成層破戒録カイジ   作:URIERU

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チフユ、衆議……!

夜、夕食を終えた一同……各々温泉へ浸かったり友達と談話をしたりする中……

 

「なにをしてらっしゃるんですの?」

 

カイジの部屋へと向かっていた、ラウラ・セシリア・シャルロットの3人……

その隣は織斑姉弟の部屋……その扉へと耳を当ててる鈴と箒の姿……!

 

「わ、わわ、セシリア。静かに、静かに!」

 

振り向いた鈴はジェスチャー……口に指を当てて静粛に、静粛に……!

 

「どうなさいましたの?」

 

気持ち声を潜めて、鈴へと窺うセシリア……教員の部屋の前で何をしているやら……

ラウラ・シャルロットはいつの間にか壁に張り付き、中の様子を窺っている……!

 

『千冬ねぇ、久しぶりだからちょっと緊張してる?』

『そんな訳あるか、馬鹿者。んっ!す、少しは加減をしろ……』

『はいはい。んじゃあ、ここは……』

『そ、そこは……くぅっ!やめんか、っつぅ……!』

『ほらほら、すぐに良くなるから。だいぶ溜まってるみたいだな』

『誰のせいだと……あぁ……!』

 

中から聞こえてくるどうにもいかがわしい声……

 

「一体ご兄弟で何をしてらっしゃいますの……お姉さん好きなのは知っていましたけど、これはさすがに引きますわ」

 

口元を震わせて引き気味のセシリア……部屋の内部を想像して半歩後ろへ……

 

「っうわぁ、これは僕もドン引きだよ。そういうことだったんだね、一夏……」

 

変な風に理解する、むっつり筆頭のシャルロット……姉に迷惑をかけたくないのも……

自分をどうとも思っていない風なのも……全ては姉が好きすぎたという解釈……

 

「そういうことって?」

 

疑問を浮かべる鈴……それでは時によっては同性愛ではないか……

 

「いやいや、何でもないんだ、うん、何でも」

 

ははは、と笑ってごまかすデュノア……周りは自分を男だったと思っていた……

そういうことになっているのだから……迂闊な発言は避けなければならないのである……!

 

「ともかく家族のそういった情事に首を突っ込むのは感心しませんわ。早く退散しま……」

 

あまりの衝撃に足元がおろそかになるセシリア……着慣れない浴衣に足を取られ……

 

「っちょ、ちょっとセシリア……!」

 

「ば、馬鹿者。押すんじゃない!」

 

セシリアによって押される二人……当然体勢を崩して物音を立ててしまう……!

 

「そこで聞き耳を立てている者、入ってこい……!まぁ別に逃げても構わん……だが、声で誰かは分かっているぞ……!」

 

部屋の中から聞こえてくる千冬の声……逃げ出すことは簡単である……

だがその選択が何を齎すか……それが想像できないほど馬鹿でもない……!

 

「あ、あはは、はは。こ、こんばんわ、織斑先生」

 

引き攣った笑いを浮かべながら扉を開けて挨拶をする鈴……その額には脂汗が浮かんでいる……

どうあがいてもお叱りは逃れられない……教員の部屋を盗み聞きなど……

 

「まったく、盗み聞きとは感心しないが……まぁいいだろう……一夏、お前は温泉にでももう一度いってこい……!マッサージで汗もかいただろう……」

 

「わかった、ここの温泉広かったから何回でもいくらでも浸かってられるからな!」

 

そう言い、タオルと着替えを持って部屋をでる一夏……残されたのは女子5人……

え……?6人……?女子は5人ですよ、千冬さん……!

え?エネルギー刃なら死なない……?それはどうみても普通の近接ブレっ……

隣の部屋のカイジは居留守……!何度かノックした一夏を完全にシャットアウト……!

いないなら仕方ないか、と……一人温泉へと向かう一夏であった……!

 

「さて、どうした?いつもの元気がないじゃないか」

 

「あ、いえ、そのぉ……」

 

「織斑先生とこのような形で話すのは、初めてと言いますか」

 

「そ、そうだよねぇ」

 

部屋に入った女子達は顔を見合わせて愛想笑いを浮かべてお茶を濁す……

 

「まったく、しょうがない。緊張して喉が渇くだろう……飲み物を奢ってやろう。何がいい?」

 

「え、いえ、そ、そのような気遣いは」

 

「なに、遠慮するな。どれ、適当に取り出すから欲しい奴を取れ」

 

千冬はさっさと備え付けの冷蔵庫の前へ……そうして取り出されたジュース5本……!

生徒達の前に適当に並べ……目線で取るように促した千冬であった……

全員それらを吟味する余裕はない……目の前の一番近いものをそれぞれ手に取った……!

 

「い、いただきます」

 

全員が同じ言葉を口にし……それぞれ飲み物に口をつける……

それを見遣った千冬はにやりと笑って次の言葉を投げかける……!

 

「さて、飲んだな……!」

 

「え?」「はい?」「の、飲みましたけど」「まさか、中に何か入って!?」

 

「そんな訳あるか馬鹿者……教師が生徒に一服盛るか……!まぁ、口封じというやつだ……!」

 

そうして実は6本取り出していた……背中に隠していた炭酸飲料を前に出す……!

プシュッ!と炭酸飲料の缶独特の音が立つ……そして飛び出た飛沫と泡を唇で受け取る千冬……

そのままゴクっ……ゴクっ……!と喉を鳴らしながら飲んでいく……!

