東方鬼人伝の第1話!まだ駆け出したばかりの新米ですが今後の展開にご期待くたさい!
〜1人の鬼と災人〜
第1話:終わり
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「……もうこんな時間か」
時刻は17時を過ぎたくらいだろうか、俺はビルの屋上で1人
山の奥へと沈んでいく夕日を眺めていた。
俺の名前は「進来 翠」(しんらい みどり)。17歳の高校生だ。
今まで食事に勉学に娯楽に、何不自由なく育ってきてた。
…育ってきてたつもりだった。
俺は赤子の頃、この街の近くにある伊吹山に捨てられていたらしい。
たまたまハイキングに来ていた夫婦が、「赤子の泣き声がする」と言ってハイキングコースを外れて探したところ俺がいたらしい。
実の両親の名前も分からない、なぜこんな所に捨てられて生きていたのかも分からない、わかっていたのは自分の名前だけ。
そんな俺をその夫婦はまるで自分達の子のように育ててくれた。
しかしこんな生い立ちのせいか、周りのヤツらにはいじめられ暴力を受けた。自分の身を守るために徐々に抵抗して、おかけで体力には自信があった。高校生にもなる頃には陰口こそあったものの俺に暴力を振るってくる奴はいなかった。
…しかしその高校生になった年、俺のたった1人の友人が事故で亡くなった。友人も、その両親もまた俺を兄弟のように接してくれて、もう一つの家族のような感覚だった。
悲しみに明け暮れていた所、もっと辛いことが起こった。
先月、俺を育ててくれた夫婦が病気で死んだ。
その前にも不吉なことは多かった。俺がよく通る道路で事故が頻発したり、火災が起きたりなど………いつしか俺は不幸をもたらすとして避けられるようになった……
「……こんな世界…楽しい事なんて何もないや…」
スマホをポケットにしまい、俺は屋上の鉄柵を乗り越え座り込んだ。
人生で最後にみる光景が山に沈んでいく夕日とは…なかなかロマンチックじゃないか。
そう思い俺は目を瞑り、身を投げる決心をした。その瞬間後ろから
「貴方はまだ死ねないわよ」
確か女性の声だったと思う。この屋上にはさっきまで俺以外いなかったはずだ。
突然聞こえてきた声に驚き目を開けて振り向いた
「……あっ」
突如として吹く突風。その勢いに煽られて俺の体はビルの下へと落ちていった。
あぁ…これで終われるのか、いい人生とは言えないが少なくとも幸せや温もりはあった。重力に身を任せ体が落ちていく刹那、脳裏に今までの出来事、思い出が鮮明に蘇った。いわゆる走馬灯と言うやつだろう。
楽しかった夫婦との日常、ただ1人の友人と騒ぎ合っていた思い出。
果てには不幸をもたらすなんて言われた1人の青年の人生が……
……終わる……
「いいえ、まだ終わらないわ」
またあの女性の声だ。幻聴でも聞いているのか?それとも死後の世界ってやつなのか?
しかしその疑問は一瞬で解けた。「生きている」という感覚がある。
目の前に見たことのない女性がいる。
「!?」
仰向けの状態で倒れていた俺は驚いて体を起こした。辺りを見回すとそこは赤紫のような、黒のような、またはその二つが混ざりあっているような。そんな背景に無数の目がある。
「な、なんだぁ…?ここは…いったい…」
そこはまるで地面の上のような、水の中のような、空中のような
全てが曖昧な世界だった。こんな突拍子もない非現実的な世界をすぐに受け入れられたのはそこに「自分」という現実で確かな存在をしっかりと認識していたからだ。
「ここは『スキマ』と呼ばれる境界よ。」
目の前の女性が理解に苦しんでいる俺を見てそう答えた。
髪は金髪、背は高め、雨も日光もないというのに傘をさしていて不思議な帽子を被っていた。
「はじめまして。私の名前は『八雲 紫』(やくも ゆかり)
言っても理解出来ないだろうから簡潔に説明させてもらうわ。
貴方にはこれから『幻想郷』という世界に行ってもらう。
貴方にとっては異世界とも言えるし同世界とも言える場所。
そこで貴方にはある化け物を倒してもらう」
……理解が追いつかない。幻想郷?異世界であり同世界?化け物を倒す?
ファンタジー過ぎる。そんなものが実在するのか、と疑問に思った所で現状を見れば信じざるをえない。
「…一つだけ聞いていいか?えっと…八雲…さん?」
「紫でいいわよ。なにかしら」
この際、幻想郷だの化け物だの、そんな事は置いといて一つだけ聞きたい事が浮かんだ…そう
「じゃあ紫、なぜ俺なんだ?」
俺がそう聞くと、紫はすこし微笑みこう答えた
「幻想郷に貴方を連れてこようとしたのは私じゃないのよ。
強いて言うなら別の人?かしらね」
人?ってところがすこし引っかかる気もするが…まさか人ならざるもの、とかじゃないよな?
頭がこんがらがりそうだ、理解できないことが多すぎる。
おそらく長考してて固まっていたのだろう
それを見かねた紫が
「取り敢えずは幻想郷に言ってみる事ね……がんばってね〜w」
「…………ハァ!?」
さっきまでの険しい雰囲気が一変、急に少しおちゃらけたような性格になった。満面の笑みであった事は確かだが明らかに腹黒さがあった。
紫が手を振った途端、俺の真下に穴が出来た。途端に重力がかかり俺は真下へと落ちていった……
そう、幻想郷に行った時点で「外の世界」の俺の人生は終わったのだ
そして幻想郷での人生が始まる……
前置きが結構長いと思いますがようやく次回から幻想郷!
キャラが増えるにあたってセリフの前に喋っているキャラの名前を入れていきます。
なるべく誤字脱字は気をつけたつもりですが……あったさいはゴメンナサイ