ひなたぼっこの研究者 作:たんぽぽ
ようやくホグワーツ生が到着した。マクゴナガル先生は新入生歓迎会のための注意事項を簡単に述べた後、新入生を出迎えに大広間から出て行った。
「リズ! ホグワーツ特急にいなかったからどうしたのかと思ったわ」
スーザンが隣の座りながら言う。
「すみません。何故か九と四分の三番線に入るためのゲートが閉じてしまっていたので、乗り遅れてしまったんです」
「原因はわかったのですか?」
ジャスティンが向かい側の席に着きながら聞く。
「いえ。私は聞いていません」
ジャスティンの隣に座りながらザカリアスが呟く。
「リズならわかってそうだが」
彼の言葉は笑顔でスルーさせてもらう。
お互いに夏休みにあった出来事を話しているうちに、歓迎会の準備が整ったようだった。
新入生が並んで大広間に入ってくる中に、ジニーの姿を見つける。さらに、去年頑張って習得した『超直感呪文』を使いながらルーナの姿を探す。あ、いたいた。興味津々に魔法が掛けられた天井を見つめている。
コリン・クリービーの姿を確認したところで組分けが始まった。
ジニーはグリフィンドール(ウィーズリー兄弟が歓声を上げた)。コリンもジニーと同様。ルーナは原作通りレイブンクローに入った。
最後の生徒まで組分けが終わったところで歓迎の宴が始まった。
*
新学期が始まって一週間。既にルーナはレイブンクローで孤立し、いじめを受けていた。
失くしたものが無いかと学校中をウロウロしているルーナに、私は『呼び寄せ呪文』を使って回収していた教科書を差し出した。
「ん? ……ああ、ありがとう。あんた、優しいんだね」
「優しかったらレイブンクロー生に制裁を加えていると思いますが。見解の相違というやつですね」
「じゃあ何で加えないの?」
彼女は一ミリたりとも私が制裁を加えられないとは思っていないようだった。
私は少し考えて答える。
「……私は神じゃないんです」
「あんた、面白いね」
「どうしてですか?」
「普通はこう言うとき「私には出来ないから」とか言うけど、あんたは「神じゃない」って答えたから」
「……あなたは面白いですね」
「ここに来てから初めて言われたよ」
「そうですか。噂によると、あなたの持ち物は度々どこかへ行ってしまうと聞いたのですが」
「うん。いつか戻ってくるよ」
「まるでちょっと持ち物が一人旅に出ちゃったんだみたいな軽さで言うのはやめてもらえますか。授業に教科書を持って行かないつもりだったんですか」
「大丈夫。いつか戻って来るから。これも戻って来たし」
呪文学の教科書を指し、カバンにしまう。
「あなた、そのままだといつか裸足で森を歩く羽目になりますよ」
「随分具体的だね」
「あなたの場合忠告してもその通りに行動しそうで怖いです」
厨房で作って来たクッキーを入れた袋を差し出す。
「食べます?」
「うん」
二人でクッキーを食べながら、静かな廊下を歩く。
「あんた、面白い人だね」
「何故そう思うんですか?」
「私に話し掛けてくるから」
「おかしいですか? 私、あなたのこと好きですよ」
「私もあんたのこと好きだよ」
「それはよかった」
程よくサクサクしているクッキーをかじる音が響く。
「あんた、名前は?」
「リズ・フォーリー」
「私はルーナ・ラブグッド」
レイブンクロー寮の入り口にたどり着く。
鷲のノッカーが出す問題を考え始めたルーナの背に、私は言う。
「私はあなたのことを友達だと思っています」
歩き始めた私の背後で、ルーナが言った。
「私もだよ」
静かにレイブンクロー寮への扉が開く音がした。