お母さん、僕に
みんなが寝静まる夜の街アクセルで、カズマたちは墓場の前にいた
「ここの墓場でゾンビを生み出しているゾンビメーカーってのを倒すのが、クエストの内容であってるんだよね?」
「ああ、それで合ってるぞ」
ビュティの問いかけをカズマは肯定する。ビュティの服装は、いつもの服の上から冒険者らしい服を羽織るという新しい装備をつけた出で立ちに変わっていた
ちなみに今回のクエスト、ゾンビを怖がった首領パッチと天の助が駄々をこねて、ヘッポコ丸とめぐみんとダクネスは無理矢理留守番をさせられていた
「今回に限っては
「大変だね、カズマくん…」
ハジケリストたちとは別ベクトルで才能と変態性を振り切ったパーティを従えるカズマの苦労をビュティは察した
「カズマ、ビュティ、死者の浄化は女神である私の本領よ!今回こそ、女神としてめまぐるしいほどの活躍ぶりを披露してやるわ!」
(今回こそって言ってるあたり、今まで役に立ってなかったって思ってはいたんだ…)
ボーボボを抜いた3人は墓場の中に入った
「…そういやボーボボはどこ行ったんだ?」
「先に行って罠を仕掛けるって言ってたけど…」
「ぶっ!!!」
その時、先頭を歩いていたアクアがビターン!と勢いよくこけた。こけた原因であるピンと張られた紐を引っ張りながらアクアは憤る
「ちょっと!こんなところに紐なんて仕掛けたの誰よ!?さてはゾンビどもの仕業ね!脳みそまで腐った存在は性格まで腐りきってるのかしら!!」
そして紐をグイッと引っ張ったことにより、作動した罠のボボちゃん印の鉄球がアクアに直撃
「ぐっはぁ!!!」
「きゃあああああ!!!!」
綺麗な曲線を描きながら飛んでったアクアは、着地点にいる横綱の張り手が頰にクリーンヒット
「どすこいでごわす!!」
「おぶっ!!!」
「なんで力士!!?」
墓場に横綱がいる理由、それは永遠の謎である
再び空を舞ったアクアはそのまま毒々しい沼に着水し、紫色の汚い液体を垂らしながら戻って来た。ついでに涙と鼻水も汚く垂らす
「うえ〜〜ん……カァジュマしゃぁん、私もう帰りたいぃい……。お風呂に入って報酬もらって唐揚げ食べてシュワシュワ飲んでもう寝たいぃ〜……」
「根をあげんの早過ぎんだろお前!?あと何の役にも立ってねーくせにちゃっかり報酬金もらおうとすんな!!」
泣きべそをかく駄女神に怒鳴りつけるカズマ
ーーーオォ〜ン…オォ〜〜ン……
「カズマくん!今何か聞こえたよ!」
「向こうだ。行くぞ!」
声の方へ向かって、アクアを引っ張りながら静かに歩く2人。やがて、生い茂る草木の先に声がするところまで辿り着いた
ーーーオォ〜ン…オォ〜〜ン……
「この先にゾンビメーカーがいるのかな…?」
「ボーボボもいないしアクアも今役に立たねえし、バレないように覗くか」
「ならばこれの出番だ。使いな、ボーイ&ガール」
2人の横で覗きゾンビが顔を赤くしながら双眼鏡を渡す。ビュティは恐ろしいほど冷静に渡してきた双眼鏡をはたき落とした
そしてカズマが草を掻き分けてその先を見ると
「おービュティにカズマ!お前らもこっち来いよ」
「あ、ボーボボさんのお知り合いですか?」
「「「ハッハッハッハ!」」」
「「うちとけてるーーーーーー!!!!」」
ボーボボと色白の女性とゾンビたちが仲良く宴会をしていた。あまりの馴染みっぷりに2人は叫ぶ
「何やってんのボーボボ!?」
「宴会」
「いやそういうこと聞いてるんじゃないから!!」
カズマはボーボボに耳打ちする
「つーかボーボボ、ゾンビ呼んでるこの人がゾンビメーカーって奴じゃねえのか…?」
