「なんでよおおおおっ!!?」
ギルドに戻ってクエスト報酬を受け取りに行ったアクアは叫んだ
「アクアさんどうしたの?」
「クエストに使ってたオリの弁償を求められたってよ。なんでもあのオリ、特別な製法で作ってるらしい」
アクアと同行してたカズマが先に戻ってビュティの質問に答えた
やがてアクアはフラフラとカズマたちのテーブルに戻ると、机に突っ伏して泣いた
「……あのオリの弁償で…ひっく…10万エリスもするから…えぐっ…報酬が20万エリスって…ぐすっ……」
「どれだけ悔しかったんだよ」
泣くアクアにカズマは呆れた
「あ、そうだ首領パッチ、ほらコーラ」
「おお!!待ってたぜカズマ!」
そう言ってカズマが渡してきたジョッキ一杯の牛乳を首領パッチは受け取る
「コーラならオレにまかせろ!!」ダーーー
口いっぱいに牛乳を流し込み
「ぶーーーー!!!!」
噴いた
「なんだよこれ!牛乳じゃねーか!!!!」
(((気づけよ)))
ギルドにいた全員がそう思った
「やっぱバカだな」
カズマの心無い言葉に首領パッチは涙を流した
「見つけたぞ!佐藤和真!!」
そんな時、先ほどカズマの決闘に負けて気絶していたミツルギが大声を上げてギルドに入ってきた。後ろにはクレメアとフィオがいる
「佐藤和真、君の噂は街の冒険者たちに聞いたよ。ぱんつ脱がせ魔だってね!それと仲間をモンスターの群れに放り込んだり、仲間ごと攻撃したりするそうじゃないか。鬼畜のクズマだってね!」
「おいちょっと待て!!誰がその噂流したのか詳しく!」
噂が流れたのは間違いなくボーボボらとダクネスのせいだが、さっきミツルギに同じことをしたから否定しきれなかった
「アクア様、この男と一緒にいたらあなたの命まで危険です!ですから、どうか僕のパーティに」
「ゴッドブロオオォォォーッ!!!!」バキッ!
「ぐばぁ!!!?」
アクアの熱い拳がミツルギの頰を捉えた。テーブルを吹き飛ばしながら綺麗な流線を描き地面にベシャリ!と落ちた
クレメアたちが悲鳴をあげるがアクアはお構いなしに地面に倒れてるミツルギの胸ぐらを掴む
「あんたよくもあのオリ壊してくれたわね!私が代わりに弁償したのよ!30万よ30万、3倍で返しなさい!!」
「は、はい!」
(さっき10万エリスって言ってなかったか?)
カズマの疑問は誰にも伝わらなかった
「すみませーん!シュワシュワとカエルの唐揚げ2人前くださーい!」
ミツルギからふんだくった90万エリスでアクアは嬉しそうにカエルの唐揚げを注文した
「…コ、コホン。佐藤和真、君に話がある」
そう言うと頭を下げてカズマに頼み込む
「頼む、魔剣を返してくれないか!もちろんタダでとは…」
「いいぞ」
「…えっ?いいのかい!?」
「その代わり、もう俺たちに関わらないでくれよ。ほら」
そう言ってカズマは魔剣を取り出してミツルギに渡す
「あ、ありがとう!」
ミツルギは嬉し涙を流しながら立派な大根を力強く抱きしめた……
「って、タダの大根じゃないかぁ!!!」ボキッ!
