成層破戒録カイジ   作:URIERU

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カイジ、不和……!

4限目終了……!IS学園初日、終わりを告げる……!だが、本番はここから……!

準備期間はたったの一週間……!オルコット討伐、その一日目……!

無駄にはできない……!その初日……!

 

「ねぇねぇ~、かーくん。いきなりセッシーと勝負なんて大丈夫なの~?」

 

呑気にもやってくる、布仏本音……!

 

「(クラスメイトの女がそれを聞くのかよ……!お祭り気分で推薦して巻き込まれて……決闘になったときも誰も助けを寄越さねぇで……俺を罵っておきながら……!第三世代機の勝負に第二世代機で放り込まれんだぞ……!)てめぇの頭にはマシュマロでも詰まってんのかよ……!それにこれは俺の問題だ、関係ねぇだろ……!」

 

「ど、どうしたの……?何だか雰囲気が怖いよ~……」

 

「(誰だってこうなるだろ……!助け船どころか、退路を封じておいて……!さっきまで通りといくかよ……!)話しかけんじゃねぇ……!うんざりなんだよ……!味方面……!ピンチのときは素通り……見逃しておいて……いざ自分が痛まない……被害がないってときになったら……あたかも私は優しい……助けてあげる……心配してる……!そんな風に近寄ってくるのは……!」

 

会長が言っていた……99.9%……人は人を救わない……!

なぜなら……人は人を救わなくても……その心が痛まないから……!

俺もそこまで人に絶望してるわけじゃねぇ……!

だけど、いまならちょっとはその言葉……分かる気がする……!

絶対じゃねぇが、ある……女尊男卑は正しく……その流れ……!

さっきのクラスの流れこそ、それ……!

 

「うぅ、そんなこと、考えてるわけじゃないよぅ……ただ、心配になったから……」

 

「その心配ってのが、うさんくせぇって言ってんだよ……!何ができるってんだよ、お前に……!」

 

「勉強のお手伝いとか、ISの事とか、少しは教えてあげられるよ~……」

 

「そんなもんは山田先生にでも聞くさ……!織斑先生には聞けねぇけど……いまは時間が惜しい、それじゃあな……」

 

教室に残された布仏本音……その耳と袖は悲しくうなだれていた……

 

職員室へ直行するカイジ……!目的は山田真耶……聞くことは山ほどある……!

 

「あ、伊藤君!ちょうどよかった。渡しておくものがあるんです!」

 

「あ、はい。こっちもちょうど山田先生に用事があったんで助かりました。で、渡しておくものってなんです?」

 

「えぇ……!?私に用事、ですか……?そんな、そういうのはまだ早いっていうか、先生と生徒なんですし……」

 

「まだ、訓練機の貸し出しの事とか聞くのは早かったですかね……?さすがに一日目は仕方ないとは思いますけど……だったら、情報収集を優先するか……!」

 

「あ、訓練機の事は織斑先生が先ほどなにかされていましたから、そちらに聞いてくださいね。って、鍵です。1027号室の寮の鍵を渡しておきますね」

 

そういって手渡されるのは鍵……IS学園寮の鍵……!

 

「え……?はじめの説明じゃ部屋の都合がつかないから1週間は外から通うって聞いてたんすけど……?」

 

「それは、私から説明しよう。帰る時間も前後する中警備をつけ続けるのも骨が折れるし危険なのでな。さっさと入寮できるように少し無理をしたのだ」

 

「うわっ!?お、織斑先生、急に出てこないでくださいよ……」

 

「全くずいぶんな言いぐさだな、貴様は……訓練機のことや寮のことでこちらから出向いてやったというのに。まぁさすがに今日は諦めろ。いくらなんでも当日の予定を取り消させるのは忍びない」

 

「そこまで無茶を言うつもりはありませんよ……で、訓練機の事はいいとして、寮に入るって言ったって荷物とか、どうなってるんすか」

 

「そこは私がまとめて郵送しておいてやった、ありがたく思え。というか、お前はどんな生活を送っていたのだ、あのボストンバックひとつがお前の生活用品のすべてか……?」

 

無茶苦茶……プライバシーもへったくれもない……!

 

だが、根無し草の居候だったカイジ……荷物はほぼなし……!

 

「(借金の形にねこそぎ持ってかれたんだよ……!)物は持たない主義なんでね……じゃあ、今日は情報収集とISの勉強に回すとするか……!」

 

「ほう、やる気は十分のようだな」

 

「一応面前であれだけの口をきいたんだ……半端な結果じゃ俺も納得がいかねぇ……!で、先生方。学園なら各国のISのデータとかあるんでしょう……?もちろん機密になるような部分は無理として、公開されているものをもらいたい……!特に動画……セシリアの公式戦とか戦闘の様子を収めたものがあればありがたい……!」

 

「学園内にいる専用機持ちのデータは入学時に提出されているものがありますし、公式戦などもすべて記録されていますから。それらのデータは差し上げられますよ。ですが基本的には部外秘です。学園外には、ですが」

 

「ほぼほぼこの学園内に軟禁されてるんだ。情報の漏らしようもねーし、そんなことしても俺には何の得もねぇ……!しないさ、そんなこと……!」

 

「ここは得とかではなくて、自分はそんなことはしないって言ってくれるだけでいいんですよ……?」

 

「そんなんじゃだめだろ……!利益にならない、得がねぇ……そういうのじゃなきゃ、根本的には信じられねぇ……!自分はしない、なんて薄っぺらな言葉じゃ……!裏切られる……!」

 

助けます、助けるから……!ありがとう、カイジさん……!この御恩は一生忘れませんから……!

