼ達成している。

 

 がっくりする提督におっさんが希望的観測を述べる。

 

「楽観論だが、先程の一戦で戦艦棲姫()は力を見せつけた。もしかしたら群れを掌握してるかもしれん。だとするならば倒せば群れは逃散する」

 

「結局変わらずかぁ」

 

「だが心構えは違う。死にたくなかろう?」

 

「全員で生き残る。例え無理でも最後まであがいてやる」

 

 やることは何も変わらない。だが心の持ちようだ。数は少ないが頼もしい援軍が来た。戦艦棲姫に対抗する手段も出来た。誰一人として艦娘を死なすつもりはない。

 

 提督が死ぬ時。それは艦娘が全員死んだ後だ。艦娘とはそういう存在である。その時提督はどうするのか。未だに答えは出ない。だが今は新たな希望にすがり前を見るだけである。

 

 

 

 第一艦隊 龍驤、暁、電、雷、響、深雪

 

 第二艦隊 比叡、加賀、摩耶、鳥海、多摩、球磨

 

 第三艦隊 護衛艦、鳳翔、天龍、卯月、皐月、白雪

 

 

 

 

「提督。深海棲艦の集団を確認しました」

 

「みんな。最後の戦いだ。頼む。力を貸してくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 主力戦力の大半が戦闘不能に陥ったおっさんは提督の護衛艦に乗り込み、一時的に貸与してあった艦娘の指揮権を取り戻し、第一艦隊の指揮を執ることになった。提督は第二艦隊、第3艦隊の指揮を執る。

 

 戦艦比叡を伴う第二艦隊が決戦艦隊となるが、提督の水雷戦隊も隙を見て投入する。第一艦隊は比叡が戦艦棲姫にトドメを刺せるまでのお膳立てだ。

 

提督たちの目の前には一〇〇を優に超える深海棲艦の群れがいた。但しこれまでの戦いで深海棲艦も無傷ではなかった。さすがに大破はいないが、中破、小破は、あちらこちらに散見出来た。目標の戦艦棲姫は禍々しいオーラから前衛寄りの中段にいると思われた。

 

 深海棲艦がざわめいている。ここに来て提督に何も案は浮かばなかった。戦艦棲姫が集団を掌握し、比叡の徹甲弾が戦艦棲姫を貫いてくれることを祈るしかなかった。

 

『天龍』

 

「おうよ」

 

 激突前の天龍に提督から無線が入った。

 

『行って来い。死ぬな』

 

「任せな」

 

 直後天龍の後方から開戦を告げる航空部隊の声が鳴り響いた。

 

「さぁ仕切るで! 攻撃隊、発進!」

 

「やるときは、やるのです!」

 

「ここは譲れません」

 

 開幕爆撃。

 

 これまで天龍達水雷戦隊は空母を中心に攻撃をしてきた。それがここで活きた。

 

 艦載機の数を減らした鳳翔と加賀。龍驤の補給を受けても十全の力は発揮出来ない。しかし深海棲艦も無限にいるわけではない。甲板にダメージを受け、発艦が満足にいかない空母も多かった。

 

 天龍の目の前で、大爆発が起こった。

 

 火薬の炎が酸素を飲み込み紅蓮の炎を立ち上らせる。直撃した深海棲艦は木っ端微塵に吹き飛び、爆風が破片を撒き散らし周囲の深海棲艦をなぎ倒した。黒煙が黒々と立ち上り視界を遮る。

 

 航空部隊が有する艦爆、艦攻の攻撃はこれが最後だ。艦戦にすら爆雷を載せた空戦部隊の一度限りの大博打。あとは制空権の凌ぎ合いに全力を傾ける。天龍は仲間たちが制空権を得ることを信じて疑わない。

 

「いくぜ!」

 

「イクゼ!」

 

 頭に妖精さんを乗せた天龍が、未だに炎を上げ、黒煙で視界が遮られた海上に身を躍らせた。

 

「ボクの出番だね。司令官。見ててよね」

 

 続いて皐月が黒煙に消えた。

 

「うーちゃん、行きまっす。しれいかぁ~ん。頑張るぴょん」

 

 卯月が黒煙で見えないはずの深海棲艦に向けて砲撃を放ち、黒煙の向こうに消えた。

 

「暁達の出番ね?見てなさい!」

 

 暁型には天龍達水雷戦隊のような異常な特殊技能はない。それは戦歴の差によるものである。だが彼女たちも数々の戦いをくぐり抜いてきた猛者である。一点に特化した力はないが水雷戦隊として安定した能力を持っていた。

 

 突撃した天龍達の支援攻撃を行う彼女たちの役目は盾であった。天龍達が最前線でかき回し、それを支援しつつ深海棲艦が護衛艦に近づくのを防ぐのである。そしてその間に。

 

「主砲、斉射、始め!」

 

「ぶっ殺されてぇかぁ!」

 

「主砲よーく狙ってー…撃てーっ!!」

 

「左舷に敵艦だクマ!」

 

「砲雷撃戦、用意にゃ!」

 

 短期決戦。

 

 事ここに及んで作戦などは存在しなかった。戦艦棲姫は前衛に位置していない。ならばたまねぎの皮を剥くように深海棲艦を叩き潰し戦艦棲姫を表に出すしか無い。もし後退すれば負け。時間切れで弾薬切れでも負け。前線をかき回す水雷戦隊が脱落しても負け。徹甲弾に効果が無くても負け。そして、もし戦艦棲姫を倒せても、深海棲艦が暴走すれば負けである。弾薬を節約する理由は既にない。

