「ぐっ、お腹も左手もぐちゃぐちゃだ。〝
本当は倒れたいところだけど、こんな所で倒れたらキメラアントにお持ち帰りされる。
疲れた足を引きずりカイト達が去った街の方に歩を進める。
そこに朝日が顔に射しこんだ。
「戦い始めたのが夜だから、何時間戦っていたんだろう」
少しでも早くこの場を離れないと。さっきまでのネフェルピトーとの戦いで、大抵のキメラアントは怖じ気づき去って行ったけど、何時戻って来るか分からない。
本来より大分遅い足で街に向かって走る。
途中何度も縺れそうになる足を叱咤して前に進む。
日が沈む頃森の端まで来ていた私だけど、今日はここで休む事にした。
もっと進みたい所だけど、夜目はキメラ=アントの方がある。それに此処で休めばオーラも大分回復する。
視線? 悪い感じはしない……。
視線のした先を見ると四人の人物が見えた。
「あれはカイトとネテロさんと誰だろう?」
合流するか。
下していた腰を上げカイトとネテロさんの元に向かう。
途中人影の一人が煙管から煙を出すと数多の兎になり駆けて行った。
探索系の念能力かな。
カイト達の立つ岩場の真下まで辿り着くと、登れそうな低い傾斜の所を辿り登って行く。
「マドカ! 良かった無事か!」
途中で私に気付いたカイトが駆け寄って来た。
「カイト……。ゴンとキルアは?」
「無事だ。今は国境を抜けて街に居る」
良かったー、三人共無事だった。途中でネフェルピトーレベルの相手に会っていたら如何しようかと思った。
「マドカが帰ったか、また強くなったのう」
「ネテロさん、とえーと?」
「私がノヴで此方がモラウです」
黒髪に眼鏡、黒スーツの人がノヴさん。大柄で白髪、大きな煙管を持った人がモラウさんだ。
「マドカです」
ノヴさんとモラウさんに自己紹介をする。
「フォフォフォ、自己紹介が終わった所で敵の話をしようかのう」
ネテロさんのその言葉に皆の雰囲気が変わる。
「見た感じネテロさんより上ですね」
「そうじゃろうのう。さっき見た猫型の蟻は儂以上じゃった」
私の意見にあっさり納得したのはネテロさんだった。
「カイトからもそう言われていますし、実際に戦った者が言うのです本当の事でしょう」
ノヴさんの言葉に話し合いが始まり、色々話し合い私はキメラアント討伐隊に加わった。
「マドカ、ゴンとキルアが国境を越えた街に居る。一度あって来ると良い」
ネテロさんにそう言われて私はゴンとキルアのいる街を目指した。
服も変えないとな、ボロボロだし。
国境線で服を買い、近くの街に急いだ。
街に着きネテロさんに聞いた家に向かうと、ゴンとキルア、ビスケのオーラを感じた。
チャイムを鳴らし待っていると髪の長い女性が現れた。
ゴンとキルアに会いたいと伝えると中に通してもらえた。
ゴンとキルアの居る部屋の扉は開いており、中が窺えた。
ゴンとキルアはビスケに念の修行を見てもらっていた。
「ゴン! キルア!」
「「マドカ!」」
「ビスケもグリード・アイランドぶり」
「無事そうで何よりだわさ」
ゴンとキルアは嬉しそうに駆け寄って来てくれた。
ビスケにも挨拶して部屋の中に入る。
「次はマドカと一緒に戦えるように念の修行をビスケに見てもらっているんだ」
少し話した結果分かったゴンの動機だった。
キルアは少しばつの悪そうな顔をしている。
「直ぐにマドカに追いつくから、次は一緒に戦おう!」
ゴンは気合を新たに念の修行に入って行った。
何でもモラウさんの弟子とキメラ=アント討伐に向け割符を賭けて戦うらしい。
「次は一緒に戦いましょう。私も強くなって待っているから」
「お前まだ強くなるのかよ」
「今回結構ギリギリだったから。ネテロさん達の推察通りならまだ同レベルの相手が居るらしいし」
「分かった。俺達も絶対強くなる」
その日はゴン達の居る家で眠り、次の日ゴンやキルアと別れNGLへ向かった。
NGLに着き円でネテロさん達の元に急いだ。
「カイト、ネテロさん、ノヴさん、モラウさん。今戻りました」
「戻って来ましたか、〝
皆の元に手を振り向かうと、昨日話していた通りノヴさんの念、〝
〝
キメラ=アントが入ってこない時はカイトやネテロさんと組み手をした。
カイトから入る経験値は少ないが武器の扱いは上手くなった。〝
ネテロさんとの組み手ではガンガン経験値が溜まって行く。オーラ量では既に私の方が上だが、オーラの質の様な物はネテロさんが上だった。基礎身体能力も私の方が上だが経験という一点で負けている。
何度挑んでも軽くいなされてしまう。
「今日で30日、一緒に連れて行く者達が決まるのう」
「そうですね」
「あ! ゴンとキルアの持っていた割符の期限か」
最初に気付いたのはネテロさん、それに相槌を打ったのがカイト。私はすっかり忘れていて記憶を探る。
さっきまでネテロさんと組み手していてそれ以外の事はすっかり記憶の彼方だった。
「二人はゴンやキルアとモラウの弟子、どっちが来ると思っておる?」
ネテロさんは面白そうに聞いて来る。
確かに此処に居るのってゴンとキルア側のカイトと私だもんな。
「私はゴンとキルアが来ると思います。次は一緒に戦うと言ってくれましたから。信じることしかできません」
「俺からは何とも。モラウさんの弟子がどんな奴か知りませんし。ですがゴンとキルアが来てくれると嬉しいですね」
「ふぉふぉふぉ、そうかそうか」
私達の意見を聞きネテロさんは面白そうに笑っている。
そう私達が話しているとネテロさんの携帯が鳴った。
「……ふむふむ、そやつをここに連れて来てくれんか」
「何かあったんですか?」
ネテロさんの真剣な面持ちにカイトが代表して聞いてくれた。
「何、キメラ=アントの一部が降伏して来た」
「「キメラ=アントが」」
ネテロさんの言葉にカイトと私は驚きの声を上げた。
「今から降伏して来たキメラ=アントの代表がここに来る。……そら来たぞ」
「貴方が人間の代表か?」
現れたのは背に鳥の様な羽をもつキメラ=アントで雰囲気が真面目そうだ。しかし、今はとても焦っていた。
「そうじゃ、儂が代表をしておる」
「頼む女王様を助けてくれ! その為だったら俺は何でもする!」
やって来たキメラ=アントは地に頭を着ける勢いで頭を下げて来た。
「まず自己紹介をしようかのう。儂はネテロ、お前さんは?」
「俺はコルトという」
カイトと私は蚊帳の外だがキメラ=アントの話に耳を傾ける。ネテロさんとキメラ=アント、コルトさんの言葉を聞く。
「王が産まれたと聞いたが本当かのう」
「本当だ、王は産まれた。女王様を傷つけてな。今少数の師団長が女王様を見ている。何とか女王様を助けたい、その為に俺達はお前達に降伏する」
「分かった、降伏を受け取ろう。直ぐに医者の手配をしよう。カイト、マドカ一旦此処を出るぞい」
「「分かりました」」
私達はコルトさんを連れ一度〝
ネテロさんは急いで電話をかけて行く。
「マドカ、賭けのけ……勝負の結果を見に行きますが貴女も来ますか」
「はい」
ノヴさん賭けの結果って言おうとしなかった……。
ゴンとキルアの様子を見に行こう。