ひなたぼっこの研究者   作:たんぽぽ

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第17話 決意

 気が付いたらクリスマス休暇終了目前になっていた。何とか呪文は完成させることができたが、無言でかつ素早く『気の呪文』を使う練習はなかなか進まない。空気がちゃんと操れているかどうか、感覚以外での確証がないからだ。本当に使うときは、別の呪文と並行して使わなければいけないのに。

 ああ、そういえば賢者の石を作ってみよう的なことを考えていたのに、何でこんなことになってるんだろう。しかも魔力自体を操る練習もしてないし。やりたいことがあるのは嬉しいが、多すぎるのも困りものだ。

 まず気の呪文がもう少し使えるようになってから賢者の石に役立ちそうなことを『魔力と魂』から抜き出してきてそうだいつ本を返そう魔力を操るのは気の呪文が終わってからでいいよねそういえば授業の予習もすっかり忘れてた少なくとも魔法薬学と変身術はやっておかないとああ忙しい忙しい———

 

 頭の中がこんがらがってきたので、とりあえず紅茶を飲む。うん、おいしい。

 考えてみれば、私が苦労して魔法の勉強をしているのは、全てハリーのためなのだ。ハリポタファンの一人として、セドリックにもシリウスにも死んでほしくない。そのために私は努力しているのだ。

 

 魔法界が笑顔溢れるステキな場所になってほしい。そして、それに少しでも貢献したい。———それが私の一番の願いであり、希望であり、夢なのだ。

 

 魔法を研究して楽しむのもいい。しかし、それより先にやっておくべきことがある。

 今年。今年は、何もしなくてもまだ大丈夫。しかし、来年はそんなわけにはいかない。来年は、ホグワーツの創設者の一人、サラザール・スリザリンがつくり、隠した『秘密の部屋』が開かれ、スリザリンの怪物であるバジリスクが解き放たれる。そして、ミセス・ノリス、コリン・クリービー、『ほとんど首なしニック』、ペネロピー・クリアウォーター、そしてハーマイオニーとジャスティンが石にされる。死なないとはいえ、石になっていた時間は戻って来ない。何としてでも救わなくては。

 とりあえず、一年生が終わってしまう前に、三階の女子トイレに住み着くゴースト、『嘆きのマートル』と接触しておくべきだろう。そして、原作では石になってしまった人達が石にならないように、光の操作の呪文を完璧にし、蛇を見れないよう呪文を掛けておくべきだろう。

 失敗は許されない。彼らが石になったら悲しむ人がいる。出し惜しみはできないのだ。とにかく、図書館へ行こう。

 

 ———私の、夢のためにも。


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