 

 分が悪すぎた。狂人の行いである。だが提督たちが逃げれば本土まで深海棲艦がなだれ込み、尋常ではない被害が出る。これまで、提督たちが艦娘達が、長い時間命を張って守って来たものが灰燼に帰す。それだけは許されなかった。

 

 提督は過去に二人の艦娘を失っている。建造で復活はしたが、提督は旗下に求めなかった。今は別の提督の旗下にいる。意味は無いかもしれない。それでも、命を捨てて彼女たちが守ってきたものを提督が捨てるわけには行かなかった。

 

 命と誇り。提督の心は今この瞬間にも揺れ動いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第三艦隊は既に機能していない。天龍達についていけない白雪は第一艦隊に吸収されていた。

 

 開幕先制爆撃から先手を取り、航空戦隊は制空権の確保に全力を注いでいる。加賀、鳳翔、龍驤の三人はかつてない程の集中力で艦載機に指示を送っている。

 

 鳳翔から発艦した艦載機が龍驤の航空式鬼神召喚法陣龍驤大符に着艦する。僅かの時間で補給を済ませ即座に発艦。同じく龍驤の式神が加賀に着艦。補給を済ませ加賀が打ち出す。

 

 着艦までのほんの僅かな距離も惜しみ三人が相互に艦載機を融通し合う。これほどの連携が出来るのは艦娘と言えど一握りだ。長い戦歴と付き合い。三人だから出来る至芸の極致。

 

「ちょっち押され気味やねぇっと!!」

 

 第一艦隊の隙間を抜けてきた魚雷を避けながら龍驤が式神を射出する。

 

 開幕から確保した制空権は、深海棲艦の数の差に押され優勢まで持って行かれている。練度と技術と経験の差で埋めていた戦力差も徐々に縮まって来ていた。それでも。

 

「あきらめる訳には参りません!」

 

 護衛艦へ直撃コースを描いていた深海棲艦の艦爆を鳳翔の指揮する艦戦が撃墜した。

 

 

 

 

 

 

 

「にゃあぁ!!」

 

 砲撃直後の比叡を多摩が庇った。左腕は焼け一部が炭化していた。限りなく中破に近い小破。

 

 第一艦隊を抜けての攻撃が増えてきた。第二艦隊は比叡以外全員が被弾している。特に球磨は中破に達していた。身軽な多摩と球磨が、比叡の避けきれない攻撃をその身で受けていたのである。

 

「まだまだやれるクマ!」

 

 比叡は自身に与えられた重圧を跳ね除け、淡々と深海棲艦を狙撃。おっさん艦隊のお姉さま達(戦艦)を彷彿とさせる精度で深海棲艦を撃ち抜いていた。深海棲艦を一枚一枚。出番はかならず来る。仲間を信じて冷静に狙撃を続ける。

 

「お姉さま!比叡はやります!」

 

 摩耶と鳥海の砲身は焼き付く寸前だった。予備の砲塔と何度か取り替え、その度に海水で冷やしていた。砲身は歪み妖精さんの補正がなければ深海棲艦に当てることすら出来ない状態だ。

 

「そこね…計算通り、見つけたわ。敵艦攻隊発見!摩耶!」

 

 水面ギリギリを飛行している深海棲艦の艦攻隊が左舷から比叡を狙っていた。摩耶がその身を盾に体を割り込ませ機銃が火を吹く。

 

 艦攻隊は爆発炎上。そして摩耶はその炎に飲み込まれた。少し離れた海面に摩耶が顔を出し、水面に立ち上がる。綺麗な亜麻色の髪が一部焼け落ちていた。

 

「こんなになるまでこき使いやがって、クソが!」

 

 砲撃しながら放たれた言葉はどちらの提督に向けたものだったか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天龍はかつて無いほどの体のキレを感じていた。艤装が軽い。壊れたはずの電探が深海棲艦の位置を教えてくれる。砲撃が全て正確に着弾する。放たれた砲弾の弾道予測が全て正確に読み取れる。

 

 開戦時小破状態で出撃した天龍は新たなかすり傷すら負っていなかった。

 

 深海棲艦が面制圧の砲撃を放つ準備をしていた。これは避けきれない。被弾を覚悟した天龍だが、深海棲艦の群れに魚雷が炸裂し視界を遮った。卯月だと直感した。既にお互いがどこにいるか分かっていない。卯月が無事である以上皐月も無事だ。

 

 天龍は更に歩を進める。

 

 重巡洋艦の装甲の薄い部分を撃ち抜く。大破。

 

 駆逐艦を剣で切り裂く。轟沈。

 

 軽巡洋艦を至近距離で砲撃。轟沈。

 

 秒単位で深海棲艦の屍を生産する。

 

 そしてその先に。

 

「見えた!」

 

 天龍の目の前に戦艦が立ちふさがった。天龍は左右の手にもつ砲塔と残った魚雷全てを戦艦に向けて放った。同時に天龍の左舷と右舷からも魚雷のスクリューが放つ航跡が見えた。卯月と皐月だ。

 

「比叡!後は任せた!!」

 

