ひなたぼっこの研究者   作:たんぽぽ

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第12話 必要の部屋

 ハロウィーンとクリスマスの間のこの時期はクィディッチ・シーズンだ。私的にはハッフルパフを応援に行ったり、たまにハリーの勇姿を見に覗いたりする程度のこの時期は、何かにハマるのにうってつけだ。

 さて、『ハリー・ポッター』は、初期はそこまででもないが、魔法による戦いが登場する。私がその戦いに巻き込まれるのは、多分六年生の最後に起きる、ダンブルドアが死ぬ戦いだろう。DA(ダンブルドア軍団)には声が掛かるなら参加したいとは思うものの、一緒に魔法省に押しかける程仲のいい関係にはならないだろうから、回避不可能な六年生まで私は一応安全なのだ。

 しかし、考えてみれば、四年生ではヴォルデモートが復活してしまう。そこから魔法界は、水面下とはいえ激しい戦いが行われる危険な場所になる。何かの拍子に自分や友達が死んでしまったらたまらない。私は自分で訓練することにした。

 

 必要の部屋。

 必要の部屋とは、バカなバーナバスがトロールにバレエを教えようとしているタペストリーの向かい側の壁に、人知れず存在している部屋だ。その部屋の前を『呪文の訓練が出来る場所が必要だ』と念じながら三回往復する。すると、そこには願い通りの部屋が現れるのだ。

 部屋を出現させるのに成功した私は、羊皮紙に習得すべき呪文を書き留めた。

 

 ———

 ・武装解除呪文

 ・盾の呪文

 ・守護霊の呪文

 ———

 

 欲張りのし過ぎは良くない。まずはこの三つを習得しよう。

 そうは言っても、武装解除呪文は二年生、盾の呪文は三年生、そして守護霊の呪文はベテランの闇払いでさえ使うのが難しい呪文だ。選択は欲張っているが、少なくとも武装解除は今年度中に使い物になって欲しい。

 

「『エクスペリアームス、武器よ去れ』!」

 

 特に何も考えずに呪文を唱え、杖を振ってみると、当たり前だが何も起こらない。今度は、いつの間にか現れていた的に当てようと、赤い閃光が的に向かって一直線に飛んでいく様子をイメージし、杖を振る。

 

「『エクスペリアームス』!」

 

 パッと閃光は出たが、上手く的に当たらない。

 的に向かって当てるのが先か、それとも命中率は低くても呪文の効果が出るようにするのが先なのかはわからない。手探りでいくしかないのだが、的に当たらないことには効果が出ているかわからないので、ひとまず十中七、八は当たるように練習する。

 それが完了したら、次は武装解除をイメージしながらの練習だ。

 

「『エクスペリアームス』!」

 

 的の持つ杖がパッと弾かれるように飛んだ。

 

「魔力を強くしてみたらどうなるか……。『エクスペリアームス』!」

 

 杖に魔力を流し込むイメージでやってみると、

 

 バーーーン!!!

 

 的が吹っ飛んで壁に当たり、壊れた。

 

「あれ? 強過ぎたのかな? 『レパロ、直れ』」

 

 気を取り直してもう一度。

 

「『エクスペリアームス』!」

 

 手加減をしつつやってみると、今度は成功した。

 

「次は、精度と命中率を上げないと」

 

 こればっかりは、何度も繰り返して練習するしかない。

 

 こうして、必要の部屋は私の第三の家になったのだった。


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