成層破戒録カイジ   作:URIERU

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カイジ、妖渉……!

作戦指令室へと戻ったカイジ、凰、箒の三人……指令室では千冬も交えて作戦会議がなされていた……

 

「篠ノ之、一夏のところにいなくても大丈夫なのか?」

 

「はい、今は重大事ですから。それと千冬さん、私の未熟故に一夏に怪我を負わせてしまい申し訳ありませんでした」

 

「いや、構うな。一夏の行動に問題があったことだ。あの場でお前に一夏の言動を気にせず戦いを続行しろというのも難しい話だ。さて、篠ノ之も戦力に加えた場合も含めて作戦は立ててある。とはいえもう時間がない、作戦を手短に説明する」

 

入って来た三人が席に着くと作戦を説明する千冬……

作戦の全容としてはステルスと高機動強襲パッケージを用いた奇襲作戦であった……

 

作戦は2機ごとの3グループによる奇襲……

一組目はラウラ・デュノアによる長距離狙撃……福音の射程外からの射撃……

デュノアは試験装備である大型レールカノン……ラウラは元々のリボルバーカノン……

その狙撃によって福音は自らの射程内へ入れるため二人へと迫る……その行動に対して次の奇襲……

二組目は箒・鈴によるステルスモードからの強襲……近接戦へと持ち込む……

得られたデータでは福音の格闘性能……それは高いものではない……

当然福音は得意な遠距離戦闘に持ち込むため……箒・鈴から距離を取ろうとする……

その行動に対して最後の奇襲……三組目はセシリアがカイジを運ぶ……

そしてカイジによる零距離破砕砲の一撃……現状の6機の中では条件が整えば……

瞬間火力はカイジがピカ一……断トツである……!

 

千冬の作戦説明が終了し、それぞれ出撃の準備へと向かう……

作戦指令室からみんなが出るのを見届けるカイジ……それから千冬へと話しかける……

 

「そういえばあんたならあの天才の連絡先知ってるんだろ……?ともかく、呼び出せ……俺が話があると言えば……奴はきっと出てくる……俺のISに繋がせろ……!」

 

箒に聞くことも考えたが変な勘繰りをされても敵わない……それに千冬ならば今までの事がある……

素直に聞いてくれる……というよりは何か考えがあることを読むことを期待してのことだが……

 

「束の連絡先か……?あいつが誰かにそう呼び出されるとは思えないが……」

 

千冬も束の性格はよくよく把握している……何やら興味は持っている風な発言はしていたが……

 

「話だけは聞いてやる……そう伝えろ……ともかく、福音が動き出す前に……話をつけておきたい……!」

 

それだけを言い返事も待たず……カイジは作戦指令室を後にした……

 

 

「はろはろ~、どうしたのかなぁ、かーくん!私に用事だなんて!愛の告白かなぁ、私にはちーちゃんがいるんだけども!」

 

束よりカイジにプライベート通信……変わらずファンシーな格好をした束の姿が写る……!

どうやら千冬は頼んだ通り……束へと連絡を取ってくれたようだ……!

 

「時間がない……とりあえず、出せ……!あるんだろ、ワクチン……福音の暴走したプログラムに対応する……特効薬……」

 

ウィルスを制作したならワクチン……少なくとも製作者は持っているものである……

でなければ不慮の事故……下手に感染を起こした時の対策が後手に回るからだ……

また、例え持っていなくても……ウィルスを持っている束なら作るのは容易なはずだ……

 

「んふふ~、なんで私がそんなものをもっているのかなぁ~。そして、例え持っていたとしても、出せなんて言われてそう簡単に出す束さんでもないんだなぁ!」

 

「そうか、だったらこの話は御終い……俺は今後あんたの話は一切聞かない……何をさせたいのか、それは皆目見当もつかないが……あんたの何らかの野望、願い……自分だけでは達成できない何か、なんだろ……?あんたは天才と称賛されながら……自分の願い事も叶えられず朽ちていくわけだ……」

 

どんなに天才とたたえられようとも……天才と自画自賛しようとも……

 

「……!(かーくんの代替物が作れる可能性はそれは零ではない。私自身そのために、色々な画策をしてきてる。でもそれが形になるのはいつのことかは分からない。まぁかーくんが私の願いを達成できうるかは不明だけれども、いまここで変にへそを曲げられるのはなぁ。かーくんは断固としても決めたことは曲げそうにないし)」

 

「ちーちゃんが言ってたろ……?話だけは聞いてやるって……お前がそういう態度取るなら……俺は断固としてお前の話は聞かねぇぞ……?」

 