 天龍達水雷戦隊に与えられた役目はここまでだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 比叡の視線の先で断末魔の悲鳴を上げる戦艦レ級が轟沈し水面に沈んでいくのが見えた。沈みゆく戦艦の後ろに戦艦棲姫の禍々しい姿が映る。

 

 天龍の無線の合図に合わせて徹甲弾を装填していた比叡。この一撃に全ての艦娘の想いが込められている。外す訳にはいかなかった。

 

「お姉さま!力を!私やります!」

 

 たった一文のみの金剛からの手紙。。

 

 ――自慢ノ妹ヲイツデモシンジテルネー

 

 比叡は一度轟沈している。金剛、榛名、霧島の三人とは艦娘として共有した記憶は少ない。あるのは戦艦として艦時代に活躍した時のものがベースとなっている。

 

 比叡を除く金剛型の三人は艦娘として顕現して以来一度も沈むこと無く長く苦楽を共にしてきた。姉妹としての記憶はあるのに、艦娘となってからの姉妹としての経験がない。それはコンプレックスとなり比叡が金剛型姉妹に会いに行けない理由の大きな一つとなっていた。そんな比叡を金剛は自慢だと言う。信じていると言う。

 

 艦娘として共有した記憶がない?それがどうした。私は比叡。金剛型二番艦、戦艦比叡だ!もう当たってと願いを込めて撃つことはしない。これは必中の砲弾だ。艦娘全員の想いを、提督の信頼を受けるに値する金剛型戦艦を代表する戦艦比叡の乾坤一擲の必中の砲弾だ!

 

「撃ちます!」

 

 同時に戦艦棲姫の大口(艤装)の砲塔が護衛艦に向く。比叡の視界の隅で三人の艦娘の小さな影が動くのが見えた。

 

 比叡と戦艦棲姫の砲身が同時に火を吹いた。音速に達していないにも関わらず双方の砲弾が衝撃波を撒き散らし海面は沸き立ち水しぶきをあげた。

 

 着弾は一瞬。比叡の徹甲弾は身を呈して庇った戦艦棲姫の艤装(大口)に直撃貫通。艤装(大口)は左半身に大穴を開け身の毛もよだつ叫び声を上げる。本体は衝撃で吹き飛び艤装(大口)と離れた位置で膝をついていた。左腕が消失していた。

 

 艤装(大口)の放った砲撃は天龍達水雷戦隊に邪魔をされ僅かに進路を変えた。直撃こそ免れたが、船体を僅かにかすめただけの砲弾は、明石自慢の強化装甲を大きく刳り、護衛艦は右に大きく傾いた。護衛艦の中にいる船員は殆ど(・・)が艦娘だ。問題ない。

 

「気合い!!入れて!!行きます!!!」

 

 比叡の瞳には戦艦棲姫しか映っていない。比叡に与えられた指示(オーダー)はたった一つ。

 

 比叡の徹甲弾が衝撃波を撒き散らしながら戦艦棲姫に飛んだ。僅かに遅れて艤装(大口)が砲身を比叡に向ける。天龍達は位置的に間に合わない。

 

「おいしいところはうちが頂くでぇ!」

 

 上空で制空権争いをしていた龍驤の艦戦が戦艦棲姫に突撃を敢行。艦戦が次々に艤装(大口)に特攻していく。口々に妖精さん達が何か言っているが比叡の位置からは何も聞こえない。爆装など一切ない艦戦は艤装(大口)にダメージをまともに与えられない。しかし気を逸らす事には成功した。

 

 艤装(大口)の砲撃は前方にいた深海棲艦数隻を薙ぎ払って水平線の彼方に消える。そして比叡の放った徹甲弾は戦艦棲姫本体に見事直撃した。

 

 小さな体に徹甲弾を浴びた戦艦棲姫は後方に吹き飛び、密集してた深海棲艦の小集団を巻き込んで止まった。

 

 静寂が戦場を包んだ。深海棲艦も艦娘も攻撃する手が止まり戦艦棲姫の動向に目が行く。誰かがごくりと唾を飲んだ。潮騒と風の音だけが耳に届く。

 

 深海棲艦の小集団の中からむくりと起き出す者がいた。戦艦棲姫だ。比叡の狙撃した徹甲弾は正確に戦艦棲姫の腹部を貫き大穴を開けていた。

 

 震えながら立ち上がろうとする戦艦棲姫。体中血だらけだったが巻き込んだ深海棲艦のものだろう。しかし目は虚ろでもう長くないと予感させた。

 

「よう」

 

 天龍が剣を肩に構え深海棲艦の前にいた。戦艦棲姫の虚ろな瞳は天龍を見ていなかった。どこか遠く海。暖かな日差しと静かな海。きっとそんなところだろう。

 

「いつか…静かな…そんな…海で…私も…」

 

「そうか……じゃあな」

 

 天龍の剣が戦艦棲姫の首を薙ぐ。血しぶき一つ立てず空高くあがったそれは深海棲艦の大集団の中心にゆっくりと落ちていった。戦艦棲姫の艤装と本体はゆっくりと倒れ、海に沈んでいきやがて結晶と変わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦艦棲姫の首が落ちた地点を中心として深海棲艦のざわめきが同心円を描き広がっていく。蜜蜂が羽根を震わせ敵を威嚇するように、中心から外側へ何度も何度も。深海棲艦がいかにして情報の伝達を行っているかはわからない。だがいまこの瞬間群れのボスが倒された事は全軍に伝わっているだろう。

