奇跡のなくパーティーに   作:ゆるポメラ

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ゆるポメラです。
今回はある人物の誕生日回です。
ちょっと暗めな部分もあるかと思いますが楽しんでいただけると幸いです。

え? 時系列ですか? お察しください。

それではどうぞ。


特別編 トラップマスター少女の誕生日

屋敷内で花見という珍妙な1日を終えた穹は借りている部屋のベットにダイブしていた。

 

「……なんか色々と疲れた」

 

そう呟きながら、天井を見上げる穹。

 

「……」

 

ふと、ポケットからペンダントを取り出し中に入ってる写真を眺める。

 

そこに写っていたのは自分と2()()()()()の姿。

 

確か……ああ……入学記念にと、3人一緒で撮った写真だった事を思い出した穹。

 

「……(我ながら自然な笑顔な気がする)」

 

そう思いながら、指をパチンと鳴らし、雛見沢の(ゲート)を出現させる魔法を展開する。いつも通り、魔法陣から障子で出来た和風のドアが出現する……が少し違っていた。

 

よく見るとドアのところに小さいシャンデリアの装飾が施されているのだ。

 

これは穹がクリアしてない……否、正確には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()はしてないという表現が正しい。

 

「……」

 

今日は2人に会えるのだろうか?と思いながら、穹は門のドアを開くのだった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「……やば。寝ちゃってた」

 

穹は教室で目を覚ました。以前と同じように精神をこの世界の自分に移動させたのだ。

 

「お前よく器用に寝れるよな~」

 

そう声をかけてきたのは同じクラスメイトの男子。

入学当初にクラスで最初に穹に声をかけてきた人物で、趣味も自分と似てる部分があるのでお互いに気が合うのだ。

 

「昼ご飯はどうすんの?」

「……今日は天気もいいし、外で食べる」

「はいよ」

 

穹の様子を察してくれたのか、男子は午後の授業には遅れんなよーと言い残し、他のクラスメイトと昼食を食べに行った。

 

その様子を見送った後、鞄から弁当箱と水筒を取り出し教室を出る穹。

 

「……(慣れたとは言っても、ひそひそ話は気になっちゃうな)」

 

廊下を歩きながら思う。

聞こえる限り、悪口ではなさそうだ。というか、この学校で自分がどう思われているか等、穹にとっては二の次だが。

 

運命のループを越え、雛見沢の分校を卒業した後、聖ルチーア学園が新しく建てたという共学の分校に穹は通っている。

ルチーアでの評判は詩ぃ姉こと、園崎詩音(そのざきしおん)曰く『貞淑な温室野菜の生産工場』とか『何年も幽閉されたら洗脳されるか発狂するかの2つに1つしかない施設』らしい。

 

なので、ルーチアに共学の分校が建てられた事を詩音に相談した時は、自分も含め疑ったくらいだが。

 

入学に求められる偏差値も普通だったので、こうして入学できた訳だが。

 

「ごきげんよう、柚深月さん」

「ごきげんよう(……この挨拶、ほんとに肩身が狭い。しょうがないけど)」

 

そんな事を考えてたら通りかかった女子生徒から挨拶をされたので、穹も軽く会釈をしながら女子生徒に挨拶をする。

目的地である外……というよりも中庭に向かう為には、学園のエントランスを通らなければならない。

 

なのでよく女子校側の女子生徒と出くわすのである。

 

そもそも聖ルチーア学園自体が元々女子校で尚且つ典型的な『お嬢様学校』なので仕方ないのだが。

 

「……やっと着いた」

 

なんとかいつもの中庭に辿り着いた穹。ここに着くまで、今日は何人の女子校側の女子生徒と出くわした事やら。

 

「はぁ……」

「何をそんなに溜息を吐いていますの?」

「あ、沙都子(さとこ)ちゃん……」

 

溜息を軽く吐くと同時に、聞き覚えのある人物が穹に声をかけてきた。

振り返ると穹と同じ雛見沢分校の卒業生で、ルチーアの女子校側に通ってる美少女……北条沙都子(ほうじょうさとこ)がそこに居た。

 

沙都子が隣に座ったのを確認した穹は、その理由を話す事に。

 

「いや……女子校側の生徒に挨拶をする時、毎回いつもと違った挨拶をするのは肩身が狭いなって思って」

「確かにそれについては(わたくし)も同感ですわ」

「……沙都子ちゃんの場合、僕以上に肩身が狭いもんね」

「まぁ……そうですわね……」

「「……」」

 

微妙な空気になり、お互いに弁当を食べ始める穹と沙都子。

 

「……梨花(りか)ちゃんとは……最近話せてるの?」

「……」

 

穹の質問に沙都子は答えず代わりに首を横に振った。その表情は何処か暗い。

 

「……(この様子だと梨花ちゃん、まだ気づいていないんだな。こんな沙都子ちゃんをずっと見続けるのは正直……僕も見てて辛い)」

 

心の底からそう思った穹。

沙都子がこうなってしまった原因というのが、ここには居ない自分の大切な彼女……古手梨花(ふるでりか)である。

厳密には、梨花や沙都子のどちらかが悪いって訳じゃない……と穹は今でも思ってる。

 

「中立な立場でごめんね?」

「……いえ……寧ろ、穹さんまで巻き込んでしまって申し訳ないですわ」

「それはもういいって前の時に言ったでしょ? ちゃんと梨花ちゃんと沙都子ちゃんから聞けたし。まぁ……いきなり過去に戻されてからの状況整理は焦ったけど」

 

これには理由がある。

沙都子は自分や梨花と同じ()()()()()を持っている。少し異なるタイプだが。

何故かいきなり昭和58年の雛見沢に戻っていて、自分なりに原因を探っていたところ、思わぬ事が解ったのだ。

 

なので自分は()()()()()という役割しかできない。大切な2人の為だから。

 

「……ふぁ~……」

「? 穹さん、眠いんですの?」

「えー……うん、丁度いい感じに風も吹いてこの場所って、今日みたいに天気がいいと日当たりもいいから」

 

雛見沢に居た時も外でお昼寝とかしてたからねと軽い欠伸をしながら付け足す穹。

 

「あ、あの……」

「沙都子ちゃん?」

「……」

 

沙都子が少し顔を赤くしながら自分の太ももをポンポンと叩いている、急にどうしたんだろうか?

 

「……てあげますわ」

「え?」

「で、ですから、わ、私が膝枕! し、してあげますわ……っ!」

「……え?」

 

思考が一瞬飛ぶかと思ったが、瞬時に彼女が言った意味を理解した穹。色々と言いたいが、ここは大人しく厚意を受け取る事にした。

 

「……やば。眠くなってきたかも」

「寝ててもいいですわよ? ある程度の時間になったら起こしてあげますわ」

「じゃあお言葉に甘えて……」

「ええ。あの、穹さん……」

「……んー?」

「……大好きですわよ

 

その言葉を最後に穹の意識が段々と遠のいていく、心地よい微睡の中、穹は眠りについた……




読んでいただきありがとうございます。
間に合って良かったです……(苦笑)
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。

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