こんな所に転生させずともいいじゃないか   作:影の泉

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幻影旅団

 私が八歳になった年、ヒソカが妙に楽しそうだった。

 

「マドカ♡一緒に出かけよう♢」

 

「良いけど、なんか最近変だよ」

 

 ヒソカの言葉に読んでいた本から顔を上げた。

 私は比較的本が好きだ。

 特に好きなジャンルはファンタジー物。

 この世界には念があるせいか、古代の歴史などファンタジー要素が溢れている。

 

 

 ヒソカに連れられ古びたビル群に連れて来られた。

 そこから感じるのは複数の強いオーラ。

 ヒソカが壊れかけの扉をあけると、中に居た人々のオーラが跳ね上がる。

 相当警戒されている様だ。

 

「ヒソカか。そのガキはなんだ」

 

「僕の妹さ♡今回の仕事に役立つと思ってさぁ♠」

 

 黒髪をオールバックに撫で付け額には逆さ十字の刺青、そう幻影旅団団長クロロ=ルシルフルその人だった。

 って幻影旅団かい!?

 

「ここは保育園じゃないネ、ササと連れて帰るネ」

 

 比較的身長が私と近いフェイタンがそう言った。

 ええ、そうですよね。私帰ります。

 

「何帰ろうとしているんだい♠紹介するからちょっと待とうね♢」

 

 踵を返そうとしたらヒソカに捕まった。ッチ。

 そうしてヒソカに紹介されたのは団長であるクロロ、丁髷の剣士ノブナガ、大男ウボォーギン、大人しそうな少女シズク、着物の女性マチ、優しそうなイケメンシャルナーク、不良の様なジャージを着たフィンクス、小柄な人フェイタン、フランケンシュタインの様なフランクリン、前髪の長いコルトピ、全身包帯のボノレノフ、キャリアウーマンの様なできる女性パクノダ、の計12人。

 確り幻影旅団である事を告げられた。

 

「それでヒソカ、役に立つと言うマドカの念能力はなんだ?」

 

「実際見た方が早いだろう♢マドカちょっとこのビル歩いて空間転移扉(どこで○ドア)使ってごらん♠」

 

 ヒソカに促され条件を満たすためにビルを歩く。

 ビルの屋上に着いた所でヒソカにメールし念能力空間転移扉(どこで○ドア)を使いヒソカの居る所に戻る。

 

「なるほど放出系能力の転移系か。条件は一度自分が行った場所と言う所か」

 

 流石クロロ、一発で条件に気付いた。ヒソカがヒントっぽい事言っていた気がするけど。

 

「その能力で行ったり来たりできれば今回の獲物は結構取れるな。良いだろうマドカを連れて行こう、皆良いな」

 

 団員はクロロの言葉に頷いている。

 いや、反対しようよ。

 

「今回の獲物の場所を説明する、ワルイーダ財閥に宝部屋がある事が分かった。この宝を根こそぎ奪う」

 

 ワルイーダ財閥、悪徳商法などで財をなしたと言われていると聞いた。

 黒いうわさも多いらしい。

 

「おお、たから全部たーイカスじゃないか。なるほど、宝部屋でマドカの念能力使って運ぶのか」

 

 そうウボォーギンが大きな声で言った。

 

「後はマドカの戦闘能力を見るか。誰か相手したい奴はいるか?」

 

「おう、俺が相手をする」

 

「分かった。殺すなよ」

 

「分かってるって」

 

 ええ!? ウボォーギンが相手って、嫌過ぎる。

 誰が良いって人はいないけど、ウボォーギンはいやー。

 

「マドカ行っておいで♡」

 

 ヒソカに促され私はいやいや足を動かした。

 

「死なない様に手加減はしてやる。行くぜ!」

 

 そう言ってウボォーギン、ウボォーは床を陥没させ私に殴りかかって来た。

 右に左にかわして行くがパワーの割にスピードが速い。

 一度バックステップで距離を取ったが直ぐに距離を詰められる。

 

「ヒソカ、マドカの実力は如何なんだ?」

 

「念の才能では僕以上♡点数を付けるなら100点、ただし念だけならね♠身体能力がまだまだ何だ、子供だから仕方ないけど♢後は戦闘経験を積ませたいね♡」

 

 クロロとヒソカの声が聞こえた。

 ヒソカに取って私ってお弁当か何かだと思う。

 何時も唐突に襲いかかって来るし、寝込みも襲う。

 寝込みにトランプ突きつけられる事が続き、寝ている時も身体の周りギリギリに円を張る事を覚えた。

 

「おら! よそ見してっと危ないぜ」

 