 

『全員よくやってくれた。ありがとう』

 

 無線からオープンチャンネルで提督の声が聞こえた。艦娘全員が自らに与えられた役目をこなし、結果戦艦棲姫は倒された。艦娘達は全力を出し切り、疲れた様子は見えるが、全員やりきった顔をしていた。

 

 燃料も弾薬も残りわずか。大破し護衛艦に下がった球磨を筆頭に殆どの艦娘が中破と小破判定を受けている。最前線に居続けた皐月と卯月は小破。天龍に至っては開戦から無傷だ。

 

 深海棲艦は散らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督。聞こえるか?」

 

 天龍が無線を護衛艦に繋いだ。

 

「今まで楽しかったな。まぁそのなんだ。感謝してる。ありがとう」

 

 天龍が深海棲艦の集団を見据えながら無線で提督に話をする。

 

お前(提督)が生きてる限り俺達は死なねぇんだ。もし、もしもだぞ。もし次の俺に会ったら、俺の事を話してやってくれ。『大天龍』なんてもん、本当はいねぇんだってな」

 

 天龍は返事が聞こえる前に無線を切った。真名を開放しても湧き上がる力など何も無かった。轟沈しなかったのは提督が持たせてくれた応急修理要員妖精さんのお陰だった。

 

 本当は知っていた。認めるのに九年かかっただけだ。次の天龍(オレ)は二、三年で認めてくれねぇかな。無理だろうなと思いつつ、天龍は前を見据える。

 

 天龍の顔は晴れやかだ。

 

「さぁ行くか」

 

「テンリュードコニイクノ?」

 

 戦闘中も天龍を心配し、妖精さんが頭に張り付いていた。お陰で他の妖精さんが張り切り、普段より命中精度と威力、回避が上がっていた。

 

「色々世話になったな。ちょっくらあいつら倒してくわ」

 

「オオイヨ?」

 

 妖精さんは前ではなく空を見つめていた。

 

「知ってるか?天龍様に数なんて関係ねぇんだ。でもよ。オレが倒れたらさっさと仲間の元にいけよ」

 

「アイツラタオセバイイノ?」

 

「そうだけどよ。いやだから俺が倒れたらって、おい!」

 

 いつも素直に話を聞く妖精さんが天龍の声に耳を傾けない。妖精さんは空を見上げたまま、天龍の頭の上で立ち上がった。

 

「ウン。ミンナイクヨ」

 

 妖精さんの全身が輝いた。天龍が直視していれば光に目を焼かれ一時的とは言え視力を奪われていただろう。それでも頭上の光が海面に反射し天龍の視界を奪う。

 

 妖精さんが発する光が空の一点に伸びた。それは水平線の遥か彼方からでも観測できる程の輝きを持っていた。

 

「おい!何が起こってる!」

 

 天龍は閉じた瞼を通しても白く広がる視界で異常事態が発生していることだけは理解出来た。熱もなくただただ明るい光。

 

 妖精さんから立ち登った光は緩やかに光度を失い、光が伸びた先の一点から、肉眼でもはっきりと見える輝きを持ったまま六方向に分裂した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『提督。ずっとお慕いしていました。それはこれからも変わりません』

 

 護衛艦の艦橋の無線が愛を叫ぶ鳳翔の声を流していた。オープンチャンネルなので全艦娘にも聞こえているだろう。

 

『この想いは私だけのものです。次の私には渡しません。想いを言葉にするって……意外と恥ずかしくないものだったんですね……』

 

「鳳翔……」

 

『もう~鳳翔。ボクも司令官とお話したいのにぃ』

 

『そうだぴょん。後が支えてるぴょん』

 

 いつもなら空気を読む二人が無線に割って入った。もう時間がないのだろう。深海棲艦の暴走はもう目の前だった。

 

 暁型の四人も無線に割り込んだ。

 

『覚えてないけど私たちは一度沈んでるからね』

 

『そうそう。一度も二度も変わらないわ。気にしなくていいのよ』

 

『でも本当は少し怖いのです』

 

『電。それは言いっこなしだ。提督ありがとう。楽しかったよ』

 

 龍驤が無線に割って入った。

 

『さよならだけが人生やないで。次もきっといい出会いになる。絶対や。断言したるわ』

 

『私達で時間は稼ぐから、私達の提督に伝言お願いね。次の私達も是非宜しくって。一人前のレディだったってちゃんと伝えてよね』

 

『うーちゃんも!うーちゃんも!』

 

『司令官、ボクも絶対だよ!』

 

 おっさん旗下の艦娘もおっさんに別れを告げていた。艦橋にいる富士達は直接。海上にいる比叡達は無線で、それぞれ思い浮かぶ言葉、そしておっさんに生きて欲しいと、言葉を届けていた。

 

「ずっと思っていた事がある。これまでに沈めてしまった艦娘達に詫びる方法は、お前たちと一緒に死ぬことだと。お前たちは優秀で、慈悲深く……そして残酷だ…それすらも許してくれんのか……」

 

 彼女達は提督たちへ挨拶が終われば天龍のように飛び出すつもりだ。僅かばかりの弾薬と燃料で少しでも時間を稼ぐ為に。

 