「ああ!!オレの魔剣大根ブレード!」
そして大根ブレードの両端を持って膝に叩きつけて折った。流れるようなノリツッコミである
「僕が言ってるのは魔剣グラムの方だよ!どうして大根でまかり通ると思ったんだ君は!」
「むしろなんで一瞬まかり通ったんだお前は」
カズマの指摘はごもっともだった
そんな中、いきり立つミツルギの袖をめぐみんが引っ張り、ミツルギに言う
「まず、この男がすでに魔剣を持ってない件について」
「…え?」
めぐみんの指摘通り、カズマはすでに魔剣グラムを持っていなかった。ミツルギは青ざめる
「さ、佐藤和真!魔剣は!?ぼぼぼ、僕の魔剣はどこに!?」
カズマは一言
「売った」
「ちくしょおおおおおお!!!!」
ミツルギは魔剣を取り戻すべくパーティの2人を置き去りにして泣きながらギルドの外へ出るべく走り
「このバカチンがーーー!!」
「ぐはぁ!!?」
そこにボーボボの回し蹴りがクリーンヒットしミツルギを吹き飛ばした。何事かと周りが見る中、ボーボボがミツルギの前に立ち、怒りをぶつける
「見損なったぞミツルギ!キサマに勇者を名乗る資格はない!」
「な、なんの話だ!?」
「お前が仲間よりも魔剣を選んだことだ!!!」
その言葉にミツルギは動揺する
「な、何をバカなことを!僕が仲間より魔剣を取るだなんて…」
「お前は力に溺れた哀れな男だ。魔剣グラムの力にばかり頼ってきたお前はそれを手放せなくなっている。そんなものは勇者の力とは言わん!!」
見下ろす形でボーボボはミツルギに語る
「お前に必要なことは心の底から仲間を信じてやることだ」
「心の底から……」
「カズマがわざわざ決闘を受けたのは、お前に仲間の大切さと魔剣に頼る愚かさを伝えるためだ!ダクネスを盾にしたのも必ず攻撃を止めてくれるという信頼があってこそのなせる技!」
「あ、あの攻防には、そんな深い意味があったというのか…!そうとも知らず僕は…!」
膝をついて悔しがるミツルギを見たヘッポコ丸がカズマに問う
「お前、そんな意味があって決闘を受けたのか?」
「全然」
「だよね」
ボーボボの言葉はデタラメだがミツルギは気づかない
そして地面に手をつけるミツルギに、ボーボボは手を差し伸べる
「ミツルギ、お前は女神アクアに選ばれた人間だ。魔剣がなくともお前は戦えるはずだ!」
「ッ!!!ボ、ボーボボさん!!!」
感極まったミツルギはボーボボの手を握り返し、力強く立ち上がる
「ミツルギ!お前ならやれる!」
「そうだ!僕ならやれる!」
ボーボボの言葉で真の勇者の心に目覚めたミツルギは、まるで今までの景色が変わったようなキラキラした目をしていた
「僕なら魔剣がなくったって、魔王を倒すことができる!!!」
そしてミツルギの前にボーボボが立ち、肩に手をポンと置いて
「うぬぼれるなカスがーーー!!!!」
「ぎゃああああああああああああああ!!!!!」
ブチ切れたボーボボに鼻毛真拳を打ち込まれた
「「キョウヤーーー!!!?」」
外に飛ばされドシャ!と頭から落ちたミツルギを心配して取り巻きの女の子たちもギルドの外に出た
「何が勇者だ。ヘドがでるぜ、ぺっ」
「「まったくだ、ぺっ」」
「じゃあさっきまでのやりとりはなんだったの!!?」
その熱い手のひら返しっぷりにはビュティも目を剥くほどであった。物理的にも精神的にも
『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!!!』
その時、お馴染みの緊急を告げるアナウンスが辺りに響き渡った
「なんだ、またかよ?」
「これって少ないんだろ?最近多いよな」
テーブルの上でだらけているカズマの愚痴にヘッポコ丸はそう返す
『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、直ちに武装し、戦闘態勢で街の正門に集まってください!!!……特にサトウカズマさん、ボボボーボ・ボーボボさんとその一行は、大至急でお願いします!!!!』
「…………えっ」
まさかの名指しにカズマは硬直した
さて、いよいよ1巻の終盤、幹部ベルディア戦です!果たしてベルディアはボーボボ&カズマの鬼畜コンビの魔の手から逃れられるのか!!?