こんな所に転生させずともいいじゃないか   作:影の泉

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アルカ

 ゴンの目が覚め私達がゴンと話していると、キルアが何か葛藤しているような顔をした後頭を下げて来た。

 

「頼む妹を、アルカを助けるのに力を貸してくれ!」

 

「「分かった」」

 

 キルアの言葉にゴンと私は頷く。

 

「良いのか!? 俺の家と戦う事になるかもしれないんだぞ!」

 

「うん。だけどキルアは助けて欲しいんでしょう」

 

 キルアの驚きの声にゴンはキルアを真正面から見て答えた。

 

「それで、何で妹さんを助けて欲しいの?」

 

「マドカまで……。実は――」

 

 キルアは少し言葉を切ると昔キルアの家であった事を語り出した。

 キルアにはアルカちゃんという妹がおり、私の一つ年上だそうだ。

 更にアルカちゃんには〝おねだり〟と〝お願い〟の能力があり、〝お願い〟で叶える事のできる事には制限がない事。また難しい〝お願い〟の後の〝おねだり〟は命をかけるものが多く、その〝おねだり〟を失敗した者はその人物だけでなくその人が大切に思っている者、多くの時間を共有した者も死ぬというものだった。

 〝お願い〟を叶えるには三回〝おねだり〟を叶える必要があるそうだ。

 キルアの話は更に続き、アルカちゃんには〝ナニカちゃん〟というもう一つの人格が宿っており、〝おねだり〟と〝お願い〟はナニカちゃんがしているそうだ。

 また、キルアだけが〝命令〟する事ができるなど、かなり重要な事まで話してくれた。

 

「アルカ達は俺の大切な妹なんだ」

 

「シルバさんがアルカちゃんを閉じ込めているのって、アルカちゃんがゾルディック家に不利益をもたらす〝お願い〟を叶える可能性があるからで良いのかな」

 

「ああ。そうだ」

 

 私の質問にキルアは頷いた。

 

「今の仮定が間違っていないなら可能性はあるよ」

 

「本当か!」

 

 私の言葉にキルアは期待に満ちた目で見つめて来る。私はそんなキルアに頷き言葉を続けた。

 

「アルカちゃん、正確にはナニカちゃんがゾルディック家に対する不利益をもたらさない様に念をかければ良いんじゃない?」

 

「だが、そんな念どうすれば作れる」

 

「私が作れば良いと思うよ。私ならどんな系統の念も作れるし、制約を詰めて行けばいけると思う」

 

 私の考えを述べるとキルアは如何するべきか悩みだした。

 その間私も念の誓約と制約を考えて行く。ふと隣を見るとゴンが撃沈していた。深く考えるのは苦手だもんね。

 

 シルバさんが閉じ込めなければならないほどの念と考え、私が考えた念は以下の通りだ。

 〝限定契約(ギアス)

・かけられる対象は一人のみ。

・対象者に同意を貰わないといけない。

・対象者に同意を得られなかった場合、私が死ぬ。この事は言ってはならない。

・この念を作った後、新たに念は作れない。

・念をかけた後一週間絶状態になる。

 この考えでいけると思うのだけど。

 キルアに考えた念の概要を伝えて行く。言えない部分は言わなかったけど。

 

「本当に良いのか? それが本当だと今後念を作れないんだぞ」

 

「構わないわ。結構念の数が多いから言える事だけど、念が多いと念に対する習得率が下がると思うの。私は今の数で精一杯よ」

 

「分かった。アルカ達を頼む」

 

「うん。任された」

 

 私に向かって深々と頭を下げるキルアに私は頷いた。

 

「そうと決まればゴンを治して向かいましょう」

 

 私はゴンに〝癒しの口づけ(ヒーリングキス)〟をしてゴンの傷を治した。

 ゴンは私にお礼を言うと手早く移動の準備を始めた。私も持って来ていた鞄を取り中身を確認した。

 

「何処かでお土産買わないとね」

 

「あ、そうだね」

 

「別にいらねーだろ」

 