 護衛艦に残った燃料はわずかだ。それでも、僅かでも、可能性があるなら逃げて生き延びてくれと彼女たちは言う。もしかしたら深海棲艦が追撃を諦めるかもしれない。見失うかもしれない。援軍の到着が予想以上に早くて合流出来るかもしれない、と。

 

 彼女達の献身にどう応えれば良いのか。提督は最後まで楽しげな声の彼女達に返す言葉が出てこない。出来ることは泣かない事。彼女たちの最後の望み、何が何でも生き延びてやる事。これまでの感謝の気持ちを伝える事。それだけだった。

 

「みんな……聞いてくれ…」

 

 提督が最初の言葉を選んでいる時にそれは起こった。艦橋の窓から異常に明るい光が差し込んだのだ。

 

 「なんだ!?」

 

 光を手で遮る提督。やがて光は収まったが順応できない目は艦橋内を暗く映す。その艦橋でまた異常が起こっていた。

 

 明石が妖精さん仕様に改装した各種メーターはデジタルからアナログに変更されている。そのメータがくるくると全て回っていた。

 

「はち。なんだこれは!?」

 

「はちにもわかりません」

 

 艦橋内で状況を理解している者は誰もいなかった。妖精さん達を除いて。

 

「フェアリーシステムリンクカイシシマース」

「ア、ツナガッタ」

「ホントダ。ツナガッタヨ」

「ハロハロー」

「イッヒフロイエミッヒズィーケネンツーレルネン?」

「ボンジョールノー!!」

「ナニイッテルカワッカリマッセーン」

 

妖精さんの目(フェアリーシステム)?」

 

 妖精さん達が楽しげに誰かと話をしていた。横にいる妖精さん同士ではない。ここにはいない誰かと話をしているように聞こえる。

 

 提督では妖精さんの言葉を完全に理解できない。提督ははちに頼み妖精さんに説明するよう頼んだ。

 

「ヨクワカラナイ。ホシミタイナノガクルクルマワッテルノ」

「ソウソウ。ホシミタイナノガホシノマワリヲクルクルクルクル」

「イチニーサンシーゴーロクーナナー」

「ナナツノホシガクルクルクルクル」

 

「星?」

 

 提督は窓に駆け寄り外を確認する。光は既に収まり、代わりに上空、空の一点から六方向に伸びる光の筋がゆっくりと消えていくのが見えた。

 

「星?……衛星か!」

 

「ホシトホシガツナガッタノ」

「ソンデソンデホシトワタシタチモツナガッタノ」

「ミエル!ミエルゾ!」

「ワーキレイナハナ-」

「ドウクツハッケ-ン。オラワクワクスンゾ」

「ミタコトナイサカナダネ」

「ネー」

「オ。ヤマトトムサシダ」

「テー」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!何が起こっている!?」

 

 天龍は混乱していた。砲身が天龍の意思を無視して砲撃を始めたのである。

 

「ウテー」

「ウテー」

 

「おい!勝手に撃つな!」

 

 砲撃は的確に深海棲艦に命中する。しかし焼け石に水だ。今更数隻の深海棲艦を倒そうとその前に弾が尽きる。

 

「ダイジョブダイジョブー」

「モウスグクルカラー」

 

「来るって何がだよ!?」

 

 大爆発が起きた。天龍は爆風に吹き飛ばされ、海面を滑っていく。

 

「今度は何だよ!?」

 

 体勢を立て直しつつ海面を滑る天龍はそれを見た。水平線の彼方から深海棲艦の集団に放物線を描いて着弾する砲弾の数々を。見覚えがあった。あれ程の威力の砲撃は、天龍は二人しか知らない。

 

 次々と正確に着弾し、深海棲艦を薙ぎ払う砲弾。

 

「大和!武蔵か!」

 

 それは水平線の遥か彼方。有効射程距離の限界点を超えた先から放たれた超超長距離からの、艦娘が限界を超えても決して辿り着けない超精密艦砲射撃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『よう。生きてるか?』

 

 艦橋ではまたしてもあり得ない現象が起きていた。深海棲艦の棲息する海域では無線は距離を超えてつながらない。短距離でノイズ混じりに聞こえる程度だ。

 

「なんで繋がる!?霧の影響は?」

 

 顔見知りの提督からの無線が繋がった。

 

『そんな事は知らん。急に妖精さんが騒ぎ出してな。繋がる繋がるって騒ぐから繋げた。それだけだ。急いでそっち向かってるがまだ時間がかかる。もうしばらく耐えてくれ』

 

「目の前で大和っぽい艦砲射撃が深海棲艦を薙ぎ払っているんだが!?」

 

『大和と武蔵がいきなり主砲をぶっ放した。本人も訳がわかってない。妖精さんが何とかかんとか言ってるが訳がわからん。二人は今も撃ち続けているぞ』

 

 もう誰も理解が及ばない。分かるのは目の前の深海棲艦の群れが秒単位で数を減らし続けていることだけだった。

 

 そして同様の異常事態は世界各地で起こっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――北アメリカ大陸、アメリカ合衆国、東海岸沖、同時刻

 

 星条旗を模した艤装を身に纏い、駆逐艦と思われる少女が夜間戦闘を行っていた。既に掃討戦に入り深海棲艦の数は無傷の戦艦一隻となっていた。

 

「私じゃアレは無理ねっ」

 

 重艦への支援射撃をしつつ駆逐艦少女が呟いた。

 