 

「っぷはぁ、夏の夜はやっぱりこれだな……!つまみはないが、やはりいい……!」

 

全員が唖然……規則と規律にうるさく……いきなり缶ビールを取り出した思えば……

生徒の前で一気に呷り……あまりにもおっさん臭い姿を見せたのだから……!

 

「なにハトが豆鉄砲喰らったような顔をしておるか……私も人間だ、酒くらいは飲む……一体私を何だと思っているんだ……!」

 

「いや、でもその」

 

「し、仕事中なのでは……?」

 

「固いことを言うな……口止め料はもうみんな飲んだだろう……!」

 

そう言われて全員がハッとしたように手元のジュースを見る……これはそういうこと……!

自分の飲酒を見逃せ……と、つまりはこういうことである……!

 

「さて、いい具合に緊張はほぐれただろう……!そろそろ肝心の話をしようじゃないか……!」

 

ぐるりと首を巡らせて全員の顔を見る……それぞれの事は当然把握している……

 

「さて、お前らは……あいつらのどこがいいんだ……?」

 

あいつら、とはこの場でいえば一夏、カイジの事である……!

 

普段の態度を見れば一目瞭然……誰が誰に執心、恋慕しているのかなど……!

 

「わ、私は別に、以前より一夏の腕が落ちているのが腹立たしいだけです」

 

「あたしは、ただの腐れ縁なだけだから……」

 

「わ、わたくしはクラス代表としてしっかりしてほしいだけですわ。いつも、いつも……そう!頼りないからですわ!」

 

「そうかそうか……ではあいつらにはそう伝えておくとしよう……!」

 

3人の気持ちは当然把握していながらも……冷たくそう言って見せる千冬……

 

「伝えなくていいです!」

 

三人とも一気に詰め寄りその行動を阻止するのであった……!

その必死な様子を見やり……笑い声で一蹴……残りの二人へ目を向ける……!

 

「ぼ、僕はその、ちょっとそういうのはまだ難しいです」

 

千冬はカイジに自身が関わったことは秘密にするように言われていた……

つまり、千冬はデュノアが真相を知っていないと思っているはずである……

だが、カイジは意外にもフォロー…… 千冬へデュノアに話したことは伝えていた……!

 

「(我が愚弟も飽きられても……まぁ仕方ないな……冷たくあしらわれて見捨てられたかと思いきや……自分の国そのものを脅迫してまで……窮地を救ってくれたとなれば……だれしも傾く……心変わりもやむなしだな……!)」

 

千冬としても一夏がいわば見限られてしまったこと……それは悲しいものがあるが……

真相を知った後もカイジの事を知らんぷり……気にもかけていなかったとすれば……

それはそれでやるせない思いをしていたのは間違いないのである……!

 

「私に生き方を示してくれる大事な師匠です!」

 

千冬も実はVTシステムのログを漁った時……ラウラ・カイジの会話を知ってしまっている……

ラウラが自身よりもカイジへと惹かれてしまうのも仕方ない……

それでもなお自身のことを教官として……いまだに見てくれているのだから嬉しいものだ……!

 

「そうか、お前たちにも事情があって難しいことがあるだろうが……その心をまっすぐ育てることだ……!」

 

言いきって二本目の缶を開け、また一気に呷っていく……

カイジとまた酒を飲む機会を作らなければな……と教師にあるまじきことを考えながら……

目の前の恋を追いかける生徒達を眺める千冬……!

 

「さて、全員の気持ちは分かったな……我が弟はまぁ役には立つ……家事や料理はうまい、そんじょそこいらの女は比べ物にならん……!伊藤は、オススメできるがオススメしたくないというか、難しいな……私ですら奴の底は掴めん……!」

 

「きょ、教官をしてそこまで言わせしめるとは流石師匠です」

 

「千冬さんが底を掴めないなんてどういうことよ……」

 

「(やはりカイジさんがラウラさんとシャルロットさんの件で何かをしましたわね……わたくしのときは内輪もめ、身内の恥でしたが……あのお二人を取り巻くものを解決したとなれば……それは怪物と言えるクラスのことですわね)」

 

セシリアとてフランスの公式発表……それを疑っていることは決して口にはできないが……

絶対にそんな簡単な話ではない……何があったか……それはとんと分からぬが……

あまりに出来すぎたあの発表……事実が露見したときにはすべての筋道が立っていた……

普通はなにがしかの穴は開いているもの……紛糾するはずの出来事である……!

 

「まぁ二人とも、何と言えばいいか女に興味を見せぬというか……一夏はそれがなんなのか分かっていない……伊藤はそれを知りつつも自分には合わぬことだと……自ら一線を引いているというべきか……どちらにも壁がある……!それを壊す……あるいは穴を開けて内側に入る……どちらも容易ならざること……!女を磨いてがんばれよ、ガキども……!」

 

セシリアはいわば一歩リード……今日の昼にその壁……誰も見つけていない透明な壁……

その手がかりを見つけている……!頑張れセシリア……めげるなセシリア……!

 

実はこの日の夕方、夕食前に束より箒に専用機が渡されている。

そのシーンはキングクリムゾンされたのだ……!

その場には他の専用機持ちが居合わしたことだけ書いておこう。

アニメ版の受領シーンにカイジの雑コラした、そんな感じだ。

原作のように生徒達の前で渡しているわけではない。


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