「それじゃあ、一つだけ質問に答えて。宇宙に行きたい?」

 

「宇宙……?特に考えたこともねぇけど……月でトランポリンみたく飛び回ってみるとか……楽しいかもしれないな……!」

 

思い出されるのは昭和公園……ボーニ……ボーニ……と飛び回った記憶……

 

「ほほぅ、束さんはそうやって答えられるだけでとりあえず満足かなぁ。話戻すけど~それを手に入れてどうするの?」

 

最早束は否定することもなく……カイジの話に乗っていく……

別に自分が犯人であるということをカイジ一人が言い立てても意味はない……

それに自身を表立って否定するというのなら……ISを捨てる覚悟がいることである……

 

「暴走した福音……あんたの手に負えないところへ来てるんだろ……?暴走させたはいいが、そのスペック……性能……機能……それを遠隔でいじれなくなった……故に失敗……織斑、篠ノ之の腕でも倒せるように……そういう風に調整するつもり……それが失敗……できなかった……」

 

それがカイジの考えた束の脚本……自らも仕方なく出ることになり……

当然そのスペックを知ることになった……福音のオーバースペック……

一夏や篠ノ之の腕では……到底倒せる相手ではないことを悟った……

 

「……そうなってしまうと~、ワクチンも遠隔じゃ効かないってことにならないかなぁ?」

 

「直接、打ち込めばどうだ……?遠隔はダメでも、奴に取り付いて……直接プログラムを書き換える……これも効かないとしたら……どうにもならない……力ずくで落とすしかないが……」

 

「福音はいま自閉モードに入ってるからねぇ~、自らの判断でそうしたとは中々に驚きだけども。直接回路を繋げばワクチンを打ち込むのは自閉モードであっても可能だね。でもどうやって取り付くつもり~?はっきり言って福音のスペックに取り付くなんて正気の沙汰じゃないことだよ~」

 

ただ単純に取り付けばいい……というわけでもない……回路を繋ぎ、打ち込む時間もいる……

そんな隙を与えてくれるほど甘い相手ではない……

 

「まぁそれはせめてもの保険……今から結局は残りの専用機持ち……みんなで出ることになった……あんたの策謀の尻拭いの戦場に出る……馬鹿げてるとしか言いようがないが……首謀者の性質故に……他の意志も介在しないだろう……あとは各国の衛星くらい……ハッキングできるんだろ……?戦闘海域の監視ができないようにしといてくれ……あと、もしこのワクチンを使う事態になり……それで暴走が収まったら……その痕跡を消しといてくれ……」

 

恐らく各国が現在最も注目しているであろう場所……それがこの福音戦である……

が、束にとって各国の動きなど正直どうでもいい……そもそも気に掛けてすらいない……

今回の事は紅椿と白式の、絢爛舞踏と零落白夜の稼働データ……それが取りたいがために仕組んだこと……

カイジもそれは読めなかった……周囲に認めさせるが故のものだと考えていたが……

束としては自身の妹がISを持つことに何の反論があるのか……それくらいのものである……

自分に反抗するならすればいい……今回軍用ISが暴走したのを各国が自分と結びつけるのは容易なこと……

明言はしないが、犯人がだれかは分かっている……

それはつまり、いつでも自国のISを暴走させられるということであった……!

 

「かーくんは注文が多いなぁ!でもこれで私の言うことを何でも一つきいてくれるんだよね~?」

 

「俺が言ったのは……話を聞くってことだけだ……その上で判断するに決まってるだろ……碌でもないことをさせられても敵わねぇ……!」

 

普通なら束が乗るわけもない話だが……現状ではカイジの替えはいない……

なので譲歩せざるを得ない……カイジにとっても賭けとなる交渉であったが……

 

「かーくんのいけずぅ~。とりあえずかーくんのISにワクチン送っておくからね!そいつには時間制限、一回使用の自壊プログラムと痕跡消去のプログラムも追加しとくから、一度きりの命だよん!まぁどう考えても使いようないけどねぇ。じゃあ、約束だからね!ちゃんと話聞いてよ~ばいばーい」

 

ニンジンロケットの中に帰っていき……また孤独な空へ帰っていく束であった……!

 

今回束にも予想外の出来事……福音のスペックは一夏、箒のペアでも落とせるように調節・調整……

多少苦戦はする程度にしていたのだが……不審船の存在に加えて、あの場での説教……

戦闘中にも関わらず、お互いが足を止めるなどという事態……そこへ容赦なく攻撃する福音……

ゴーレムであったのなら……その行動を制御することも簡単であったが……

慌てて福音の行動を直接制御しようとしたところ……自閉モードになられたのであった……

 


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