ひなたぼっこの研究者 作:たんぽぽ
決闘クラブの知らせが各寮に掲示された。私はいつもの三人と共にそれを見る。
「決闘クラブか……。どうしようかな」
「主催者は誰なのかしら」
「リズはどうします?」
「私は行きます」
ハリーがパーセルマウスだということがわかるイベントだ。ハリーはかわいそうだが、念のため行っておいた方がいいだろう。
三人も行くことにしたらしく、クラブが行われるという大広間へ向かう。
待つこと数分。ロックハートが華やかに登場した。
「皆さん、集まって。さあ、(中略)———詳しくは、私の著書を読んで下さい」
ロックハートの言葉を聞くと疲れることが経験上わかっているので、さらっと聞き流す。
「では、助手のスネイプ先生をご紹介しましょう」
ロックハートは満面の笑みで言った。
「スネイプ先生が(中略)さてさて、お若い皆さんにご心配をお掛けしたくありません———私が彼と手合わせしたあとでも、皆さんの魔法薬学の先生はちゃんと存在します。ご心配めさるな!」
つまり、私達の
「作法に従い、まずは礼をします」
ロックハートは大袈裟に礼をしてみせた。スネイプ先生は不機嫌に少し頭を下げただけ。そして、杖を構えた。
「三つ数えて、最初の術を掛けます。もちろん、どちらも相手を殺す気はありません」
そうか? ロックハートの言うことが正しいなら、スネイプ先生が相手を殺す気満々に見える私の目は異常ということになる。
「行きます。一、二、三———」
「『エクスペリアームス』!」
目がくらむような紅の閃光がロックハートの胸に突き刺さり、吹き飛ばした。男子勢から歓声が上がる。
私? もちろん特大の拍手を送っておいた。
ロックハートがよれよれしながら立ち上がり、舞台に戻った。
「あれが、『武装解除の術』です。スネイプ先生、確かに生徒にあの術を見せようとしたのは素晴らしいお考えです。ですが、遠慮なく一言申し上げれば、先生が何をなさろうとしたかがあまりにも見え透いていましたね。それを止めようと思えば、いとも簡単だったでしょう。しかし、生徒に見せた方が教育的に良いと思いましてね……」
「負け惜しみにも程があるだろ」
ザカリアスの呟きに、私達は激しく頷いた。
「模範演技はこれで十分! これから皆さんを二人ずつ組にします。スネイプ先生、お手伝い願えますか?」
まずこちらにロックハートが寄って来た。
「ミス・フォーリー、あなたはミス・ボーンズと。ミスター・フレッチリーはミスター・スミスとでいいでしょう」
よかった。
「相手と向き合って! 礼!」
私はスーザンに向かって礼をする。
「私が合図を出したら、武器を取り上げる術を掛けなさい。いいですね? 一、二、三———」
(『エクスペリアームス』!)
無言呪文で術を発動させ、スーザンの手から杖が離れた。
「いかがですか?」
「……リズ、手加減してちょうだいよ」
私はスーザンの杖を投げ返すと、お先にどうぞと手で示した。
「『エクスペリアームス、武器よ去れ』!」
遅い。
「『プロテゴ』」
盾を展開して呪文を防ぐ。その隙に、スーザンは再び武装解除呪文を掛けてきた。
杖を大きく一振りし、大きな氷の塊を創り出すことで回避する。
「『インセンディオ』!」
スーザンの炎が氷を溶かし、水蒸気をあげる。私は水蒸気を魔法で増やし、目くらましに使った。
スーザンが水蒸気を消そうとしている間に後ろに回り込み、武装解除呪文を掛けた。
「完敗だわ」
スーザンが氷に杖を向けるが、氷は消えなかった。
「……どうやったの?」
「氷に薄く盾の呪文を張っておいたんです」
「でも、炎は効いたわよ」
「目くらましに使えると思ったので、その時だけ解除しておきました」
スーザンがため息をついた。私は決闘の後片付けをして、引き分けに終わったジャスティンとザカリアスの元へ向かう。
それからなんやかんやあって、ハリーとドラコ・マルフォイが見本になることになった。
「では行きますよ。一、二、三———」
「『サーペンソーティア、蛇出でよ』!」
マルフォイの杖の先から長くて黒い蛇が飛び出し、ハリーがギョッとするのが見えた。
「私にお任せ下さい!」
ロックハートが蛇に向かって杖を大袈裟に振ると、蛇は数メートル上空にに飛び上がり、再び着地した。
蛇がジャスティンに向かって威嚇する。
私が杖を出したとき、ハリーが叫んだ。
「———! ——!」
パーセルタングだ。
「『デリトリウス、消えよ』!」
蛇がハリーの言葉に従う前に、私は蛇を消した。
今回やりたかったことは、パーセルマウスだとハリーに自覚させることだ。ジャスティンを襲う気配を見せる前に消したから、たぶん大丈夫だろう。
そう思ったのだが、現実は甘くなかった。
みんなヒソヒソ話し始め、ハリーを遠巻きにし始める。ロンとハーマイオニーが駆け寄り、ハリーを引っ張っていくのが見えた。
……どうしよう。