ひなたぼっこの研究者   作:たんぽぽ

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 お気に入り700件突破。ありがとうございます。

 本当にお待たせして申し訳ありませんでした。
 まずは小説の方をどうぞ。


第55話 買収とフラグ

 フェリックス・フェリシスを使った守護霊の呪文強化は、失敗に終わった。やっぱり幸運と幸せは、漢字は同じでも厳密には違うらしい。確かにラッキーとハッピーで違う言葉だし。

 こうなったら、手はひとつしかあるまい。

 

「と、いうわけで、まね妖怪(ボガート)を貸して下さい」

「いや、貸して欲しいと言われても……」

 

 私の前で困った顔をするのはルーピン先生。だが、ここはなんとしてでも先生の協力が必要なのだ。

 

「お願いです、守護霊の呪文はこのご時世で覚えておいて損はないじゃないですか。ちゃんと原型をとどめた状態でお返ししますから」

「いや、まね妖怪(ボガート)に原型があるのかすらわからないんだけど……」

「このままじゃ不安で勉強に専念出来ませんよ。もうまね妖怪(ボガート)の授業は終わってますし、あとは処理だけですよね? ここはまね妖怪(ボガート)を助けるためと思って、私に貸して下さいませんか?」

「うーん、でも……」

「大丈夫です。リディクラスはマスターしましたし、チョコレートは大量に買い込んであるので」

 

 未だにうーんと唸って迷っているルーピン先生を見てあることを思い付き、それを実行に移すことにした。

 

「先生、三十分だけ待ってて下さい」

 

 三十分後、ルーピン先生の前の机には、スタンダードな板チョコから始まり、マグル界製、チョコレートケーキ、ブラウニー、チョコレートカップケーキ、チョコチップクッキーなど、考えられる限りのチョコレート製品が所狭しと並べられていた。

 ルーピン先生は、一瞬キョトンとした後に苦笑いを浮かべ、まね妖怪(ボガート)の貸し出し許可を出してくれた。

 

「ちなみに、なんで三十分でこれだけのチョコレート製品を用意できたんだい?」

「……吸魂鬼(ディメンター)対策に決まってるじゃないですか」

 

 最終手段(賄賂)として用意していたとは、口が裂けても言えない。

 

 *

 

「と、いうわけで、ルーピン先生にまね妖怪(ボガート)を借りてきたのですが、危険が予想されるので、今から二時間ほど寮の部屋にこもりたいのですが」

「ああ、いいわよ」

 

 ルーピン先生に「危険だから、他に誰もいない部屋でやること。ルームメイトに頼んで、寮の部屋を使わせてもらうのがいいだろう」と言われてしまったら、当初の予定通りに必要の部屋でやることなど出来ない。

 迷うことなく頷いてくれたスーザンに感謝しつつ、私は預かったトランクを引きずるように部屋へ向かった。

 

「……さて」

 

 私はトランクをベッドの上に乗せ、油断なく杖を構えた。

 

 *

 

 ・スーザンside

 

「……何やってるのよ、リズ」

「見ての通り、守護霊の呪文の練習です」

 

 私は目の前の光景に呆然としていた。

 まず、ベットの上のガタガタ言っているトランクには、まね妖怪(ボガート)が入っているのだろう。その脇には、大きな吸魂鬼(ディメンター)の写真が。そして、リズは机の上に所狭しと並べられたチョコレート製品を次々に口の中に放り込んでいた。

 

「あ、スーザンも食べます? 今紅茶を用意しますから」

「あ、うん、頂くわ」

 

 つい、いつも通りに答えてしまったが、これほどの量のチョコレートを摂取しなければならないほどの事をリズは行なっていたのだろうか。

 「どうぞ」と出された紅茶に口をつけつつ、フォンダンショコラにいちごを添えた小皿を丸テーブルまで持って来たリズに聞く。

 

「守護霊の呪文の練習って、どうやってやるの?」

 

 リズは一瞬キョトンとした後、教えてくれた。

 

「まず、一番はまね妖怪(ボガート)吸魂鬼(ディメンター)の姿に変えさせることですね。これが一番苦労しました。なにせ、中々姿を変えてくれないので」

「どうやったの?」

「最初は吸魂鬼(ディメンター)の姿をとにかくイメージしたり、怖い思い出を思い返したりしてみたのですが、中々上手くいかなくて。次は説得ですね。守護霊の呪文はプラスの感情のエネルギーからなる呪文なので、食らったら絶対良い気分になれるとか言って写真を見せたり。最終的には買収しました」

「……どうやって?」

「これです」

 

 勉強机に山積みになっているチョコレート製品を漁り、リズはバスケットを渡してくる。

 

「マカロンね」

「はい。まね妖怪(ボガート)も気に入ってくれたみたいで、快くお願い引き受けてくれました」

「ひとつ貰ってもいい?」

「どうぞ」

 

 緑色のマカロンが気になったので、食べてみると。

 

「……何これ、凄く美味しい」

「ああ、抹茶ですね。日本という極東の島国のお茶です。気に入りましたか?」

「ええ!」

「では、また抹茶味のスイーツを作っておきますね」

 

 嬉しそうな表情のリズの背後にある、山積みのチョコレート達を見て、私はようやく最初に気になった事を聞いた。

 

「リズ、守護霊の呪文って、こんなにたくさんのチョコレートが無いと出来ないの?」

「……ああ、これは、調子に乗って作り過ぎた結果です。本当はこの二倍はあったんですけど、半分はルーピン先生にあげたので」

「どうして?」

まね妖怪(ボガート)を借りるためのワイr……お願いの品として」

 

 ……ルーピン先生、お菓子でリズに買収されたのね。

 

「でも、こんなにたくさん、消費するのが大変ね。手作りなら賞味期限も早いでしょうし」

「大丈夫です。ハッフルパフ生達に協力してもらいますから」

 

 ……え?

 

 *

 

 と、いうことで、今夜のハッフルパフ寮内は突然始まったお菓子パーティで大盛り上がりだ。

 夕食前、忙しい中厨房にお邪魔し、チョコレート製品以外のスイーツを作ったり、紅茶やジュース類も調達しておいたから、味に飽きたり口が渇いてしまうこともない。もちろん、水も用意しておいたから安心して大丈夫。

 

 そういえば、『アズカバンの囚人』、何か厄介な出来事ってあったっけ?

 

 ……多分、私に関わるようなことは無いよね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………もしかして私、今フラグ立てちゃった?




 長らくお待たせして申し訳ありませんでした。

 前回の言い訳と同じように、また体調を崩しました。本当にすみません。体調が戻ってからも忙しかったり夏バテだったりで、小説から離れていました。
 二ヶ月も間を空けて今更見て下さる方が居るかはわかりませんが、これからも自分の出来る限りで頑張っていきたいと思います。
 これからもよろしくお願い致します。

 本当にすみませんでした。

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