「イケルイケル」

「ウテー」

「チーッス」

 

「え?妖精さん?どうしたの!?」

 

 駆逐艦少女の砲弾が深海棲艦(戦艦)の装甲の薄い部分をピンポイントで打ち抜き轟沈させた。

 

 

 

 

 

 

 

 ――グレートブリテン及び北アイルランド連合王国、北海上、同時刻

 

 明け方まで数時間。潜水艦の艦娘四人は北海の哨戒任務についていた。制圧まであと少しの所の海域だ。気を抜いたつもりはなかったが、いつの間にか哨戒網をすり抜けた深海棲艦の水雷戦隊、二艦隊による爆雷攻撃を受けていた。

 

 複数の深海棲艦による攻撃で仲間の二人は中破、無事なのは二人だけだった。潜水艦艦娘は死を予感した。

 

「ミテカラカイヒ、ヨユーデス」

「ケイサンマニアワナイ。ネテルヤンキーオコシテサシアゲロ」

「ヤンキーカムホーム」

「オ。シンシュノシンカイギョ」

 

 視界が開け、爆雷の攻撃に当たらなくなった。

 

「え?何?妖精さん?」

 

「ギョライゼンブハッシャシチャウ?」

 

 

 

 

 

 

 ――ドイツ連邦共和国、ヴァンガーランド、工廠内、同時刻

 

 戦う事は苦手だが、兵装の開発が得意な艦娘が工廠にこもり妖精さんと一緒に実験を繰り返していた。艦娘の目の前で疲れたのか、寝ている妖精さんがいる。妖精さんが本当に寝ているのかは分からない。寝ている振りをしているだけかもしれない。愛らしい妖精さんの寝姿に心が癒やされ、ふふふと笑った。

 

 妖精さん達がむくりと起き上がった。

 

「ヘイヘイ!マカセナー!」

「ザヒョウチョイミギ」

「キカクガチガウジャーン」

「2ビョゴニリダツスイショウ」

 

「妖精さん!?」

 

「"コンニチハ"」

 

 

 

 

 

 

 ――イタリア共和国、シチリア島、宿舎内、同時刻

 

「おっとMATTAはなしだぜ」

 

 早朝の出撃前。早くに起きて趣味のSHOGIを妖精さんと一局打つ戦艦の艦娘がいた。SHOGIは好きだが、この趣味を理解してくれる艦娘は他におらず、唯一付き合ってくれる妖精さんと、出撃前に打つのがささやかな楽しみになっていた。

 

「イマケイサンチュウ。チョットマッテネ」

 

「だからMATTAは無しだってば」

 

 艦娘と妖精さんの戦績は一〇勝〇敗。艦娘の全勝だ。だからいつも艦娘は気分良く出撃出来る。

 

「オウエンヲヨブ。チョットマッテ」

 

「しつこいな。MATTAは駄目だって」

 

「ウルサイ」

 

 妖精さんがITTEを差した。それは艦娘にも分かる簡単なNITEZASHI。TSUMIだ。

 

「えっ?えっ?」

 

「カンリョー。オ?。"HELLO"」

 

 

 

 

 

 

 ――ロシア連邦、カラ海沖、同時刻

 

「今日も平和だな」

 

 重巡洋艦の艦娘は凪いだ水面に立ち一人呟いた。先日の激しい戦闘を経てカラ海に平和が訪れていた。しかし近日中に沖合の海域を攻略する話が立ち上がっている。平和な日も残り僅かだろう。

 

 艦娘は沖合に深海棲艦に見立てたブイに狙いを定める。一度轟沈してしまった艦娘は記憶と練度を失った。日々成長するため練習は欠かせない。この距離はまだ一度も当たったことはないが、続けることが大事であった。

 

 射出された砲弾はブイを狙い違わずブチ抜き、爆散させた。

 

「え?なんで?」

 

 砲塔に潜む妖精さんが親指を立てていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「巣に残った残党を殲滅するぞ」

 

 戦闘が終わり二日が経過した。艦娘擁する提督たちが各海域から援軍が今も続々と集まって来ている。

 

 提督とおっさん旗下の艦娘は応援にかけつけた提督たちの護衛艦に敷設しているドックで傷を癒やし補給も万全に済ませてあった。

 

 あの日、大和と武蔵の超超長距離からの艦砲射撃。そして満身創痍の艦娘達の正確無比の攻撃。混乱に陥った深海棲艦の群れは暴走を起こすことすら出来ず、蜘蛛の子を散らすように逃散し始めた。

 

 追撃をかけたい所だが、燃料も弾薬も底をついた艦娘達は逃げる深海棲艦達を見逃す事しかできなかった。

 

 動くことの出来ない艦娘を護衛艦に収容し、援軍の到着を待つだけの時間が過ぎた。その後援軍に駆けつけた提督達に礼を言い、情報の交換と艦娘の治療を全力で行った。

 

 逃散した深海棲艦は巣に戻るか海を彷徨い離散集合を繰り返して陸地を目指すかだろう。今となっては大きな脅威となりえない。援軍に集まった提督たちはついでとばかりに弱体化した巣の攻略を進めていた。

 

「お前。あの妖精さんは反則だろうよ」

 

