ひなたぼっこの研究者   作:たんぽぽ

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第4話 悪友

 ホグワーツに入学してから一週間が経った。

 私はその間にスーザン、ジャスティン、ザカリアスと更に仲良くなり、アーニー、そしてハンナとも緊張せずに話せるほどになった。

 そこまで至ってから、私はやっとハリー・ポッターのことを思い出した。まったく、『ハリー・ポッター』の世界なのに今の今まで忘れていたなんて、ハリポタ命! な生前の私には口が裂けても言えない。口が裂けたら言えないけど。

 で、とにかくハリー、ロン、ハーマイオニーの顔は早めに確認しておいた方が良いだろうということで、私は現在スパイになりきって大広間で昼食をとっている。

 お寝坊のスーザン、そして休日は遅くまで寝る主義であるザカリアスは、まだ寮の自室で寝てる。ジャスティンは、きっと今頃図書室で魔法薬学のレポートを前にうんうん唸っているだろう。私? 昨日は金曜日だったので、夜遅くまで掛かって既に仕上げてある。

 お、ハリーとロンが入って来た。あの様子を見るに、多分遅めの朝食兼早めの昼食をとるつもりで来たのだろう。ダーズリー家で早起きには慣れているハリーはまだしも、ロンなんて眠そうな目をこすっているのだから。

 十分ほどで食べ終わった二人は、何やらしゃべりながら大広間を出ていく。私もそれに合わせ、読んでいるふりをしていた本を閉じ、カバンにしまってさりげなく二人の後を付いていった。

 多分二人は談話室へ向かうのだろう。私はハッフルパフ生なので、そのまま付いて行ったら怪しまれてしまう。原作ハーマイオニーによると、ダンブルドア校長の魔法のお陰で校内では『目くらまし術』が使えないので、私はこの一週間頑張って研究した魔法を使った。

 その名は『光による目くらまし術』。

 本来の目くらまし術は、その対象を透明に変えるという、本当に魔法的な魔法だ。それに対し、こちらは自然エネルギーのひとつ、光を一時的かつ部分的に操り、私に光が当たらずに通り抜けるようにする魔法だ。人間は、光が反射することによって物を見ることが出来るので、そこから発想を得た魔法だ。ただし、その魔法を編み出し、擬似的に習得してからまだ二日も経っていない。魔法を掛けた状態で動くと、私がいる場所が揺らめき、バレてしまう。だから、誰の視線も無いときを狙ってひたすらダッシュし、なんとかグリフィンドール寮の場所を発見することに成功した。

 その瞬間、私は後ろから声を掛けられる。

 

「誰かと思ったら、ハッフルパフ生じゃないか」

「君、そんなところで何をやってるのかな?」

 

 そっくり過ぎる二つの声。その声の主がわかった瞬間、私は透明マントの上をいく存在を思い出した。『忍びの地図』。プロングス、パッドフッド、ムーニー、ワームテールが生み出した、ホグワーツの地図である。

 そうだ、三年生の時にハリーに譲渡される前は悪戯好きな双子が所持していたのだ。私の存在などバレバレだ。

 ———ここまでの思考、約0.2秒。そして、思わず逃げようと動いてしまったのが運の尽きだ。

 

「お、今一瞬見えたぞ!」

「さあさあ、姿を表せ!」

 

 こいつら、絶対楽しんでるな。そう察した私は、自分の姿が揺らめくのも気にせずに双子に近付き、人気の無いところへ引っ張っていった。

 

「———で?」

「ハッフルパフの一年生が、グリフィンドールに何の用かな?」

 

 息ぴったりの双子、フレッドとジョージに向かい合うようにして、姿を表した私は立っている。

 

「その前にひとついいですか?」

「なんだい?」

「その手に握っている羊皮紙なのですが」

 

 予想外の言葉に、思わずギョッとする双子。私はニヤッと笑ってみせる。

 

「———交渉といこうか」

 

 私が忍びの地図が実際に動いているのを見るのに、十分と時間は掛からなかった。


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