「ウィズのことか」
「私がどうかしましたか?」
コップを手に穏やかに笑ってみせるウィズを見て、カズマは数少ない常識的な対応に涙が溢れた。墓場でゾンビを呼んでいる人が常識的かどうかはともかく
「あの、ウィズさんがゾンビたちを呼んでいたんですか?」
「え…ああ、そういうことでしたか。実は私…」
「あーーーーー!!!!」
ビュティの疑問にウィズが答えようとしたその時、後ろでぐずっていたアクアがウィズに掴みかかった
「ちょっとちょっと、まさかこんなところにリッチーがいるなんて、さてはゾンビメーカーを呼んだのも全部あんたの仕業ね!カズマたちを先に狙うなんて小狡いわね、私直々に浄化してくれるわ!『ターンアンデッド』!!」
「ひゃあああああ!!!!」
「いきなり何やってんだお前ー!!?」
アクア渾身の浄化魔法で半透明になるウィズを見てカズマは叫んだ
「私の魔法で1発で浄化しないなんて、さすがリッチーといったところかしら!でもこれで終わりよ!『セイクリッド・ターンアンデーー」
「………」ポチッ
追い討ちの魔法を撃とうとするアクアだが、見かねたボーボボはスイッチ1つで空からタライを落とした
「ぶっ!!!」ガンッ
「ぐはぁ!!?」ガンッ
「なんでカズマくんまで!!?」
ただし2個
その隙をついてビュティがアクアを説得する
「やめなよアクアさん!ウィズさん私たちに何もしてないよ!」
「甘いわビュティ、アンデッドたちは生者をつけ狙う摂理から外れた存在よ!特にリッチーなんか害虫みたいなもんだわ!ゴキブリよゴキブリ!」
「ひ、ひどい」
害虫王者と称されてショックを受けるウィズ
「……ん?」
それを見ていたカズマは、ふと背後の景色を見た。墓石の前で怪しく動く2つの影があった。さらに《千里眼》でしっかり見てみると
「オイ!早くしろ首領パッチ」
「待てって、今やってる…あったぞ!ブルドッグが埋めた骨」
(何やってんだあいつらー!!!!)
なぜかいる首領パッチと天の助が墓荒らしをしていた。非常にバチ当たりである
「おれは人間をやめるぞ!ジョジョーーッ!!」
「「出たーーー!!ミイラだーー!!!」」
「どう見ても落ち武者だろ!!!」
どこぞの吸血鬼のような言葉と一緒に、骨を取り出した穴から落ち武者に扮したボーボボが登場、そしてウィズが呼び寄せたゾンビたちが首領パッチたちを囲う
「ゾンビたちの怒りを喰らえ!鼻毛真拳奥義「福引券を余らせてしまった亡者の呪い」!!!!」
「どうでもいい未練でゾンビたちが暴れ出したーーー!!!!」
ボーボボが刀を掲げると福引券を握った拳でゾンビたちは首領パッチと天の助をフルボッコにしていく。やがて殴り終えたゾンビたちは気分がスッキリしたのか、物凄く穏やかな顔で全員昇天していった
そしてビュティたちの方も説得が成功したのか、不服な表情でアクアがウィズを除いてゾンビ全員に浄化魔法を使っていた
「ボーボボ、カズマくん、ウィズさんいい人だったよ。街の人たちの代わりに、墓場で彷徨っていた魂たちを天に送っていたんだって」
「マジでいい人じゃねえか。いや、リッチーだけど」
「これで一件落着だな」
ズタボロになった首領パッチを踏みつけながらボーボボは言う。そしてそれを聞いたビュティは、思い出したかのように呟いた
「そう言えば、ゾンビメーカー討伐はどうするの?」
「「「あ」」」
クエスト失敗
いつの間にかこの小説もたくさんの読者さんが読んでくれて恐縮の限りです。これからもボーボボたちを思い浮かべて大爆笑してください!