やつらはそう言いながら裏切った……!奴らには得があった……俺を売れば大金……!

大金が入るから……簡単に裏切って・…・・俺を地の底へ落そうとした……!

 

「(やはり伊藤の過去にはなにかがある。不登校であったのは確実だろうが……だがその間に何かがあったのだ……時折匂わせる圧倒的な才覚……それを目覚めさせる何か……)」

 

「(伊藤君は過去にだれかに裏切られたのでしょうか……?今日のことも、嫌な思いをしたかもしれませんね……)ともかく、私は伊藤君のことを信じてますから…では、30分くらい待ってくださいね。ささっとまとめちゃいますから」

 

「そんな早くしなくても、仕事とかあるでしょうし…それからでもいいんすよ…?」

 

「いいえ……!せっかく伊藤君がやる気になってくれているんです……!先生としてできる限りのことをしますよ……!」

 

救世主……天使……女神……!あれだけの口をきいたのに……対応……神対応……!

 

「あ、ありがとうございます……!教室のほうで時間を潰しておきますから……」

 

「はい、ではまた後ほど」

 

---------

 

 

教室に戻るカイジ…人ははけてまばら……だが、まだ談笑している生徒達……

一転空気が重くなる……さきほどまでの明るい空気……変わる……カイジによって……!

生徒たちには目を向けず……席へ向かうカイジ……そこへ寄る織斑……!

 

「なぁ、カイジ。いくらなんでもひどかったんじゃないか?のほほんさんへのあの態度!」

 

「……あ?誰だよそいつ、分かるように言えよ……!」

 

「っな!?布仏さんだよ!カイジを心配して話しかけに来てくれたってのに……!」

 

「織斑には関係ねーだろ……なんでそう人のことに口出しするんだよ……!言っとくがな、あの時誰一人助けも寄越さない、むしろ俺を罵ってきた……なのに、今更白々しいってんだよ……!そんな鼻につく行為されて、笑顔で対応する道理がねーだろ……!」

 

「だとしても、相手は女の子だぞ!?優しくしなきゃダメだろ!」

 

こいつも頭の中お花畑かよ……何言ってやがんだ……!

そりゃお前はブリュンヒルデの弟で、女からろくでもない扱いされたことねーんだろ……!

俺だってお前の立場ならそんな甘いことも言ってるかもな……!

 

「そうかよ。それにしても言ったろ、お前の考えを押し付けんなって……!それは迷惑だってな……!」

 

「考えを押し付けるとかそういうんじゃねぇ!当たり前のことを言ってるだけだろ!」

 

通じない……!会話になっていない……!もはやキャッチボールではない……!ドッジボール……!

相手にただ言葉を投げつけるだけ……!交わらない……!受け止めない…!

受け止めた言葉は返す……剛速球……敵の顔面へ……!

 

「もういい。俺はISの勉強で忙しいんだ。織斑もやるべきことをやれ。俺なんかに構ってるんじゃなくてな……」

 

「っな!?くそ、なんなんだよ……とにかく、女の子には優しくしろよ!」

 

捨て台詞を残し去っていく織斑……箒と呼ばれていた女子にも睨まれる……!

教室の空気は織斑に賛同……!

女尊男卑により……女の男への扱い……雑……雑巾のように……!

女が男を扱き使う……!変わる世間の風潮、流れ……!

それでも根本の部分での力関係……男の方が力が強いということは変わらず……!

意識の外に押し出しているが……そこは忘れていない……!

だから女は男に優しくされて当然……!優しくされたい……優しくされるべき……!

そういう考えの中……!カイジ……またもやアウェー……!

 

優しくされたいなら、人に優しくしろよ……!性別とか云々じゃねぇ……!

人として当然……!優しくしない限り優しくされねぇだろ……!

女だから無条件で優しくされて当然って…通らねぇだろ、んなもん……分かれよ……!

 

周囲を無視……シャットアウトして勉強……集中……!

出ていきたいところだが……駄目……山田先生が来るまでは出られない……教室からは……!

 

---------ーー

 

「伊藤君、ごめんなさい。少し時間がかかってしまって」

 

「大丈夫ですよ、こっちも無理言ってるんですから……それに勉強してたら一瞬で時間過ぎましたし……」

 

いつの間にか日は暮れて……外は夕暮れ……!どれくらい時間が経っていただろうか……

 

「勉強ははかどりましたか?分からないことがあったら聞いてください!私は先生なんですから!」

 

「いや、流石にこれ以上時間とらせるのも申し訳ないっていうか……今のところ聞くことはないっていうか……」

 

「そ、そうですか……えと、これが例の資料です。くれぐれも扱いは注意してくださいね」

 

落胆……圧倒的落胆……感情表現……ストレート……!

 

「ありがとうございます。資料見て分からないところとか、聞きたいことがあったら、山田先生に聞きに行きますから……その時はお願いします……!」

 

下げる……頭……!少なくとも、味方……!信用できる……山田先生は……!

 

なら、見せなければならない……誠意……!出来る限りの誠意……!

 

「あ、頭を上げてください!では、必ずですよ!必ず聞きに来てくださいね!」

 

そういい去っていく……山田真耶……その足取りは軽い……!

資料を握りしめ……カイジ、向かう……!寮へ……!

 

 

 


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