ひなたぼっこの研究者 作:たんぽぽ
「朝よー! 起きなさーい!」
ウィーズリー夫人の掛け声で、ウィーズリー家の朝は始まる。
既に私がウィーズリー家を訪れてから三日が経っていた。初日、ウィーズリー夫人が起きる頃を見計らってベッドを抜け出し、家事の手伝いを申し出た私は、あっという間にこの家族に馴染むことができた。
ウィーズリー夫人が各部屋を回って子供達を起こす間、私はキッチンに立って大量のソーセージを焼き、トーストの焼け具合を確かめ、自家製の卵を使ってスクランブルエッグを作り、新鮮なミルクをコップに注いだ。
そして、さっと杖を振るって全てテーブルに並べる。
未成年が魔法を使うと『臭い』というシステムの所為で魔法省に感知されてしまうが、それは周りに魔法使いの大人がいない場合だけ。大人の監督下なら、学校外でも魔法を使うことができるのだ。
朝食が終わった後、
ジニーに背を向け、飴玉の形の小さな氷を口に入れ、静かに噛み砕く。スゥッと家の中の埃や汚れが消え、窓もピカピカに磨かれた状態になった。
「ジニー、仕事は終わりましたから、自由にして良いですよ」
「わかったわ。教科書を持って来るから、問題を出してくれる?」
「はい。羊皮紙と羽ペン、インクも持って来てくださいね」
私がそう言うと、ジニーは部屋に引き返していった。ジニーにホグワーツの勉強を教えつつ、昼食で食べるデザートを作るので、手早く準備を整える。もちろん、ウィーズリー夫人から許可はとっている。
「じゃあ、変身術からお願い出来る?」
ジニーに口頭で変身術の基礎を教えていく。本当はホグワーツに入ってからでも良いのだろうが、ジニーは『リドルの日記』に操られ、授業に集中出来ない一年間を送る可能性がある。だから、私はホグワーツの授業の予習という名目で、出来る限りの授業の内容を教えているのだ。
スイカを一口サイズに切り、スプーンの裏で潰す。この時、少し食感が残るようにするのがコツ。潰したスイカをバットに入れ、レモン汁を少量垂らし、冷蔵庫にしまう。ちなみにこの冷蔵庫は純粋なマグル製品ではなく、空気中の魔力をエネルギーとして動く魔法製品のようだ。一時間ほど経ってから一度冷蔵庫から取り出してざっくりかき混ぜ、再びしまい、さらに一時間ひやしてからもう一度かき混ぜる。氷を透明な器の形に操り、それにシャーベットを入れれば『夏にピッタリ☆スイカシャーベット』の完成だ。
冷蔵庫にシャーベットをしまっておき、買い物を終えたウィーズリー夫人が昼食の用意を始める。私はジニーと共に手伝った。
「早くホグワーツに行きたいなぁ」
「グリフィンドールの寮って、真っ赤なイメージがあります」
「ほぼその通りよ。カーテンやら布団やらカーペットやら、全部真っ赤なの。初めて入ったときは目がチカチカしてたまらなかったわ」
「慣れたんですか?」
「違うわ。魔法で勝手に着色したのよ」
用意が出来たと同時に男衆が帰宅したので、その流れで昼食となった。
皆が昼食を食べ終わった頃、私は立ち上がった。
「皆さん、デザートを作ってみたのですが、いかがですか?」
もちろんウィーズリー夫人に味の保証はしてもらっている。
みんな揃って食べると言うので、私はトレーに人数分の器を乗せて運んで来た。
「おいしい!」
「これ、リズが作ったの?」
ハリーの問い掛けに頷く。
自分のシャーベットをスプーンですくい、一口。うん、おいしい。
ホグワーツに着いたら忙しくなるだろうから、今はこの平和を楽しんでおこう。