 私の言葉に頷くゴンといらないと答えるキルア。その反応は実に対照的だった。

 そんな話をしていると、ゴンの部屋にカイトが入って来た。

 

「お前たちもう行くのか?」

 

「カイト! 俺達でかけて来るね」

 

 カイトは何処か呆れたように言葉を紡ぎ、ゴンは嬉しそうに手を振ると駆けだして行った。

 

「おい! ゴン待てよ! カイトまたな」

 

「カイトまた会いましょうね」

 

 駆けだしたゴンを追ってキルアと私も後を追った。

 それを見ていたカイトは肩をすくめると「ジンさんそっくりだ」と呟いた。

 

 ゴンを捕まえ、まずは飛行船のチケットを取りキルアの家に向かう。パドキア共和国行きの飛行船に乗り、デントラ地区行きの列車に乗った。ククルーマウンテンまでは観光バスに乗ってゆっくり観光を楽しんだ。

 パドキア共和国に着いた時にお土産は買ってある。

 

「久々の試しの門だな。競争しよーぜ」

 

「うん。負けないよ」

 

 試しの門に辿り着くとキルアとゴンが競争をしている。

 最初に挑んだのはキルアで5の扉まで開けた。続けて挑んだゴンは4の扉までだった。しかし、ゴンが扉を開けた時5の扉も少し開いており非常におしかった。

 

「マドカー! マドカもやろうよ」

 

 ボーっと見ているとゴンに呼ばれた。

 門の前で待っている二人の所まで行くとお土産を持ち上げ二人に話しかけた。

 

「お土産先に持って入ってて」

 

「ゴメン。マドカにずっと持たせたままだった」

 

 私の言葉にゴンは謝りお土産を持ってくれた。

 

「じゃあ行くよ」

 

 私は自分の合図と共に試しの門の扉を押した。

 

「5の扉までだね」

 

 私は開いた門を見上げて答えた。しかしキルアは少し悔しそうにしている。私が開けた5の扉までなのは一緒だが、私が開けた時は少し6の扉まで開いたからだ。

 

 ゴンに預けたお土産を受け取り、私達は本館までの道を進んでいる。

 

「キルア様お帰りなさいませ」

 

 途中ゴトーさんがキルアの出迎えに来てくれた。

 

「ゴトー久しぶり、親父はいるか?」

 

「ご当主様でしたら本館の方にいらっしゃいます」

 

「サンキュー」

 

「ゴトーさん、これお土産です」

 

「わざわざすみません」

 

 キルアとゴトーさんの会話が終わった所でゴトーさんにお土産を渡した。

 

 キルアと本館の扉の前に立つと内側から扉が開いた。

 

「うわー、自動ドアみたい」

 

 ゴンの感想に苦笑するキルア。私も似たような事を考えた。

 キルアの案内でキルアの家(本館)を進んでいくと前方にシルバさんとゼノさんのオーラを感じた。

 

「親父、話があるんだけど良いか?」

 

「キルか、入れ」

 

「「御邪魔します」」

 

 キルアはシルバさんの許しを得ると部屋の中へ入って行った。ゴンと私も挨拶をして中に入る。

 

「マドカと、君がゴンか」

 

「こんにちは、シルバさんゼノさん」

 

「親父紹介する、こいつがゴン。ゴン座っているのが親父で、奥に居るのが祖父ちゃんだ」

 

 シルバさんの言葉にキルアがゴンを紹介した。

 

「それでキル如何したんだ」

 

 シルバさんの問いにキルアの喉がゴクリと動いた。

 

「アルカを外に連れ出したい」

 

「駄目だ」

 

 キルアの願いを瞬時にシルバさんが却下した。

 

「アルカにゾルディック家に不利益になる願いはさせないから」

 

「キル、それはできるのか?」

 

 再度願いを言うキルアにゼノさんが問いかけた。

 

「マドカの念でアルカがゾルディック家に不利益な〝お願い〟をできない様にする」

 

「ほう。キル、マドカと三人で話がしたい。お前達は出て行ってくれ」

 

「分かった。ゴン行くぞ」

 