 援軍の提督が笑いながら提督に言った。たった一人の妖精さんが負け戦を勝ち戦に変えてしまったのだ。戦場に立つ者ならば誰もが手元に置いておきたいだろう。だが提督たちは誰もそれを口にしない。もともとそれを口にするような者は提督になる資質はない。

 

「お前。また死にかけたな。預けてる艦娘が怖いぞ。どうするんだ?」

 

 他人事なので援軍の提督は楽しげだった。実際声に出して笑っていた。

 

「この事は内緒で」

 

「分かってる。知られたら暴走するな。明日は我が身だ」

 

 お互い艦娘の頼もしさ、優しさ、怖さをよく理解している。艦娘を他の提督に預ける機会は早々ないが、状況によっては今回の提督のようにあるのだ。

 

 冷や汗をかく提督。とりあえずは大丈夫だろう。

 

「あの……とっくに知られています。妖精さんの目(フェアリーシステム)で…こっちに向かって来てるみたいで…」

 

 鳳翔が提督にとって驚愕の事実を告げた。

 

 全ての艤装に妖精さんは潜んでいる。つまり妖精さんの目(フェアリーシステム)を通して知ろうと思えば全ての艦娘に提督の状況は筒抜けだった。

 

「あっ!」

 

「まぁがんばれ。骨は拾ってやる」

 

 一気に笑えない状況に陥った提督を慰める援軍の提督。

 

「それはそれとして、お前の護衛艦どうするんだ?海軍では修理出来んし、そもそも修理する気はないんじゃないか?明石しか直せんぞ」

 

「もうどうでもいいわ!」

 

 提督の叫び声が海上に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 その日、海域を薄く覆っていた霧は晴れ、青い海に散らばる雲の隙間から優しい太陽の光が降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 三ヶ月後

 

 後方基地の施設は提督たちの資材提供もありあっさりと元に戻った。工事にあたり海軍の手は一切入っていない。つまり予算も下りなかった。

 

 施設復旧にあたり、入渠ドックと資材精製装置を見た明石が悲鳴を上げた。ぺたんと腰が落ち、アヒル座りで放心することきっかり一分。復活した明石は腕まくりの後に好戦的な笑顔を浮かべ、妖精さん達と一緒にぶーぶーいいつつ作業を始めた。

 

 いくつかの作業が終わって本拠に戻る際、見送りに集まった皆の前で

 

「修理とか工作機械の手入れとかする暇がまったくありませんでした」

 

 と笑顔で言っていたので楽しかったのだろう。

 

 提督は一ヶ月の謹慎処分を受けた。深海棲艦の侵攻にあたり戦果がゼロだったからだ。提督は戦果をおっさんと応援に駆けつけてくれた提督たちに全て譲った。秘書さんの報告で久しぶりの戦果に期待していた海軍は激怒し減給と降格、提督に付随する様々な特権を一時剥奪した。しかし後方基地にいる限りそんな特権は何の意味も持たないので生活は今までと変わらない。派閥人事で揉めているのか、秘書さんと料理人に変わる監視役が決まらず環境は今までより上がったといっても良い。

 

 秘書さんは、海軍本部への報告でなにやら相当に盛った報告をしたらしく降格の上、どこか遠い地へ飛ばされた。上司無し、部下なし、同僚なし、周囲50kmに人無し。報告義務のない天気の記録をし続ける夢のような生活を送っている。

 

 おっさんは相も変わらず巣の攻略に忙しい……と思いきや護衛艦の手配が間に合わず本土で待機の日々を送っている。なにやら将軍と名乗る男が叫んでいるが馬耳東風とばかりにボケ老人の振りでおっさんは忙しい。その横では磯波が磯磯と、あ、違った急急と楽しそうにおっさんの世話をしている。もう少ししたらまた忙しく動き回ることだろう。

 

 謹慎処分中の提督は釣り竿を片手に日がな一日釣り三昧の日々を送っている。釣れた魚が食卓を彩るので特に誰からも文句は出ていない。昼時になると鳳翔が弁当を片手に提督に届けている。

 

 艦娘達の生活は大きく変わったところと小さく変わった所がある。

 

 大きな変化は、親しい提督に預けていた艦娘が戻ってきた事。戦闘の終わった戦場へ暴走気味に突貫してきたが、提督が無事であることを確認すると我を取り戻し号泣。以後戻ること無く提督の旗下に収まった。彼女達は明石が宿舎を完成させるまで狭いプレハブの部屋で折り重なるように寝ていた。一部の施設も艦娘が使いやすいように改造され生活の質は確実に上がっている。

 

 小さな変化は鳳翔が花をあしらったイヤリングをするようになったことだ。和服なので若干浮いているが、一部の艦娘も同一のイヤリングをしているので、悪目立ちすることはない。鳳翔は時々ぼーっとしてたり急に赤くなって顔を隠す仕草をしてたり提督の食事だけに何やら精の付きそうな一品が追加してたりする。

 

 そして妖精さんは。

 

「テンリュー。アッチー」

 

「おう。前線で大破が増えてるらしいから鋼材があると嬉しいかな」

 

 妖精さんは空を見上げる。

 

 艦娘が増え、資源の消費が増えたが妖精さんが遠征に付き合ってくれることで簡単に解決した。逆に貯まり過ぎて工廠から溢れる勢いなので前線の提督に定期的に供給している。

 

