前回は微妙ななところで区切ってしまい申し訳ありません……
今回は、後編になります。
視点は前回と同じく色々と変わったりしますが、お楽しみください。
祝え! 我が守り神の生誕の日を!!
……それではどうぞ。
「…………」
「(えっ……どうしよう……?)」
ありのまま起こった事を話すよ?
羽入ちゃんに誕生日プレゼントを渡したら、借りてきた猫のように大人しくなっちゃったんだけど………
「あ、あのぅ……穹?」
あ。復活した……
「……何?」
「どうして今日……僕の誕生日だって……」
「…あのねぇ。覚えてるに決まってるでしょ? 寧ろ、羽入ちゃん自身が覚えてない事に驚いてるんだけど……」
「あぅあぅ……」
僕がそう言うと彼女は、しゅ~んといった感じで落ち込んだ。
自分でもなんで忘れていたのか自覚はあるのだろう……多分……だけど。
「はっ! まさか梨花がその辺を歩いてろと言っていたのは……」
「……多分そういう事だと思うよ?」
ここにきて、梨花ちゃんの意図に気づいた羽入ちゃん。
「あうあう……でもだからと言って、あの言い方はないと僕は思うのですよ!」
「…そこは大目に見てあげてよ。梨花ちゃんだって悪気はないんだからさ……」
「穹は梨花に甘いのです!」
「……そんな事ないけど?」
「いいえ! そんな事あるのです! それはもうシュークリームくらい甘いのですよ!」
随分と具体的な例えだなぁ……
頬を膨らませ、拗ねている。擬音を付けるなら、"ぷんすか"かな……
本気で怒った羽入ちゃんは怖いんだけどね……
「でも……」
「…でも?」
「穹が僕や梨花に対して優しいのは昔からなので、僕は気にしないのです♪ 偶に複雑な気持ちになる時もありますが♪」
前半は嬉しい事を言ってるのが伝わったのは分かるけど、後半は何故か負のオーラが出ていた。
…乙女心は難しいもんだね……なるべく解るように今でも努力はしてるけど。
「あうあう♪ 開けてもいいですか?」
「…ご自由に。ちょっと渡すのがフライングになっちゃったけど……」
僕がそう答えると、彼女はそんな事ないのですと言いながら箱を開ける。
「…わぁ~♪ 綺麗なのです~♪」
僕が羽入ちゃんに渡したのは、手作りのブレスレット。
色は彼女の髪色に合わせて青紫色にしてみた。より輝きが増すように、素材を磨いて透明度を引き出した自信作だ。
「穹♪ どうですか? 似合ってますか?」
早速とばかりに彼女は、ブレスレットを左手首に付けて僕に感想を求めてきた。
「うん。凄く綺麗だし、とても似合ってるよ……」
「はうあう~~……綺麗……僕が綺麗……穹に綺麗って言われたのですぅ~~~……」
正直に思った事を言ったら、羽入ちゃんは両手を頬に当て、何やら自分の世界に入ってしまったようだ……
(まぁでも……こんな風に喜んでもらえてるなら……いっか)
ちなみに羽入ちゃんは、梨花ちゃん達が境内に迎えに来るまで、ずっとこのままの状態だった。
まぁ僕も圭一兄や魅ぃ姉、詩ぃ姉にからかわれたけどね?
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雛見沢の
その場所は、とある大魔女の書斎だった。
「……誰かと思えば、そなたか。今日は珍しい客が続々と来る日だな」
書斎の主が穹の姿を見て驚きの声を小さく上げた。
「…えっ? その言い方から察するに、さっきまで珍しい客が来てたっていう風に僕は聞こえるけど……」
穹がこの書斎の主で『尊厳なる観劇と戯曲と傍観の魔女』……フェザリーヌ・アウグストゥス・アウローラに訊ねる。
「メルとメラルの2人が来てな。その2人揃ってという事でも珍しいというのに、そなたと羅奈の創造主の3人で私の書斎に来たから驚いたものだ」
「そりゃまた珍しいね? フェザリーヌが驚くわけだ」
自分と羅奈の創造主が来てたという事に穹も内心、驚いていた。
ちなみにメルとメラルというのは、穹と羅奈の創造主の眷属みたいな感じで、穹と羅奈にとっては家族感覚な関係でもある。
「…そういえば近い内に知人の誕生日を祝いに行くって言ってたけど、もしかして……」
「そなたの考えてる通りだ。私に誕生日など在って無いものだろうに……」
ふぅ……と溜息を吐きながら、穹の考えてる事に答えるフェザリーヌ。
「……ハッピーバースデー」
「よ、よせ。こそばゆいわ……」
「照れる事ないでしょうに。ベルンには内緒にしてあげるから安心して?」
「べ、別に照れてなど……」
気のせいか、フェザリーヌの頭部に浮いている馬蹄状の記憶補助装置がピコピコとまるで感情があるかのように動いてたように視えたのは、穹の気のせいだと思いたい。
ここで穹は、フェザリーヌの左手首に
それは青紫色のブレスレットだった……
(フェザリーヌが付けてるブレスレット……僕が羽入ちゃんの誕生日にあげたやつと同じなような……)
「…そのブレスレット……どうしたの? 前は付けてなかったよね?」
「……貰った」
「…ふーん。まぁ、綺麗だし、フェザリーヌに似合ってると思うよ?」
「………………そうか」
「うん。世辞じゃなくて本当に僕はそう思う。あ……この前の本の新刊、借りていってもいい?」
「構わぬが、纏めて持って行っても私は気にせぬぞ?」
「それはちょっと……」
それはマナー違反でしょと穹は言うのだった。
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穹が書斎から去った後……
(綺麗で……私に似合う……か……)
左手首に付けてる青紫色のブレスレットを見つめながら先程の事を考えるフェザリーヌ。
穹が来るまで、実は彼女、穹と羅奈の創造主は誕生日パーティーをしていたのだ。
その際にも自分には誕生日なんて在って無いものだと3人には説明したのだが……
『そんな事……ない』
『そんな事ないと思いますけど……』
『我はそう解釈しているが……卑屈になり過ぎだぞ……お前。あってもいいだろう誕生日くらい。こんな我だって一応誕生日くらいあるぞ?』
……と何言ってんだお前という呆れた目とそんな事言うなよという目で3人に見られた。
その後はもう、どんちゃん騒ぎだった。
ケーキに蝋燭を立てて、火を消したりするなどという経験は、何千年ぶり……いや初めての経験だったのかもしれない。
「ふ……っ、誰かに祝ってもらうのも悪くはない気分だな……」
読んでいただきありがとうございます。
アウアウローラの口調、大丈夫だよね?(汗)
いやぁ……でも自分がやりたかった感じに書けて良かった(満足)
ただ強いて言うなら……誕生日の日付に間に合わせたかった……(泣)
最後の「かぁわいい!!! 惚れちゃいそうだぜー!! アウアウローラ!!!」ってなってしまったかもしれないそこの貴方。
……とまぁ、そういう冗談はさて置き。何故最後にアウアウローラを入れたのかは、察しの良い方なら分かってくれますよね? よね?
次回も頑張りますので、よろしくお願いします。
本日はありがとうございました。