ゴン達の居る街に着くと車が用意されておりその前にゴンとキルア、二人の見知らぬ男性が居た。
ゴンとキルアは俯き手を握っていた。その体は細かく震えている。
「ゴン、キルア……」
「ごめんマドカ、俺達勝てなかった。一緒に行けないんだ」
「……」
ゴンは絞り出すように言葉を紡ぎ、キルアは俯いたままだ。
「ゴン、キルア諦めないで。まだこの事件は終わっていない。一緒に戦いましょう、待っているから。カイトも同じ気持ちだと思うよ」
「そっか……、そうだよね。俺達、絶対強くなる!」
「……、俺は」
ゴンは決意も新たに力を入れる。しかし、ゴンからはオーラを感じない。念を封じられているのだろう。
それより気になるのはキルアだ。何かを諦めた様な、傷ついた顔をしている。言葉も小さく聞き取れない。何があったのだろう。
「キルア、キルアも待っているから」
「っ! ……俺は」
「何があったかは知らないけど、私はキルアも待っているから。私達友達でしょ」
「! ……」
キルアはまた俯いてしまった。今、私に言えるのはここまでか……。
ゴンやキルアと別れて見知らぬ二人と合流した。
「俺は
「マドカです。宜しくお願いします」
一見不良の様に見える白い服の男性がナックルさん、和服の様な服に片腕を隠している人がシュートさんだった。
どちらもモラウさんの弟子だそうだ。
ノヴさんは後から来るお医者さん達を誘導するためにこの場に残り、私はナックルさんとシュートさんをネテロさんの元に連れて行く。
ネテロさんの元に戻るとモラウさんとカイト、コルトさんも居た。
ノヴさんがお医者さんを連れてきたら直ぐにキメラ=アントの巣に向かうつもりだろう。
ゴンとキルアの元に向かう前に〝
女王の生死はどれだけ内臓が無事か、だ。お医者さん達が内臓を繋げている間生きていられるかも問題そう。それがコルトさんから聞いた話を繋げた結果だ。
お医者さん達がノヴさんに連れられてやって来るとキメラ=アントの皆さんに連れられ空を飛んでいる。
一直線に飛んだ方が早く着けるというコルトさんの案に乗った形だ。
お医者さん達は最初悲鳴を上げていたが、直ぐに悲鳴を噛みころした。この先に患者が居ると聞いているからだ。
キメラ=アントの巣に着くと直ぐに女王の居る場所に案内された。
キメラ=アントの女王は胸から下が爆散しており酷い状況だった。内臓はキメラ=アントの皆さんが集めており、側に置かれていた。
お医者さん達はすぐさま治療に取りかかり、内臓を繋げて行く。
お医者さん達曰く内臓は思ったより無事らしい。
女王は何かキメラ=アントだけに分かる通信でコルトさんを呼ぶと何かを話し始めた。
コルトさんの言葉しか分からないが、息子『王』の事を心配しているようだ。
コルトさんの奮闘も虚しく女王は息を引き取ってしまった。
嘆き悲しむコルトさんが見つけたのは女王の腹に宿ったもう一人の子供だった。
モラウさんがコルトさん達がもう人間を食べない事を条件に女王に着いて来たキメラ=アントと女王の子供を保護する事にした。
キメラ=アントの王が東ゴルドー共和国に行った事が分かり、私達は準備を始めた。
ネテロさんは用事があると一人別行動を取った。
ノヴさんは弟子を迎えに行くと街に戻り、モラウさん、ナックルさん、シュートさん、カイト、私は女王の元を離散したキメラ=アント達が人里に出てきた場合の戦闘員として残った。
カイトと事件が起こった街に向かい、そこに居たキメラ=アントを退治しているとノヴさんからゴンとキルアも東ゴルドー共和国に連れて行くと連絡が入った。
ゴンやキルアと合流するとキルアは何か吹っ切れた様な顔をしていた。
合流したのは私とカイトが最後で、直ぐに列車に乗る事になった。
私はゴンやキルアと電車の中でトランプをしていた。
「皆さん聞いて下さい、会長からの指示が来ました。二人ずつ四方に別れ東ゴルドー共和国に入りシャウアプフ、モントゥトゥユピー、ネフェルピトーを分断し殲滅せよ、との事です。組み分けは私とモラウ、ナックルとシュート、カイトとマドカ、ゴンとキルアにします」
東ゴルドー国境近くで私はカイトと一緒に水の中を泳いでいた。
「東ゴルドー共和国に着いた訳だが、俺達はこの道を通って行こう」
そう言ってカイトと北周りで王の元に向かう事にした。
東ゴルドー共和国に入る前、テレビ放送で選別を開始するのを聞いていた私達はなるべく早く王のいる宮殿へ向かう事にした。
途中、人っ子一人居ない村を発見した。捜索してみるとおざなりな隠蔽工作がされており、既に選別が開始されている事を知った。
選別を止めたかったが、カイトに選別を止めるには早く王のいる宮殿に行く方が良いと諭され宮殿のある東へと急いだ。
