ひなたぼっこの研究者 作:たんぽぽ
「……試合、始まったわね」
「……そうですね」
目の前で繰り広げられるクィディッチの試合。その全貌は、誰にもわからない。
「この天気で選手達は大丈夫でしょうか。風邪とか引きませんよね?」
選手じゃなくても、私が風邪を引きそうだ。
「そろそろタイムアウトだろうな」
ザカリアスが言うんだから間違いないだろう。
「スーザン、行きますよ」
「え? どこに?」
「選手のところに」
・スーザンside
タイムアウトでグラウンドに下りてきている選手に向かって声を張り上げる。
「あの! タオル持って来ました!」
もともと人見知りのリズだ。たぶんこの天気の中で声を張り上げても相手には届かないだろう。
こちらに向かって両手を合わせているリズの代わりに、選手達に向かって叫ぶ。
「タオルには防水呪文が掛かってるので使えます! 手、凍えている人居ませんか!? リズが呪文であっためてくれます!!」
順番にリズが呪文を掛けて回る。セドリックが何かをリズに言っているようだが、対するリズの声はセドリックに届いていないようだ。
タイムアウトが終わり、観客席に戻ってから、私はリズになんて言われていたのかを聞いてみた。
「この呪文、違反じゃないのか確認されたんです」
「そういえば、反則じゃないの?」
「昨日確認しましたけど、大丈夫でした」
……この子は七百もある反則を確認したのか!
*
試合の終盤、
「『エクスペクト・パトローナム』!!」
腕試し&ハリーの安全のため、
大丈夫。
霞のような守護霊が杖先から飛び出し、白銀の尾を引きながら
ハリーがぐらりと揺れ、箒から体が滑り落ちると同時に、私のものより遥かに光を放つ守護霊が
「リズ! あの人、落ちてるわ!」
この天気で誰かはわからないのだろう。スーザンは焦ったように私の腕を掴む。
私が杖を向けるより先に、ハリーの落ちるスピードが緩んだ。たぶんダンブルドア先生だろう。もう、大丈夫なはずだ。
*
「……結果は?」
「あなたの落下に気が付かなかったセドリック・ディゴリーがスニッチをキャッチ。本人はやり直しを要求したようですが、審判の判断によりハッフルパフの勝利となりました」
「………………そっか」
原作通りの結果。やはりハリーは落ち込んだような顔をしている。
「ホットチョコレートを持って来ました。体が温まると思うので、飲んで下さい」
後ろで沈黙しているグリフィンドールのクィディッチ・チームのメンバー、そしてロンとハーマイオニーを前に押し出す。
これから始まるやりとりには、私は居ない方がいいだろう。