「師匠!」
勢いよくカイジの部屋の扉を開けるラウラ……カイジは椅子に座り外を眺めていた……
「ラウラか……どうするか、決めたのか……?」
「うむ、私の意志で決めた。聞いてくれるか?」
あまり表情に出さない……そんなラウラが不安そうに、カイジへ尋ねる……
「どうすることにしたんだ……?」
「私の意志で未来を掴むと決めた。私はみんなを守るためにこそ武器を持つ!決して暴力ではなく、人のためにこの力を使うことに決めた!」
「そうか……なら、俺は何も言わねぇ……この関係もここまでだ……」
その答えを聞いたラウラは一瞬……悲しそうな表情を浮かべるが……
「そして、私の意志で師匠と呼ぶ!例え師匠が拒もうとも私の意志で師匠と呼ぶ!それが自由というものなのだろう?」
すぐに強気な顔になり……腰に手を当てて不敵な笑みを浮かべる……
「自由ってのは……なんでもかんでもしていいっていう……免罪符じゃねぇ……人が嫌がることは、やるんじゃない……」
「だが、師匠には責任があるはずだ!私を軍属から外し、自由にした責任が!そして、進んで人の嫌がることをする私を指導するがいい!師匠として!」
「お前自身が生き残るために、必要だったことだ……そして、お前自身が妄執に囚われてその力を振るう……あるいは、何者かに利用されるって言うんじゃなければ……止めるまでもないことではあった……」
カイジの中では当然ラウラに武器を持ってほしくはなかった……
最低限でも自らの危険な出生……それを守るために武器を持たせたのである……
それ以外で振るうのだとしたら……それなり以上の理由はいるのである……
「今回のことは予測される危険性。福音がこのすぐ近くを通るというからの迎撃戦。充分正当性のある理由だと私は考える。それが何者かに利用されている、と?」
「今回の事態はどうにも不合理なことが多い……そもそも何故教員が後ろに下がる……?戦闘領域に民間人が出てこないようにするためか……いや、そうじゃないな……他国のスパイ船か……?今回の急な事態にそこまでできるか知らんが……今回の実地研修に伴い、各企業の製品が集まっている……その情報を得ようとする輩がいるのは自然……普通の事……だからといって教員がやることか……?それこそ自衛隊だのの仕事……今回の事が教員も前に出て、それだけでは不安……少しでも数を集めて迎撃したい……そういう趣旨の物だったら、俺も文句は言ってねぇ……単純に誰かの策謀に乗せられてるだけってことはない……そう言える……しかし、なによりも相手が悪い……軍事機密の塊のような存在……それこそたかだか学生や他国の専用機持ち……そんなのに関わらせるべき事態じゃないのは明白だ……だが、それを捻じ曲げてきた存在がいる……それが気にくわねぇ……」
単純に自分の身が可愛いから……危険だから下がるという訳ではない……
明らかに策謀渦巻く戦場……本来前に出るべきやつらは後ろで傍観……
他者の思惑に乗せられて命がけなど……馬鹿馬鹿しいことに思えた……
そんなことのためにラウラにISを持たせられるように交渉したわけでもない……
「そ、そこまで考えておられたとはさすがは師匠です!では、私自身が誰かを守るために力を振るうのならそれは問題はない、この関係も当然結ばれたままと?」
「そりゃ、目と鼻の先に福音……この旅館の上を通る……もしかしたら攻撃してきて民間人や生徒に被害が出る……そんな事態なら何も言わねぇよ……その時に力を振るわない方が流石に問題がある……だが、今回のはさっき説明した通り……誰かを守るために力を振るっているようでその実……利用されているだけ……お前はもっとよく考えて……その力を振るわなくちゃならない……それが守れるなら……師匠でいてやるさ……(しかし、世界トップレベルのアメリカも開発に関わった軍用IS……それがなんで暴走なんてするかね……しかも、ここの近くを通ると来たもんだ……どうみても仕組まれてる……これを偶然なんかで片づけてたまるか……しかし、アメリカがやるにはリスクしかない……他国がやるにしても、技術的に可能なのか……?普通に考えて無理なはず……となると)」
「いるじゃねぇか……身近も身近……灯台下暗し」
そんなことをできそうな輩……セシリアのブルー・ティアーズを解除……
物の数秒……お茶の子さいさい……何の苦労もなく他者のISを解除させた……
