ひなたぼっこの研究者   作:たんぽぽ

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第22話 厨二病患者の対処法・理論編

 気の呪文を練習するときは、紙吹雪を撒いてから呪文を使えば良いのでは。———という天からの声が聞こえたので、実践してみることにした。

 結果。成功した。自分でもびっくりするくらいに空気の操作が出来ていた。おかしーなー私魔法ランクはDなのにー。

 よくよく考えてみると、私は操作系の魔法が得意なのかもしれない。なら、早速実践に移ってみよう。

 

「『マジカルポア・フリペンド、魔力よ撃て』!」

 

 黄色の閃光が一瞬で的を貫いた。

 ハリーは赤。ヴォルデモートは緑。それぞれが寮のシンボルカラーの呪文を得意としている。そして私はハッフルパフ、……黄色。

 基本的に争いが嫌いな私ではあるが、これが戦いにおいて私の十八番となる呪文なのかもしれない。

 だって、この魔法にはほぼ私の魔力(エーテル)は使われておらず、九割が空気中の魔力で構成されている。さらに、呪文は回転をかけつつ一直線に進んでいた。ここまで出来て、どこが十八番じゃないんだろうか。

 

 ……『吸収呪文』を練習しようか。

 

 *

 

 学年末試験直前につき一日二十三時間体制で勉強中。

 

 *

 

 学年末試験中につき全力で解答中。

 

 *

 

 学年末試験終了につき総力上げて自己採点中。

 

 ・ハリーside

 

「スネイプが賢者の石を狙っていることは確実だ。そして今日、ダンブルドア先生はいない。賢者の石が狙われるのは今日だ。先生はテストの採点で忙しいだろうから、僕達が食い止めるしかない」

「……そうね、ハリー。でも、待って。リズの協力が必要だわ」

「その通りだ。ハリー、リズにはなんでもお見通しなんだ。もしかしたら罠のことも知っているかもしれない」

「……仕方ない。本当は秘密にしておきたいけど、行ってみよう」

 

 十分後。

 

「まさか追い出されるとは思わなかったわ……」

「ハーマイオニー以上に試験に熱心だったなんて……」

「しかも追い返すための魔法が無駄に高度……」

 

 試験の自己採点を図書館でしていたリズは、声を掛けたら顔を上げて聞く体勢になったものの、「賢者の石」と言った瞬間に僕らの体は逆さまに浮かび上がり、図書館の外に放り出された(床にはクッション呪文が掛けられていた)。さらに図書館に入ろうとすると、急に床に一ミリ未満の氷が張られ、滑って進みにくいし、強風が図書館の方から吹いてきて向かい風で中々進めないし、外から声をかけようと口を開いた瞬間に手作りと思われるマフィンが放り込まれるし、散々だった。ちなみに、強風が吹いてきたときに『虎七味社』の本が一冊飛ばされてきたので、ロンが死にものぐるいでキャッチしていた。ロン曰く、これが無いと意識ある状態で帰って来れない気がしたらしい。

 

 寮の談話室に戻って虎七味社の『帝王とか名乗る厨二病患者(ヴォルデモート)への対処法①』を読む。著者はやっぱりミステリズ・ガール。

 時間がないので目次はさっさと飛ばし、第1章から読む。

 

『第1章 厨二病患者の実態』

 

「これは飛ばそう」

 

『第2章 厨二病患者が必要としているもの』

 

「賢者の石だな。これもパスだ」

 

『第3章 厨二病患者は寄生虫であった!』

 

「ミステリズ・ガールは何を考えているのかしら。ザ・クィブラーになりかけてるわ」

 

『第4章 厨二病患者の本名と知られざる過去』

 

「次」

 

『第5章 厨二病患者の暴走による被害者一覧』

 

「……」

「ハリー、気持ちはわかる。けど次だ」

 

『第6章 厨二病患者の協力者は意外と身近にいる!?』

 

「スネイプね」

 

『第7章 厨二病患者を狙う罠』

 

「これだ。これに賢者の石を守る罠が載っているはずだ」

 

『———

 厨二病患者が必要としているもの①である賢者の石は、たくさんの人によって守られています。罠は、全部で七種類。魔法界では『7』という数字はとても強力だと考えられています。きっとアルバなんとかダンブなんとかさんも、厨二病患者さんと同じ思考を働かせ、罠を七つと決めたのでしょう。

 

 一つ目の罠は、三頭犬、ケルベロスことフラッフィーさんです。フラッフィーさんは、大変な暴れん坊さんですが、音楽を聴くと眠ってしまうという一面もあります。

 二つ目の罠は、『悪魔の罠』と呼ばれる魔法植物です。大変危険な植物ですが、反面弱点は陽の光や炎などと魔法使いや魔女なら簡単に対処出来ます。もし、悪魔の罠に着地してしまったなどという事態が起きたら、『ルーモス・ソレム』という呪文がオススメです。炎の呪文を使用しても対処出来ますが、仲間が焼け死ぬ可能性もあるのでご注意下さい。

 三つ目の罠は羽のついた鍵です。この鍵は何千羽が飛んでいますが、次の部屋へ進める鍵は一つ。厨二病患者さんの協力者が既に先を行っている場合は、その鍵の羽は折れているでしょう。厨二病患者さんより先にその罠にいる場合は、扉と同じく錆びた鍵を探すといいでしょう。ちなみに箒に乗ると、鍵が一斉に襲い掛かってきますが、これを読んでいるあなたがホグワーツで百年ぶりに選ばれた最年少シーカーなら問題ないでしょう。

 四つ目は、巨大チェスです。頑張って! 今朝の占いによると、チェスが得意な方は自分の身を犠牲にする可能性があるので、気をつけてね☆

 五つ目はトロール。適当に大きな花火でも打ち上げてあげればそっちに気を取られるでしょう。

 六つ目はナゾナゾです。知性溢れる魅力的なあなたがいれば大丈夫! 自信を持って!

 七つ目は『みぞの鏡』。アルバなんちゃらダンブなんちゃらさんが用意した、自分の望みを映す鏡です。ただし、この中から賢者の石を取り出すには特別な条件が必要です。百年ぶり最年少シーカーなあなたなら取り出せるかもしれません。

 

 さあ、厨二病患者を厨二病から救うため、行くのだ! 勇者よ!』


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