成層破戒録カイジ   作:URIERU

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推理パート1


カイジ、刻限……!

???

 

「計画が台無しではないか!なぜ内部の状況の判明がここまで遅れたのだ!」

 

イラつきに任せ、テーブルへ拳を叩きつける初老の男性。

 

「どうやらVTシステム収拾と共にアリーナに通信制限をかけられていた様です。途中から通信がつながらなくなったと報告もありまして。また内部に突入していた教員部隊も出てこなかったため、判別がつかなかったようです」

 

「くそ、忌々しい!VTシステムの購入から今回各関係に使った資金が全てパーだ!おまけに委員会内部も完全に疑心暗鬼になった。誰しもが疑ってかかる状況で、これ以上なにかしようものなら、尻尾を掴まれかねん」

 

彼が今回の策謀に費やした資金は一般人では想像もつかない額になるのは言を俟たない。計画通りに行けばドイツの失墜と第三世代機にAICの情報が手に入る手筈だったのだから……

 

「内部に送り込ませてあるスパイの扱いはどうしましょうか?」

 

「そうだ、それだ!そもそも、あの餓鬼どもが我々の想定通りに動いていれば問題なかったというのに、何があったというのだ!」

 

「当日の事は完全に緘口令が敷かれているようです。現状では無理に問いただすことは難しいですな。正体に気付いてはいるが、扱いを測りかねている状況ですから、場合によっては枝が付いているかもしれません」

 

枝というのは、通信傍受の事である。一本線のはずの通信のラインが横に漏れることを意味している。そのため指示の仕方、情報を聞き出すにも、危険性がある。IS学園内には秘匿通信に特化した施設があるが、送り込んだスパイの状況を考えれば、完全に信用して使う、というのは愚かしい行為であると言えた。

 

「全く扱いづらい。我々にとってもアレはダモクレスの剣となりかねん。次帰ってきたらもう始末せねばならん。まぁペットとして飼うには悪くはない、か」

 

「お好きなことで」

 

「何を勘違いしておるか、儂ではない。あのペド所長のところだ」

 

ブロンドの若干15歳の少女。好事家に対しての贈り物としては極上品である。

 

「おや、これは失礼なことを……では、早めにスケジュールを組むと致しましょうか?」

 

「そうしておいてくれ、今回の謀略が失敗した以上手早く回収せねばならん」

 

回収、表向きには事故死させて亡き者とする算段なのは言わずもがなである。

 

「承知しました。おや、お電話ですな。取って参ります」

 

「全く物事は思い通りにいかんものだ……イグニッション・プランも今回のことでけりが付く、とまではいかんが猶予くらいは出来るかと思っておったのに」

 

そう言いながらワインに口をつける……本来は勝利の美酒であったはずだが……

 

「旦那様、学園で動きがあったようです。どうやら二人目、伊藤開司が専用機を持ったようです。機体名はシュヴァルツ・ヴァルト。第三世代型のようです」

 

「なんだと、ドイツは血迷ったのか!?いきなり男性操縦者へ専用機を送るなど!各国が何をしでかすか見当もつかんぞ!」

 

ドイツ名の機体。この事態混迷し、その渦中の真ん中にいたともいえるドイツが急に機体を、しかも第三世代型を男性操縦者に送ったとなれば、各国がどんな動きをするか分かったものではない。海千山千のこの男でもどのような行先を辿るか想像すらつかない。

 

「いえ、これがどうにもドイツは無関係みたいです。VTシステム事件に触れた学園の訓練機である打鉄が進化、世代が先へ進んでいるのですから進化、でよいですかな。とりあえず、変化をしたとのこと、更には伊藤開司以外起動ができないとのことです」

 

「なんともまぁ不思議なことが起こるわい。常識で考えていてはいかんな。では、スパイには残り期間でターゲットを変更、伊藤開司に接触しその機体の情報を取らせろ。どうにも一人目とその専用機は、先の試合でクソの役にも立ってなかったというではないか。アレがもっとまともに動いていれば計画通りいっていたかもしれんというのに。そんな機体の情報よりも不明機のほうがいくらか面白いわい。それにVTシステムと関連した変化ならば、利用できるかもしれんしな」

 

「そのように手配致します。では、失礼を」

 

魑魅魍魎は策略、謀略を張り巡らせるため蠢き続けていた。

 

 

 

指示の変更をうけたデュノア……当然困惑……!

一夏の言葉を受け取るまま過ごしていた……!

しかし状況は一変……対象及び予定の変更となったのである……!

再来週にはコア情報を本社に持ち帰らなければならなくなった……!

フランスの担当官からは、当然刺される釘……コア情報を持ち帰ること……

それは専用機持ちとして……義務であり、拒否など出来ないということ……!

 

『学園特記事項第二十一、本学園における生徒はその在学中においてありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。本人の同意がない場合、それらの外的介入は原則として許可されないものとする。』

 

いくらこの事項があれど、帰属しないなどおためごかし……建前に過ぎない……!

学園の生徒がどこにも所属していない……そんなことを額面通りに受け止めたなら……

そもそもデュノアがフランスのスパイ……それがすでにおかしいのだ……!

フランスという国家に所属していないのに……フランスのスパイも何もないのだ……!

つまり、どのような破壊工作員を送ろうと……学園に入った時点で国家と無関係……!

上記は極論……だが、まかり通る……事項の適用に対して制限がなければ……

転じてすべてに適用されるわけではないということ……明白……!

 

当然本人が拒否もできなければ……学園側も要求を飲まざるを得ないのだ……!

 

これにより、事態逼迫……困窮……自らの危地を悟るデュノア……

現在コア情報に本社に持ち帰るほどの……重要な情報など入っていない……!

各国の第三世代機と模擬戦をしたのみ……これだけで第三世代機の開発が可能なら……

こんな所に送り込まれずとも……第三世代機の試験機くらい形になっている……!

故にこれは一種の死刑宣告……初めから期限は決められていたのだ……

前のVTシステム事件……あれにより各国がざわ……ざわ……している……!

デュノアの正体にどこかの国が手を伸ばす……それは十分に考えられること……!

不測の事態により、期間を短縮……フランスは致命傷を負う前に……処分……!

その危惧ゆえ、デュノアの取った行動……なんと、相談……カイジへ……!

 




福音つよすぎんごおおおおおおお。シミュレートでは10:0で私の負けだ……

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