ひなたぼっこの研究者   作:たんぽぽ

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第47話 バジリスクの魔眼

 『秘密の部屋』を進んでいくと、開けた場所に出た。真ん中には、ジニーが横たわっている。

 

「「ジニー!」」

 

 私達は同時に叫ぶと、ジニーに駆け寄った。

 ハリーがジニーを揺さぶるのを止めて、私は急いで脈を取った。大丈夫、まだ間に合う。

 ジニーが抱きかかえている日記に手を伸ばそうとした瞬間、後ろから声を掛けられた。

 

「その子は目を覚ましはしない」

 

 振り返ると、一人の青年が立っていた。リドルだ。

 そう思った瞬間、私はジニーの手から日記をもぎ取り、杖を振りかざした。

 

「やめろ!」

「『フィーンド・イグニs———!」

「『ステューピファイ』!」

「『プロテゴ』!」

 

 悪霊の火の呪文を完全に唱えきる前に妨害されてしまった。魔法でバリアを張って攻撃を防ぎつつ、私は立ち上がって応戦した。

 

「リズ、何を———」

「この人はヴォルデモートの『過去』です! このままジニーを殺す気です!」

 

 もう自分の知識を取り繕う気にもなれず、私はリドルと交戦しながらヴォルデモートの名の由来であるアナグラムのことを叫ぶように話した。

 

「じゃあ———」

「ハリー、君と話すのは後だ。まずは、邪魔者から片付けてやる!」

 

 そう言うと、リドルはシューシューという息が漏れたような音で何かを言った。次の瞬間、パイプの入り口からバジリスクが飛び出して来る。

 

「リズを狙えって言ってる!」

 

 ハリーが目を半分以上閉じてジニーを隅の方へ引っ張りながら叫んだ。

 

「通訳どうも! 『アグアメンティ』!」

 

 空中に水をばら撒き、

 

「『グレイシアス』!」

 

 凍らせる。

 秘密の部屋のど真ん中に背の高い氷のオブジェが出来た。その裏に逃げ込み、急いで自分の目に光の操作の呪文を掛ける。

 

「隠れても無駄だ。———!」

 

 リドルがバジリスクに何かを言った。

 バジリスクがオブジェに体当たりをして来た。バリアを張って氷の欠片が降って来るのを防ぎつつ、あちこちにある水溜まりに呪文を掛け、氷の槍をたくさん作り上げた。

 

「『フリペンド』!」

 

 槍がバジリスクに降り注ぐ。その間に、私は地面に上向きにバリアを張った。

 バリアに乗り、さらに盾の呪文でバリアを作って飛び移る。魔力を消費するのが問題だが、これで空中を移動すれば、高さの差が埋まるだろう。

 ほぼ何の説明もされることなく戦闘が始まったために、途方に暮れているハリーと目が合う。私は開心術を応用し、ハリーにひとつのメッセージを伝えた。

 

『目を瞑って!!』

 

 ハリーが目を閉じたか確認する間もなく、私はバジリスクの顔の前に飛び出し、杖から光の球体を出した。

 球体は天井にぶつかると破裂し、目が受光量オーバーになるほどの光を出した———はずだ。目を閉じているからよくわからないが、呪文が正常通りの効果を発揮してくれれば間違いなく目潰しになる。

 ぱっと目を開けた瞬間、あらかじめ掛けておいた光の操作の呪文が効果を発揮し、私に見えている世界は薄暗い世界となった。一応コンタクトレンズをしているから、石化はしても即死はしないはず。そう思って、バジリスクの顔をまっすぐ見て、空中のバリアを踏みしめながら、右手で杖を、左手で氷の槍を構えた。

 バリアを蹴って宙を舞い、槍を片目に投げつける。ヒットしたか確認するより先に、私はリベンジとばかりに呪文を唱えた。

 

「『フィーンド・イグニス、悪霊の火よ』っ!!!」

 

 もう片方の目を呪われた炎が襲う直前、私はバジリスクの魔眼を見た。自分の心臓がキュッと縮まったのを感じてから、口の中に仕込んでいた氷のボールを噛み砕くのに掛かった時間は、およそ0.67秒。氷が砕け、歯と歯がカチリとなるのに0.31秒ほど。

 

 その一秒にも満たない瞬間で、私はバジリスクの魔眼によって、石化した。


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