だが奴は弾けた   作:宇宙飛行士

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最後の一撃(リンク召喚)は、せつない。




Q.ねぇ、今何処?

 

 

 

 

 

 

 

━━アクセルシンクロォオオオオッ!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づいたら、コンクリートの壁にバイクで突っ込んでいた。

 

いや、何言ってんだコイツと思うかもしれないが事実なんだ。俺だって驚いてる。

 

俺は昨日、バイクの免許を取得した。その時のテンションは超アゲアゲでイカしたライムを紡ぐほどだった。

 

まあ、その、なんだ。一緒にバイクの免許を取りに来た友達は、俺より何週間か早く取得して華麗にそれを乗りこなしていたのだが。

 

つまるところ、俺はバイクに乗るのがヘタで、教習所では「二輪で走る核弾頭」と呼ばれるほどだったのだ。

だから免許を取得した昨日は本当に達成感が溢れて、イヤッホォオオオオオ!!!と叫んだのさ。だって核弾頭の俺がだぜ?イヤッホォオオオオオ!!!

 

 

まあそんな感じで、俺は兄貴のバイクを借りて夜の街を駆けていたのさ。

 

俺はこの街に吹く一陣の風……!何人たりとも俺の前は走らせないぜぇ!!と中二っぽいことを心で呟きながら愉快なツーリングを楽しんでいた。

 

そんな時である。俺はふと、自分が何故バイクの免許を取得して、そしてそれを乗りこなしたいかの動機を思い出したのである。

 

そうだ、俺はコイツに乗ってやりたいことがあったんだ。風をこの身で感じ、そして全身でそれを体現させたかったのだ。

 

俺のやりたかったこと。━━それは遊戯王5D'sというアニメのあるシーンだ。

 

遊戯王5D'sとはカードゲームを主軸においた遊戯王DM、遊戯王GX、そして遊戯王5D'sと続くアニメのことだ。世界で人気のデュエルモンスターズ、それを中心に話は進む。古代エジプトのファラオを巡る話、ひたすら主人公がガッチャして超融合してデュエリストからリアリストになる話、という風にカードを通してDMとGXは進んでいった。

当時それを見ていた俺は一週間ごとに楽しみながらアニメの続きを待っていた。

 

そしてついにGXから5D'sのシリーズに移る時、俺は「次はどんな遊戯王になるんだ?」とわくわくドキドキしながら自分の期待のハードルを上げていた。上げすぎていたと言ってもいい。まるで修学旅行を楽しみにしてベッドで眠る前夜のような感じだ。こんな感じで期待しすぎて、いざ「よし!行くぞ!」となると、結局「あまり楽しくないな」と期待のハードルを越えられず、意気消沈するものなのである。

 

そのような心持ちのなか、俺は遊戯王のアニメを見ることにした、だが、実際にそれを視聴して━━驚いた。

 

え、なんでバイクに乗ってるんや?

え、なんでデュエルで決着をつけるんや?

それでいいんか?いいんです(ニッコリ)

 

遊戯王5D's、なんとそれはDホイールというバイクに乗ってデュエルをするのである。

 

なんてこった。俺の期待のハードルを越さずにぶち破ってきたぜ。

 

当時の俺はそのDホイールのあまりのメカメカしたカッコよさに夢中だった。正直な話、デュエルよりもDホイールの方に視線はいつも釘付けだったのだ。だってすごいカッコいいもんアレ。ときどきよく分からない重力が加わって回転したりするけど。

 

まぁ、そんな感じでデュエルをする5D'sなんだが。そのアニメの中で主人公が行う特別な召喚方法がある。

それはバイクに乗りながら行うデュエル━━ライディングデュエルでしか使えないモンスターの召喚。その時のシーンにどうしても似たこと、つまるところ、なんちゃってライディングデュエルをするため、そしてそのシーンを再現するために俺はバイクに乗りたかったのだ。

 

その程度のことで、と疑問に思うかもしれない。だが、そんな人は実際にそのアニメのシーンを見て欲しい。きっと漫画のかめ○め波みたいなトキメキを感じてくれると思う。

 

そうしてようやく、俺はついに、バイクに乗ってその一番やってみたいことをすることにしたのである。夜の滑走路を一人バイクで走りながら、目につく周りに誰もいないことを確認して。

 

そうして、

「アクセルシンクロォオオオオッ!!!!!!」

そう叫んだ。

 

 

 

 

 

すると目の前にコンクリートの壁が現れ、それにぶち当たった。なんでやねん。

 

 

そうして子供二人に保護された現在、昨日のことを心の中で供述している次第である。

 

 

 

 

 

 

 

なんでも、子供達の部屋の前で俺は倒れてたらしい。

一日たってようやく自分に起きた事態を整理することができた。

 

すまない、嘘だ。全くもって理解出来ていない。

 

俺の頭がリミットオーバー・アクセルシンクロォオオオオオ!!!

