ひなたぼっこの研究者 作:たんぽぽ
※今回をもってダンブルドアヘイトは終了となります。今後は主人公の中では「ちょっと油断ならない狸爺」程度になりますので、「アンチ・ヘイト」タグは付けないままとさせて頂きます。
・ダンブルドアside
エリザベス・フォーリー。先生方から、時々噂を聞く生徒。
噂はもちろん悪いものはなく、普段からハッフルパフらしく予習復習を欠かさないだとか、指名されてもスラスラ答えを述べるし、自分から積極的に質問をしたりもするという模範的な生徒だという。イースターの休暇辺りには、授業で軽く触れたことについてのレポートなども自主的に各教科の先生方に提出したりもし、その内容が深く、あのセブルスまでもを唸らせたという。
これがスリザリン生なら少し警戒したじゃろうが、ハッフルパフ生で闇に堕ちる生徒は滅多にいない。友人も作れているようじゃし、今後の成長が密かに楽しみな生徒の一人じゃった。
皆、彼女は純粋にグリフィンドール生のことを想ってあの疑問を投げかけたのだと思っておるが、実は違う。あの場は何もなかったが、あの強い目を見て咄嗟に開心術を使ってしまったわしは知っている。
彼女は、わしが正当に評価していないことを知っている。
あの目は、怒りでも憎しみでもない。わしへの哀れみじゃった。
彼女は自身に開心術が使われていることを知っていながら、抵抗しなかった。それどころか自らを曝け出してみせた。
哀れみの感情を知って動揺したわしを、もう充分だと判断したのかすぐに追い払ったが、わしは彼女にどう弁明することも出来ない。ハリーがいつか敵に立ち向かうときの心の支えになるよう、本来の評価を二倍ほどにもして点数を与えた。じゃが、それを言うわけにもいかん。
なぜミス・フォーリーは知っているのかはわからぬ。じゃが……。
見守るしかない、ようじゃ。
*
「リズ!」
ホグズミード駅へ向かう馬車を待っている間、私は誰かに呼ばれた。誰なのかはわかりきっているが。
「何ですか、ハーマイオニー」
「あ、えっと、その……ごめんなさい」
何を思ったのか、謝ってきた。
「私達、リズがあの本を渡してくれたから賢者の石を護れたのに……。私、あれは正当な評価じゃないと思うわ。だから、」
「わかってます」
「ダンブルドア先生に言って……え?」
「あれが正当な評価でないことは、私がダンブルドア先生の次にわかっています。だから、大丈夫。謝らないで」
「え……でも……」
たぶん、正義感の強いハーマイオニーは、ダンブルドアに訴えて優勝を取り下げてもらおうとでもしたんだろう。だが、それは無用だ。
「スーザンや他のみんなも、あれを乗り越えて来年の優勝を目指すと言っていました。今あなたがそれを言っても侮辱と取られますよ」
「……」
「ダンブルドアも、私が正当ではないと思っていることを知っています」
「え?」
「だから、大丈夫です。あなたは喜んでればいいんです」
私はダンブルドアに、ダンブルドアの開心術を通じて気持ちを伝えている。だから良いのだ。
「……ありがとう」
「いえ。ただし、来年は負けませんから」
「受けて立つわ!」
ハリーとロンの元へ走っていくハーマイオニーを見送りながら、私は心の中でため息をつく。
原作を読んだときの私はグリフィンドール視点だったのだから、あの点数を与えられて喜んでいられた。だが、原作スリザリン生はどうだろう。あんなタイミングで加点され、悲しくなかっただろうか。悔しくなかっただろうか。……惨めじゃなかっただろうか。
ダンブルドアがグリフィンドール贔屓じゃなかったら。ダンブルドアが、事件が解決した段階でグリフィンドールに加点していたら。
ダンブルドアは、たぶん将来のハリーを想って劇的な優勝を味わわせたのだろう。だが、その噛ませにされた原作スリザリンは? ハッフルパフは?
ダンブルドアはハリーとヴォルデモートのことを考えるあまり、他の人達を大切にしながらも、無意識に蔑ろにし過ぎている。別にグリフィンドールを優勝にしなくたって、ハリーは強い精神を持っている。ヴォルデモートに打ち勝つことが出来る。
ごめんなさい、ダンブルドア先生。あなたのこと、
……嫌いに、なっちゃいそうです。
これにて『賢者の石』は終了。次回から『秘密の部屋』編になります。