絶望を嗤え(完結)   作:初代小人

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「え…?」
今目の前の男はなんと言った?
初恋の人は…自殺…した?


それなのに、それなのに。なんでそんなに笑っていられるの…?




憤怒と、無力と、償いと

俺はさ、バカだったんだよ。

別に勉強なんざできなくてもいい。

ただよぉ。

 

 

好きな女の子一人守れないなんて、男として失格だ!

隣のクラスのその子の友達の女の子に言われたよ。

「お前はどうしてあの子がいじめられてることに気づかなかったんだ」って。

でも怒ってるその顔はさ、だんだん崩れていって。

最後には泣き顔に変わった。

 

 

号泣していた。

釣られて俺も泣いちまった。

 

 

 

次の日、俺は人生初の喧嘩をした。

ガタイはよかったからよ、相手をぼこぼこにした。

先生に止められた。

先生も殴った。

その内何も分からなくなって、目の前にあるものを手当り次第に殴っていった。

 

 

気がついたらそこはボロボロの教室だった。

壁は穴だらけだったし、机やら椅子やらは散乱してて、目の前には血塗れの教師数人とクラスメイトが倒れてた。

ドアからは怯えた目で女の先生数人が見てた。ふと自分の手を見たら…

 

真っ赤だった

 

すぐに叔父さんと叔母さんが呼び出されて担任と話し合いになった。

担任は俺が朝来て突然暴れ始めたと言った。

叔父さんと叔母さんはそれでも俺を信じてくれて、「そんなはずはない。この子はそんなことをする子じゃない」って言ってくれたけどさ。

もう何もかもバカバカしくなって。

もういいよ、俺が悪いんだって叔父さんと叔母さんに言った。

 

 

それから帰り道さ、叔父さんは何も言わなくて、叔母さんはやけに明るく話しかけてくるんだ。その明るさが俺には辛くて。

俺は鍵をして部屋に閉じこもった。

叔父さんと叔母さんは何回か話を聞かせてほしいって言ってきたけどその後はそっとしてくれた。

 

 

 

真っ暗な部屋の中で俺、思ったんだ。

いくらクラスメイトを殴ってもあの子は戻ってこないんだなって。

そしたら自分の無力さに腹が立って、涙がこぼれてきて。

 

 

死のうかとも思った。

でもさ、今死んでもその子は生き返らないし喜ばねえだろ?

あの世に行ってまで嫌われたくねえしよ?

だから決めたんだ。

あの子を助けられなかった分、あの子が助けるはずだった分、俺が助けるんだって。

 

 

別に初対面だろーが関係ねえよ。

目の前でまた人を死なせるわけには行かねえんだ。

それが…俺のモットーで、あの子に出来る唯一の償いだと思うから。

 

 

あんたに何があったか知らねえけどよ?

俺に見つかったのが運の尽きだと思え?

死にたくなくなるまで面倒見てやるんだからな!

 

###

 

 

彼の目には涙が滲んでいた。

ああ彼は立派なんだろう。

努力家で、優しくて。

そして何よりも10年以上たったその人のことを未だに愛してるんだろうなって。

そして私は気づいた。

 

 

知ったふうな口を聞く彼にちょっぴり腹が立って、少しだけ惹かれていることに。

 

 

 

 

私の頬を涙が伝った。

 




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