ひなたぼっこの研究者   作:たんぽぽ

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第38話 協力の申し出

 コリン・クリービーが襲われた。

 翌朝、城中はこの噂でもちきりだった。

 しまった、忘れていた。ハリーが死なないようにと考えていたら、コリンのことを忘れていた。

 次……。次は、誰だっけ……?

 記憶を探ろうとするが、慌てていて思い出すことが出来ない。思わず泣きそうになる。

 

「リズ!」

 

 最初に気が付いたのは、ザカリアスだった。

 その声にスーザンとジャスティン、アーニーとハンナに、ハッフルパフの頼れる先輩であるセドリックまでもが集まってくる。

 

「リズ、落ち着いて! あなた、コリン・クリービーと知り合いだったわけじゃないわよね?」

 

 知り合いではなかった。知り合いではなかったが……。

 遂に我慢出来ずに、涙が溢れ出す。

 

「大丈夫。コリンは元に戻るから。泣かなくてもいいんだよ」

 

 セドリックが優しく声を掛けてくるが、私の涙は止まらなかった。次の犠牲者を早く思い出さないと……。

 入学したての頃、大広間への地図をくれたりした女子の監督生も来て、私を抱き締め、背中を優しくさすってくれた。

 

「大丈夫よ。落ち着いて。大丈夫だから」

 

 少しずつ落ち着いて来た私は、頭の中で原作での犠牲者を思い浮かべる。ミセス・ノリス、コリン、『ほとんど首無しニック』にペネロピー・クリアウォーター、ハーマイオニー、……ジャスティン。そうだ、次はニックとジャスティンだ!

 

「ありがとう。私……、ううん、何でもない。ごめんなさい」

 

 私は取り繕うようにそう言うと、寮を飛び出した。

 

 ・スーザンside

 

 私達は、リズが出て行った扉を見つめ、しばらく固まっていた。

 

「リズが……」

「僕達に……」

「タメ口……!」

「よっぽどショックだったってこと?」

 

 セドリックの問いに「たぶん」と答える。

 

「あの子、どうしてあそこまで……」

 

 監督生が呟く。

 ジャスティンが言った。

 

「最近、リズは切羽詰まっているような感じで忙しくしてるんです。もしかしたら、秘密の部屋について調べているんじゃないでしょうか」

「その可能性は高いな」

「君達も知らないの?」

 

 不本意ながら頷く。

 

「もっと、相談してくれればいいのに……」

「そうだわ!」

 

 私はひらめいて、ジャスティンとザカリアスに言った。

 

「私、リズのことをずっと見守るわ。あんな状態なんだから、いつ倒れてもおかしくないわ。私、探して来る!」

「待てよ。僕も行く」

「僕もついて行きます」

「私も行くわ」

「僕も」

 

 リズ。悪いけど、あなたが心配なの。だから、許してね。

 

 *

 

 『ほとんど首無しニック』には、バジリスクの方に何かしないと救う手立てはない。犯人がバジリスクを使っていない可能性もあるが……。……ああもう、頭がごちゃごちゃして来た。私は何をすればいいの!?

 図書館であてもなくウロウロしていると、目の前にこの夏休みで見慣れた長い赤毛があった。

 

「ジニー!」

 

 ジニーはパッと振り返った。手には……日記、が。

 

「リズ! お願いがあるの。何も言わずに、これを、これを!」

 

 そう言って、ジニーは日記を差し出して来た。ジニーの目の下にはくっきりとクマが出来ている。

 

「……わかりました。何も言わずに受け取ればいいのですね。それでジニー、あなたは私が、日記をどうすることを望みますか?」

「…………何もしなくていい。しなくていいから、お願い、それを持っていて」

「わかりました」

 

 ジニーが立ち去ると、私はハンカチで日記を包み、ローブの内ポケットに突っ込んだ。日記を破壊する。それが私に出来る一番のことだ。

 バジリスクの毒は手に入らない。ならば、悪霊の火を使うしかない。

 私は図書館の、呪文などの本が置いてあるコーナーまで行くと本を何冊か抜き出し、猛スピードでめくり始める。

 

「リズ」

 

 振り返ると、スーザン達三人と、セドリック、そして監督生が立っていた。

 

「手伝うわ」

 

 そう言って、本を手に取った。


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