 妖精さんの依代が判明した。常識はずれのまさかの軌道衛星。妖精さんは縁を辿って移動する。つまり地球の表面上であればこの妖精さんはどこでも移動可能だ。最初に見つけた時悩んでいたのがバカバカしいと思える。天龍は笑いたくなった。

 

 妖精さんにしか見えない世界。地球を周回する七つの軌道衛星。軌道衛星から見えない地下も、海の中もそこに艤装や様々な物に憑いた妖精さんがいるかぎり妖精さんの目(フェアリーシステム)を通して全てを見通してしまう。妖精さんの目(フェアリーシステム)は艦娘支援の為にあると言ってもいい。妖精さんの目(フェアリーシステム)を介した艦娘への全方位支援は艤装に憑いた妖精さん同士で情報を交換しあい、処理しきれない情報は世界の裏側で遊んでいる妖精さんが処理。一切の遅滞なしにリアルタイムで戦場のあらゆる情報を支配する。そして妖精さんの目(フェアリーシステム)の支援を受けた艦娘に一切の死角はなくなる。その気になれば砲弾を砲弾で弾くことも可能だろう。

 

「ジャーコッチー」

 

 無邪気に笑う眼の前の妖精さんが妖精さんの目(フェアリーシステム)の中核だ。この妖精さんの前ではあらゆる秘密はなくなる。後ろめたい心を持つ者程妖精さんの存在は恐怖となる。だが提督や艦娘にとってはただの妖精さんである。他に無数にいる妖精さんとなんら変わらない。全ての妖精さんは等しく頼もしい相棒(パートナー)なのだから。

 

 提督達と艦娘達はこぞって口を塞ぎ、妖精さんの情報は一切漏れていない。妖精さんは遠征に出撃する艦娘に張り付き、日々資源の獲得に協力している。

 

 妖精さんに打算はない。在るべくして在る存在だ。もし人間のように邪心を持って近づけばたちどころに妖精さんの姿を見ることはできなくなるだろう。

 

 妖精さんがいなければ艦娘は深海棲艦と戦うことが出来ないひ弱な存在となってしまう。戦場以外でも妖精さん達は八面六臂の大活躍だ。愛らしい姿に癒され、戦場では助けられ、それ以外にも沢山、沢山。

 

 だから艦娘は、提督は皆こう思うのだ。この愛しくも頼もしい相棒達(パートナー)に沢山の感謝の気持ちを込めて。

 

 

 

 

      最終話 全ての君たちにありがとうの言葉を(Thank you for all the fairies)(終)

 

 

 

 

 提督旗下の艦娘が増えたことにより海軍がなにやら策謀を企んでいるが、それはまた別のお話。

 

 これにて天龍が妖精さんを拾った事に端を発する一連の騒動は一件落着。皆様のまたのご来場、心よりお待ちいたしております。

 

 

 

 

 

 

                原作:艦隊これくしょん

 

 

                    (完)

 

 

 

 




あとがき。

読了ありがとうございました。
タグ回収。伏線も八割くらいは回収したはず。
あらすじも間違っていない……はず。
理解してもらえないと思うけどパズルみたいに話を組み立てていったんだよう(泣

最初わざと艦娘を一隻と数えてました。不快に思っていたなら申し訳ないと思うところですが、演出でしてたので最終話付近では一人と数えております。
他にもちっちぇな!と思うところでわざと表現している部分があると思います。こちらも不快に思われたなら申し訳ないと言うしかないです。


当初、他とは違う艦隊これくしょんを表現してみたいと思いました。というのも、同一艦が至る所にいるという形態に違和感を感じたからです。

たった一人の提督に、アメリカには及ばぬものの、当時の世界水準以上の力を有していた日本海軍に比肩する(海外艦を合わせるとそれ以上か)軍隊を預けることが出来るのか?
そんな提督が数十人、数百人といた場合、全体でどれほどの戦力となるのか?
それほどの戦力を投入しても倒せない深海棲艦とはどんだけー。

日本だけじゃなく世界中が同じ状況であった場合、人類に勝ち目はないのでは?

当時の日本とアメリカの物量差って一〇倍程度でしたっけ?
となると一〇人提督がいると、後方支援の緩さと運用の使い勝手のよさから戦力差を簡単にひっくりかえせるわけです。それほどの戦力をたった一人の提督に預ける?
クーデター余裕ですって感じ。

と考え、軍隊から提督を切り離し、艦娘もユニークな存在としました。

あとゲームをしながら羅針盤自由に操作出来たら楽勝だにゃーと思ったのが発端。

世界観を残しつつ、自分なりの表現を。
結果、色々と反省点が見つかり、艦隊これくしょんという世界をアンチしてるのかも?と思った瞬間に最終話が全く書けなくなった次第。
申し訳ない。
本作、ちゃんと艦隊これくしょんをリスペクトしてるよね?
いいか悪いかの判断も出来なくてほんとに参ったちゃんでした。二次創作って怖いわぁと思った次第。

感想ってほんと燃料です。みなさんも他の作品で気楽に感想書いてやってくださいね。きっと次の更新が早くなると思います。

ほんとに反省点だらけですが、これにて本作は終了。
あとは時間と文字数に縛られずにちょこっとエピローグを書いて伏線回収してほんとに終了と致します。某氏との約束ですからねw



最後に、よろしければ本作の至らなかった部分を教えていただけると幸いです。次回以降の糧にさせていただきます。


重ねて、読了ありがとうございました。




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