うっせぇリンク召喚しろよ、とツッコミが入っても可笑しくないくらい俺は混乱していた。

正直、目の前の俺を保護してくれた子供の髪色が緑色だったことも「これが時代か……」とスルーしていた俺だが、だんだん子供と話をしていく内に、なんか色々噛み合わないというか、俺が意味がわからない単語ばかりを彼らは話すのだ。

 

曰く、俺のDホイールはかっこいいだとか。

曰く、何処かで暮らしてるの、サテライト?だとか。

曰く、あ!これからデュエルアカデミアに行くんだ!じゃあゆっくり休んでていいからね、だとか。

 

オイ、おいおいおいおいちょっちまってちょっちまって。

ツッコミどころ多すぎだし。ちょっ、マジで行っちゃうの。ヤメテ、この状態で一人にしないで。おいていかないで。

そう、結構ガチで言っても彼らは苦笑してさっさと行ってしまう。

 

……どうすればいい。気づいたら保護されてて。サテライトと言う知ってるけど「は?」ってなるようなこと言われて。デュエルアカデミアにガッチャ!してくると去っていった双子を見送って。一人ぽつんとソファーに寝転がってる俺はどうしたらいい?

 

 

 

答えろ!俺はこれからどう行動すればいいんだ。

答えろ!答えてみろルドガー!!!

 

 

 

 

 

とりあえず自分のバイクを確認してみた。

そしたらデュエルディスクが合☆体したメカメカした「え?これ俺の?」みたいなバイクがあった。

 

ヒエッ、なんでや。なんでなんや。こんなの俺の知ってる二輪自動車じゃない。

え?マジでどうすればいいの?というより話は変わるけど、あの双子も見ず知らずの奴を放置して立ち去るのはアカンと思うっす。

 

ええーマジかー。……マジかー。

 

 

 

 

マジかー。

 

 

 

 

 

 

「本当に良かったの?龍亞?」

 

「大丈夫だって!遊星の時も同じような感じだったじゃんか!」

 

龍可と龍亞はデュエルを学ぶために作られた機関、デュエルアカデミアへの通学路を歩いていた。

彼女らは現在、ダークシグナーとの戦いを終えた後からここに通い始め、デュエルを学ぶことに勤しんでいる。

 

「でも……なんか私たちの話してることに首を傾げてばかりで、少しおかしくなかった?」

 

「気のせいだろ?」

 

龍可は昨日、自分たちが保護した男性のことを心配していた。

自分たちの質問のほとんどを「ファッ!?」と返答する彼を、一人で放置してするのは良くない判断であったのではないかと思い始めたのだ。

 

勿論、見知らぬ人を部屋に居させることも心配だが、なにより目が覚めてからの彼が挙動不審であったことが気掛かりだった。

自分達の質問に答えられないばかりか、突然「ねぇ、今どこ?」「地球んなか」など呟き出したり、「オゾンより下なら問題ない」「朝まで騒ぎたいのでしょう?」などなんの脈絡もなく言っていたりしたのだ。これで心配しない方がどうかしている。

しかし、自分の家族である龍亞はそれを面白がり、すぐその男性を気に入ってしまったのだった。

 

いや、どう考えても怪しい。怪しいでしょ。

そう龍可は疑念を深めた。

 

しかし、それでも龍可がその男性を自分達の住む家に居させて安全であると最終的に判断したのには、ある理由があった。

それは男性が持っていたデュエルモンスターズのカードだ。

龍可はデュエルモンスターズの精霊の声を聞くことが出来る。

そのお陰で、男性が持つカードが非常に良く大事にされているということを感じることが出来たのだ。

 