 いけないいけない集中力が反れた。

 ウボォーはそこを見逃さず右手にオーラを集中させると殴りかかって来た。

 か、かわせない。

英雄(ジークフリート)

 私のオーラが跳ね上がって、ウボォーの拳を両手で掴む事に成功する。

 

「オーラが跳ね上がりやがった、なるほど強化系の念か。こりゃあ楽しめそうだな」

 

 ウボォーは楽しそうな笑みを浮かべるとオーラを高め出した。

 戦闘狂はヒソカだけで間に合ってます。止めてー。

 私の願いは適わずウボォーは嬉々として打ちこんで来る。

 ウボォーの力は強く受け止めるには両手が必要だ。

 対して私はウボォーにたいした攻撃が通らない。

 筋力がまだまだ低い私には念のブーストはあってもそれ程の力はない。速度で対応してるがそれにも限度がある。仕方ない。

 〝火炎と氷結(ファイヤー&アイス)

 氷の剣を出しウボォーに備える。

 

「変化系か具現化系の能力か、メモリの無駄遣い。いや、籠ってるオーラ速度共に早い。どうなってやがる……面白い」

 

 ウボォーが肉食獣の様な笑顔を向け襲いかかって来た。

 嵐の様に襲いかかって来るウボォーの拳を氷の剣で反らす。

 

「うおー、冷てーな。威力もまずまずと」

 

 ウボォーは私の氷の剣の威力を探りつつ打ちこんで来る。

 

 ウボォーと組み合ってから一時間、私の息は大分上がって来ていた。

 まだまだ体力は少ない私は必死で集中力をかき集めた。

 

「そこまで」

 

 打ちこんで来ようとしたウボォーがクロロの声に咄嗟に停まった。

 

「実力は分かった。だがどういう事だ? 放出系ではなかったのか?」

 

「……」

 

 クロロの質問に私は息が上がっていて答える事ができない。

 

「マドカは全能力を使う事ができる♢」

 

「なるほど、そんな能力者が居るとわね」

 

 代わりにヒソカがクロロに答えを言った。

 それにクロロは感心したように返した、がそれ以外のクモのメンバーが驚いたような顔をする。

 

 

 その後クモのアジトに泊まり、次の日にクモの獲物狩りに出発した。

 

「俺とシャル、パク、マチ、マドカは宝部屋まで一直線で向かう。他のメンバーは陽動役だ。行くぞ」

 

 クロロの合図に皆が動き出す。

 私達は隠し扉からワルイーダの屋敷に侵入し、地下の宝部屋を目指す。

 他のメンバーは正面からだ。

 

 おとり役の派手な音が聞こえるまで絶で隠れ、警備がおとりに向いた所で深部に侵入を開始した。

 途中出会う警備はマチがどんどん倒して行く。

 地下を進み宝部屋に侵入に成功した。

 

「マドカどの程度の大きさまで運べる?」

 

「扉に通るサイズまでなら運べます。私以外にも扉を潜れば移動できます」

 

「上出来だ」

 

 クロロが宝の選別をし、 私が宝部屋とクモのアジトを能力で繋ぎ何度も宝を運んで行く。

 パクとシャル(そう呼んでいいと言われた)も運ぶのを手伝ってくれる。

 マチは扉の所で警戒中だ。

 

「よし、皆にも集まる様に連絡する」

 

 そう言うとクロロが陽動メンバーに連絡を開始した。

 

 爆音が響き宝部屋に次々とクモのメンバーが集結して来た。

 最後のメンバーが到着した所で空間転移扉(どこで○ドア)の扉を開き、皆に合図する。

 全員が潜り終えた所で扉を消す。後方で怒鳴り声が聞こえたが無視をした。

 

 

 こうして初めての泥棒は終わった。

 その後クモのメンバーと携帯の番号を交換し帰宅した。

 度々呼び出されては手合わせやタクシー代わりに使われもした。

 一度言った事がある場所でしか空間転移扉(どこで○ドア)は使えないので、色々な場所を突破させられた。

 戦闘組に呼ばれては試合をしていた為、私の経験値も大幅に上がって行った。

 

 

 クモと会って半年位経った日にヒソカに呼ばれて天空闘技場にも行った。

 残念ながらキルアは帰っていて会う事は適わなかった。

 何だかんだで家に帰らず天空闘技場で過ごし、両親にも会っていない。

 両親は放任主義というか、ハントで殆ど家を空けている。

 私も母に会ったのは産まれた時を除き、片手の指の数程だ。

 父親に関しては生きている事は聞いているけど、会った事もない。

 

 

 

 

 そうして私は十歳の誕生日を天空闘技場で迎えた。

 

 

 

 

 




次回からハンター試験になります。

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