そいつなら……今回のことも当然可能……不可能と考える方が不合理……
あまりに簡単な出来事……つい、口をついて出てしまう……
「ん?急にどうしたんだ、師匠?」
「いや、なんでもねぇ……まぁどうにしろ……今回は俺もお前も出番はねーさ……」
「っむ、軍用ISを相手にするんだぞ?数は少しでも多い方がいいに決まっているだろう」
ラウラも軍属……しかもIS部隊の隊長を務めていたほどの腕前……
アメリカ・イスラエルの軍用IS……そのスペックは見ずとも粗方の想像はつく……
「ま、知らなくていいことさ……きっと、もう作戦は決まってるだろう……織斑と篠ノ之の二人にな……(奴が執心しているのはこの二人だろう……篠ノ之ははっきり言って不正に……誰もが納得しない形でISを手に入れている……それのためのデモ……極めてわかりやすいマッチポンプといったところか……それがどうしたって感じ……ただの機体性能でごり押し……もっと腕のあるやつが使ったほうがましだろ……)」
カイジは束があの場にいることは知らないが……束が糸を引いているなら……
確実に口出しするためにあの場に現れる……そう予想するのは容易いことであった……
「白式の零落白夜、紅椿が第4世代であることを考えればたしかに性能は十分、一撃必殺も可能かもしれんが、私から言わせてみれば素人の二人組だぞ?まだ師匠と私の二人だけで出た方がましだ」
「織斑の零落白夜が一撃で落としてくれるさ……きっと、な……(なんらかのトラブルはあるかもしれないが……それがあの天才の考えたシナリオ……別に各国が圧力をかけたわけでもなく……あの天才が上層部に圧力をかけたのかもな……こればっかりは分からないが……)」
実際のところ白式の零落白夜……これが最も作戦に適している……
どのようなスペックか知らないが……絶対に自身の想像を超えた性能……
そんな相手に長時間戦うのは得策ではない……ならば、一撃必殺……
迅速に戦闘を終わらせるのはもっとも理にかなっているといえた……
失敗すればどうにもならなくなる……背水の陣……諸刃の剣……そんな一手だが……
「そうか、師匠がそう言うなら、例え不合理でもそうなるんだろう、そう思えるのが不思議だ。軍に所属していたわけでもない、こういったことには素人のはずだというのに」
「まぁすべては憶測さ……まぁ、とりあえずは知らぬ存ぜぬ……月でも眺めてのんびりしとくさ……」
夕日も落ち始め……空の月が見え隠れし始めていた……いい夜である……
「では、私も隣に座らせてもらうとしよう!月をこのようにのんびり眺めるなど初めてだ!」
軍人生活では当然野営は多い……その時に月を眺めるなど普通であったが……
このように落ち着いた場所で……のんびりと眺めるなど初めてであった……
「(ほんと、どういう生活してたんだか……)なら、お月見でもするか……売店に団子くらい売ってるだろ……」
そう言い、席を立ちサイフを取り出すカイジ……月見酒とはいかないし……時季外れ……
しかし、たまにはこういったことも悪くない……そう思うカイジであった……
「ほう、お月見は聞いたことがあるぞ!なんでも日本では月にハーゼがいるとか」
「ハーゼ……?それに、日本では……?」
「ドイツ語で兎という意味だ!私のいたシュヴァルツェア・ハーゼは黒兎部隊ともいう。あとドイツでは月と言えば薪を担いだ男だな」
諸国にはカニ、女性の横顔、犬、ライオンと月に対する捉え方の違いが見られる……
うさぎなのは日本、韓国、中国といったアジア圏である……感受性の問題であろうか……
「なるほど、ね……そのハーゼとやらが……月で団子をついてるんだとよ……」
「それは実に可愛らしいな!いつしか、見に行って……」
言いさして口を紡ぐラウラ……どこか怯えたような顔をしている……
「どうした……?」
「いや、なんでもないのだ。夏だというのにどこか肌寒く感じてな」
何かに違和感を感じ、辺りを見回すラウラ……しかし、その原因は分からなかった……
けもフレのSSも書き始めたが頭の使い方がまるで違う。
活動報告、次にどの日常の記録を書こうかなというもの。アンケート投票もあり。ご興味あればお答えください。
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