 シルバさんの言葉にキルアは頷くと出て行ってしまった。

 シルバさんとゼノさんの注目が痛い。

 

「マドカちょっとやそっとでは、あやつに念は通らんぞ」

 

 私が黙っているとゼノさんが問いかけて来た。

 

「シルバさん達が閉じ込めなくてはならない相手って事ですよね。その上で誓約を考えました」

 

「話してみろ」

 

 シルバさんの問いに私は頷くと誓約に着いて語った。〝限定契約(ギアス)〟の誓約のあらましを。

 

「なるほど、それなら行けるかもしれないな。で、どこに命を賭けた」

 

 シルバさんの言葉に私は目を丸くした。まさか命を賭けている事に気付かれるなんて。

 

「マドカの目は命を賭けた者の目だ。見れば分かる」

 

「い、言えません」

 

 答えについどもってしまった。

 

「……。分かった、アルカに会わせよう」

 

「ありがとうございます」

 

 シルバさんは数秒押し黙るとアルカちゃんに会わせてくれると約束してくれた。

 

「だが、命を賭けるのはこれだけにしろ」

 

「そうじゃのう、親御さんが心配するじゃろう」

 

「はい!」

 

 シルバさんは私の頭に手を乗せると優しく撫ぜてくれた。ゼノさんも私の肩を叩きながら言葉を続けた。

 私はめったに会わない親だけど、知らない所で死んでいたら確かに嫌だと思い頷いた。

 

 シルバさんの先導で私達はアルカちゃんの元へ向かった。何重にも設けられた門の多さにアルカちゃんの重要度を悟る。

 

「アルカ、久しぶり」

 

「あ、お兄ちゃん!」

 

 キルアがアルカちゃんに話しかけると、アルカちゃんは嬉しそうに駆け寄って来た。

 

「アルカ、俺と外に行かないか?」

 

「お兄ちゃんと一緒に? うん。行く!」

 

「アルカ、マドカの言う事を聞いてくれるか? そうしたら一緒に行けるから」

 

 キルアに促されて前に行くとアルカちゃんがキョトンとしていた。

 

「初めましてアルカちゃん。私はキルアの友達でマドカって言います」

 

「は、初めまして。アルカです」

 

 私が自己紹介するとアルカちゃんも自己紹介してくれる。アルカちゃんは黒いぱっつん髪に青い瞳の可愛い女の子だった。

 

「アルカちゃん、ゾルディック家に関わる悪い〝お願い〟は聞かないでくれる?」

 

「うん。いいよ」

 

 アルカちゃんが頷くと禍々しいオーラが溢れだし、ナニカちゃんが出て来るとナニカちゃんも頷いた。

 

「〝限定契約(ギアス)〟」

 

 〝限定契約(ギアス)〟を発動するとオーラがドンドン流れて行き、枯渇寸前に流れが止まった。成功だ。

 私のオーラが消えうせ、何処か心もとない。

 見ていたキルアに頷くとアルカちゃんに抱き着いた。

 そんなキルアをゴンと私は温かく見守った。そんな視線に気付いたのかキルアは顔を赤くすると横を向いてしまった。

 

 

 

「マドカ、絶が解けるまで家にいろ」

 

 キルアがアルカちゃんにゴンを紹介し終わった所でシルバさんの声が聞こえた。どうやら絶が解けるまでキルアの家に居て良いそうだ。

 

「キル、アルカを上に連れて行け」

 

「分かった」

 

「キルア良かったね」

 

 ゴンが嬉しそうにキルアに話しかけた。キルアはアルカちゃんを抱っこしたままだ。キルアが照れて離れようとしてもアルカちゃんが嫌がり、抱き着いたままなのだ。

 

「あ……」

 

「マドカ大丈夫?」

 

「うん、大丈夫。少しふらついただけだから」

 

 動こうとして足を縺れさせた所をゴンが支えてくれた。一気にオーラを吸い取られて疲れただけだから。

 その後アルカちゃんも交えて色々話をした。

 

 

 

 

 




マドカの新たな念を出しました。
次話は本日20時に更新します

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