携帯のニュースを見ていると変わった報道が流された。選別に向かっている住民全てを家に籠らせ、軍隊を向かわせるというものだった。理由は政府に対する不穏分子が現れて活動しているので、家に籠ってやり過ごせというものだった。軍が一軒一軒不穏分子を匿っていないか確かめるために家を検めると言っていた。
「この不穏分子はゴン達だな」
「カイトもそう思う?」
カイトと私の意見が重なった。
ゴンとキルアが行動した結果、こうなったのだろう。
今回の作戦で動くとしたらゴンだろうな……。
キルアは最終的には賛成して、誘導を開始するのかな。
「宮殿近くの街までもう少しだ、急ぐぞ」
カイトの言葉に頷くと動き出した。
宮殿のある街に着くと人の気配がせず、街全体が静まり返っていた。
「既にこの街の人間は選別され始めているらしい」
カイトの言葉に頷くしかない。
ノヴさんとモラウさんに連絡をし、カイトと私が到着した事を告げた。
ゴンとキルアの行動に感化されたモラウさんが、念で選別に使われているネフェルピトーの人形を破壊する事を決意した。
その為、王達との戦闘には本調子で参加できそうにないと連絡があった。
モラウさんの念獣が街に放たれ行動を開始した。
「ねえ、カイト。そこら中にいるトンボ、なんか変じゃない?」
「確かに、……もしや念獣か!?」
何故かモラウさんの念獣の周りに集まるトンボを指し声を上げると、カイトは念獣だと当たりを着けた。
「ノヴさんが当たりを着けたみたいだぞ、見てみろ」
カイトの言葉に視線を向けると、ノヴさんがトンボっぽいキメラ=アントの後方に陣取っていた。
「操作している念が消えた?」
「ネフェルピトーの円も消えているよ」
カイトが操作されている人に振り分けられていた念が消えたといった瞬間、私は宮殿を覆っていたネフェルピトーのオーラが消えた事が分かった。
カイトと顔を合わせ何が起きているのか考えた。
考えたが何が起きたのか分からなかった。
そんな時ゴンから連絡があり、合流する事になった。
「えーと、この状況は?」
「あはは、何か意気投合したみたい」
私がゴンに訪ねたのは、幾重にも集まった犬達の中心でナックルさんがカメレオン型のキメラ=アントと何やら楽しそうに話していた。
「おう、カイトにマドカ来たか! こいつはメレオロン。仲間になった」
「初めましてマドカです。こっちはカイト」
始めて会ったら自己紹介だよね。キメラ=アントと言ってもコルトさんみたいな人(?)もいるしゴン達が〝仲間〟って言っているし良い人なんだろうな。
「二人とも聞いてくれよ、メレオロンは凄い奴なんだぜ。何て言っても――」
ナックルさんがメレオロンさんを褒めちぎる。
メレオロンさんは照れているのかそっぽを向いていた。目に入る耳が少し赤くなっている。
確かにメレオロンさんの透明になる能力〝
ただ気になるのは王と三人の王直属護衛軍の中に範囲攻撃して来る相手がいないか、という事だ。透明になり殴っても範囲攻撃されてしまえば当たる可能性がある。
「あれ? キルアは?」
私はキルアが居ない事に気付きゴンに問いかけた。
「それが連絡着かないんだ」
それからゴンに選別を邪魔する為にキルアと別れた事を聞いた。
なるほど、選別の邪魔をしていたのはキルアか。キルア、ナイス!
潜入しているなら連絡を取れないのも納得がいく。
暫くしてモラウさんとノヴさんとも合流した。
合流したノヴさんは項垂れ手を握りしめていた。
モラウさん曰く、潜入した時敵との差を実感してしまったそうだ。
私がネフェルピトーに怯えずに済んだのは、格上は逃げても向こうからやって来る。っていう教訓があったからだ。逃げても追って来るなら対峙するしかないと開き直った。
私も潜入して〝
それから二日ゴンの元にキルアから連絡があった。
敵のキメラ=アントと遭遇して戦闘。戦闘の怪我で入院していたそうだ。
闇医者にかかっていてお金を振り込んで欲しいと伝えて来た。
ゴンがキルアと話をしている間に私がお金を振り込んでおいた。
キルアと合流するとタコの様なキメラ=アントを紹介された。名前はイカルゴさんだ。
タコなのにイカなの? と思った事は内緒にしておく。それを口走ったナックルさんにイカルゴさんが怒っていたからだ。
それにしてもゴンといいキルアといい良く人格の良いキメラ=アントと遭遇するよね。
「それでキルア身体の調子は? 調子悪い所あるなら治すけど」
「大丈夫、もう治ったから」
治すか訪ねた結果、治ったと言われてしまえばそれまでだ。歩き方に違和感ないし本当に大丈夫そうだ。
「よし、全員揃ったな。王宮に潜入後それぞれ相手をする相手を説明する。まずモントゥトゥユピーにナックル、シュート、メレオロン。ネフェルピトーにカイト、マドカ、ゴン、キルア。イカルゴはパームの救出。最後にシャウアプフは俺だ。絶対に王に近寄らせるな!」
「「「「「「「「おう!」」」」」」」」
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