カードを大事にしている人に悪い人はいない。感じたカードの思いから、彼を家に居させても良いという判断を彼女は下した。

 

でも、それって常識的に考えたらダメかも、と若干後悔し始めているのが現在の彼女なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

デュエルアカデミアにダイナミックお邪魔しますをしてしまった。

 

……やべえよ、やべえよ!まるでスクール○ォーズにでる昔のヤンキーのように校庭をバイクで走り抜け、そしてバイクを投げ捨てようやく暴走を止めた俺。

 

違うんだ。これにはしっかりした理由があるんだ。

 

 

━━俺はソファーに寝転びながら一人思った。

やっぱ、人の家に勝手にいるのは不味いんじゃないかと。

現在の自分を取り巻いてる環境はあまり理解出来ていない。でも、取り敢えずはここから脱出した方が良いんじゃね?と。

 

勿論、客観的に見ても自分がここに残って子供の帰りを待っていた方がいいというのは分かっている。

 

まぁ、つまるところ、俺はその時「アレ?コレもしかして夢なんじゃね?」と、これは俺が見ている幻覚なんじゃないかと思ってしまったわけだ。

突然俺のバイクがメカメカしていたり、なんかデュエルアカデミアとかいう単語が出てきたり、正直夢だと思う方が自然だと思う。

そんな心理から俺はバイクにまたがり(自然と馴染んだ)外の世界に繰り出したのだ。

 

ぴゃあぁ。

 

景色を見て、こんな感じの声が出た。

だってだって、なんかめっちゃ街が発展してるんだもの。超高層ビルが乱立してるし、道路はめっちゃ広くて綺麗だし。

 

はえー、すっごい。という感じで景色を楽しんでいた訳なんだけど。ここである問題が、それも大問題が起きました。

 

バイクが停止しません。

 

うーん、この。なんて余裕かましてたら加速していく始末。

あばばばば、アカン。アカンぞこれは。法定時速なんてなんのその。凄いスピードで爆走している俺だが、それでも何とか事故は起こさずにそれを乗りこなしていた。

 

ありがとう!俺を免許取得の際に何度も落とした教官!貴方の技術はここで活かされてますよ!

 

自分の成長を感じる。持ち前のハンドルさばき、体重移動でなんとかしている俺。でもこのままではいつか限界がくる。くそ、どうすればいい?このままじゃヤバいことになる。

 

そんな時、件のデュエルアカデミアが目に入ったのだ。

 

俺は知ってるんだ。なんかめっちゃ独創的な形をしてるけど、あれでも一応学校なのだと。

学校ということは運動場がある。学校の運動場ということは、超広い。

もう残された手はこれしかない!俺はデュエルアカデミアに爆走しながらお邪魔し、そしてグラウンドで乗ってるバイクをシュウゥゥ!!!

 

うわらば!と俺はゴロゴロ地面を転がり、バイクは横回転でくるくる転がっていった。

 

━━これが現在に至る経緯である。

 

凄い勢いで転がった俺だが、なんと外傷というものはほとんどなかった。

奇跡が起きたぜ。ありがとう神様。

そう天に感謝していると「大丈夫か!?」と言って工具箱を片手に持った少年が声をかけてきた。

俺はこの少年が学校関係者だと思い超謝り倒した。だってこれ通報モノだからね?すみませんを連打である。

すると少年は苦笑いして自分はこの学校の者ではないと言った。

そしてなんでこんなことになったかの詳細を聞いてきたので、俺は素直にバイクに異常が起きて停まらなかったことを伝えた。

 

少年はそれを聞き、持っていた工具箱を広げその異常を確認してくれると俺に言った。マジで。やべぇ優しい。なんか変な髪型してると思ってごめんね。その顔のマーク活かしてるぜ。

 

少年はその場で作業を始めるが、俺は学校の人に謝罪せねばならない。なので少年にここを少し離れることを伝え、そして学校の中に進んでいくのであった。

 

 

 

 

 

 

そしたらここの学校のハイトマン先生とデュエルすることになった。

 

 

 

やっぱりこれ遊戯王の世界かぁ。たまげたなぁ。

 

 




リンク召喚はヤバいと思ったけど、よく考えたら俺のBMGデッキは特に影響が無かったぜ。


結構うろ覚えなので間違えとかがあったら気軽に指摘してください。ガッチャ。

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