ひなたぼっこの研究者 作:たんぽぽ
ジャスティンが、襲われた。
決闘クラブの翌日に『ほとんど首無しニック』共々襲われなかったので安心していたのだが、今日になって石化しているところを発見された。『ほとんど首無しニック』はいないので、たぶんジャスティンは窓ガラスに映ったバジリスクの目を見たか、コンタクトレンズ越しに魔眼を見たのだろう。
第一発見者はハリー。第二発見者はアーニーとザカリアスで、この件でハリー継承者説がほぼ間違いないという認識がホグワーツ中に広まった。
原作知識を持っているのに救えなかった。
原作知識を持っているからこそ、こんなにも悔しい。
私は日記を手放したことを、早くも後悔し始めていた。
ルーナに相談した結果、私は日記をハリーに渡すことにしたのだった。原作より早く日記を手にしたハリーは、たぶんハグリッドが継承者としてアズカバンに入れられたことを知るだろう。そして、ハグリッドに確かめに行くはず。ジニーの手には渡らないはずだった。
なのに、どうやってジニーは日記を手に入れたのだろうか。
ジニーに直接会うのは危険だ。ハリーに会って確かめよう。
*
次の日、変身術の授業を終えて寮へ戻るとき、ハリーと目が合った。その一瞬で開心術を使ってハリーの記憶を探ると、なんとハリーは談話室で教科書類と共に日記を出したようであった。たぶん、ハリーが余所見をしているうちに、慌てたジニーが日記を回収したのだろう。
私のやることなすことが全て裏目に出ている状況だ。何とかしなくてはいけない。
けど……。
何をすれば良いんだろう?
*
・ハリーside
ジャスティンが襲われてから、ますます僕を見る目が厳しくなった。
廊下を移動している間にリズと目が合ったが、何か変な感覚になった。リズも僕を疑っているということなんだろうか。
リズには信じてもらえるだろうと思い、僕は図書館へ向かった。
スーザン・ボーンズ、ザカリアス・スミス、アーニー・マクミラン、ハンナ・アボットが同じテーブルで羊皮紙を広げていたが、リズはいなかった。僕はスーザンに声を掛けた。
「やあ。リズはどこ?」
言った瞬間、ザカリアス、アーニー、ハンナの三人の顔が変わった。ザカリアスが低い声で言う。
「何だ? 次はリズを襲う気か?」
「違う。リズに話があるんだ」
「リズがお前と話すと思うのか? お前はジャスティンを襲っただろう」
「僕じゃない!」
「静かにして。このままだとマダム・ピンスが来るわよ」
スーザンが言った。スーザンは無表情で僕を見、呟くように言う。
「リズは奥の本棚のところにいるわ」
「おい、スーザン!」
声を荒げたザカリアスに、スーザンが静かな声で言った。
「リズはポッターが継承者だとは思っていない。私にはそれで十分よ」
僕は急いでその場を離れ、リズのところへ向かった。
「リズ、継承者のことなんだけど———」
「継承者がどうかしたのですか?」
心なしか、少し声が硬い。
「僕は継承者じゃないんだ。継承者はマルフォイだ」
「証拠はあるんですか?」
「ないけど———」
リズがパタンと本を閉じた。
「ハリー。あなたは自分がやられて嫌なことを人にやっているのに、この状況に文句は言えないんじゃないですか?」
「どういうこと?」
「たくさんの生徒が証拠もなくあなたを疑っているのと同じように、あなたもドラコ・マルフォイを根拠なく疑っているということです。というか、状況証拠ならあなたの方がありますし」
「でもマルフォイが、」
「彼は継承者じゃありません」
「証拠は! あるのか?」
思わず僕は声を荒げて聞いた。
「あります。けど、それを言ってもあなた方は信じないでしょうから、自力で調べればいいでしょう」
「リズ———」
「ごめんなさい。今、私、あなたと同じように気が立っているんです。また今度にして下さい」
リズは本を棚に戻すと、スーザン・ボーンズ達のところへ戻っていった。