放課後、第三アリーナ……そこには凰とオルコットの姿……!
「あら、鈴さん、お早いですわね」
「セシリアじゃない、あんたこそ早いわね。まぁ私は今から学園別トーナメント優勝に向けて特訓するからね」
「わたくしも全く同じですわ」
二人とも目的は同じ……しかし、理由は……
「(セシリアもやっぱり優勝して一夏のことを狙ってるわけね。普段興味ない振りしてちゃっかりしてるんだから!)」
「(前の失態はカイジさんにかばってもらって事なきを得ましたわ。今回は自分で結果を残さなければなりません)」
かみ合わない……どうにもずれたままの二人である……!
「この際どっちが上か決着つけようじゃないの」
「あら、よろしくてよ。いい訓練になりますわ」
「ふふん、もちろん私が勝つことは分かりきってることだけど」
「勝負に絶対はなくってよ。カイジさんから教わりませんでしたこと?」
「あ、あの試合は途中で終わっちゃったけど、あのまま続けてたら私が勝ってたわよ!」
クラス対抗戦……所属不明のIS襲撃事件により……中止……!
カイジと凰のカード……その一枚しか切られなかった……!
試合が進んでいれば……まず鳳の勝ち……生徒たちの大半はその見方……意見だが……
ピット内部の観戦者たちは……カイジが押し切られて終わる……とは考えてはいなかった……!
勝てるかは不明だが……カイジの言う……勝負に絶対はない……のである……!
「そうですか。そこで、勝負の行方は分からなかった、くらい言えればよいのですけれど」
自らの腕に……オルコットとて自尊心はある……だが、慢心を捨て去った……
また、自らの腕を事実のみによって……評価できるようになっていた……!
「どういう意味よ!」
「それは、自分でお気づきになって?でなければ意味の無いことですから」
「ふん、あんな男にこの私が負けるわけないったら。あんたに勝ってそれを分からせてあげるわよ!」
「まぁわたくしも鈴さんが今カイジさんと戦って、負けるとは思っていませんわ。わたくしが言いたいのはそういうことではないのですわ」
お互いにISを展開……勝負を始めようとするが……直後衝撃……!
近距離に着弾……砲撃を行ったのは……シュヴァルツェア・レーゲン……ボーデヴィッヒ……!
「っな!?いきなりぶっ放すなんていい度胸してるじゃない!」
「どういうおつもりですの?」
「中国の甲龍にイギリスのブルー・ティアーズか。データで見たときのほうがまだ強そうだったぞ」
「遥々ドイツからボコられに来たってわけ?大したマゾっぷりね!」
「鈴さん、落ち着いてくださいまし。どういうつもりかは分かりませんが、アリーナの使用許可は取ってらっしゃるのかしら?」
「ふん、貴様らのような者が私と同じ第三世代機持ちとはな。数くらいしか能のない国なのに人材不足とはな。そこのイギリス人もずいぶんと臆病者だな」
「こいつ、スクラップがお望みってわけ!?」
「国や人種を馬鹿にされるのは感心しませんわ」
「ふん、二人掛かりで来てもいいぞ?下らん種馬を取り合うようなメスにこの私が負けるものか」
「……いまなんて言った!?私の耳にはどうぞ好きなだけぼこって下さいって聞こえたんだけど!?」
「この場にいない人間を侮辱をするなんて、そればかりは許せませんわ……!」
戦闘の火蓋……切られる……ボーデヴィッヒvs鳳・オルコット……!
その頃カイジは更衣室で、デュノアのこと……ボーデヴィッヒのこと……
これからどうするのか……真剣に悩んでいた……!
とある廊下……
「第三アリーナで模擬戦やってるらしいよ。専用機持ち三人だって!」
「え、まじ?見に行く、見に行く!」
一夏とデュノア、廊下を歩く二人……聞こえる……通りすがりの生徒の会話……!
「一夏、専用機持ちって」
「とにかく、行ってみよう!」
なんとなく……嫌な予感を覚えた二人は……第三アリーナへと向かった……!
アリーナの様子をピットの縁から眺めるカイジ……!
「なにがあったんだよ……戦ってるのはオルコット、凰、ボーデヴィッヒ……どうやら2vs1のようだな……ボーデヴィッヒが二人に喧嘩を売った……と考えるのが妥当か……しかし、強いな……二人を同時に相手をして……いい勝負どころか勝ってやがる……あの第三世代の特殊武装……1vs1じゃ詰みじゃねぇか……許されんのか、あんなもん……」
カイジがピットに出てきた……その時点で勝負の趨勢はほぼ決まっていた……!
「二人の負け、か。こりゃ学年別トーナメントは出来レースになるな……特殊武装なしでも……1vs1出来るやつがいるかどうか……って……おいおい……!」
ボーデヴィッヒ……止まらず……!すでに二人のSEは尽きている状況……!
無慈悲にも……未だに攻撃を加える……!
「だが、攻撃している相手のことを……見ていない……?視線の先は……なるほど、織斑か……ボーデヴィッヒが零落白夜のことを……知っているかどうか……それは分からんが……激情に駆られて……織斑がアリーナのバリアを切り裂いて……なんてされたら洒落にならねぇ……」
当然バリアが壊れたら……アリーナは使用中止……!
そして、第三世代機の模擬戦……そう見られるものでもないため……観客は多い……
バリアが無くなれば……どのような被害が発生するか……それは、言うを待たない……!
「さて、力づくで行っても負けるのは明白……言葉も通じないような奴だが……いや、教官を使えば通じるか……!」
カイジ、ライフルを構え……ボーデヴィッヒの近くへ狙いをつけ、射撃……!
「……む?なんだ?」
近くに着弾……戦っていた二人は最早……武装を出せる状況ではない……となると……
「あの男か。仇討ちにでも来たのか?」
ピットの縁に立つカイジ……そこから動く様子は見せない……!
「もう、決着はついてる……お前の勝ちだ……それでいいだろ……?」
「降りてきて戦わないのか?」
「悪いが……今は、そういう気分じゃないんでな……」
会長は言った……王は、勝てない勝負はしない……と……!
「戦え!教官の認めたその力、見せてみろ!」
「(やはり、言葉じゃ通じないか……)その教官には……試合が終わった後も相手に……攻撃を続けるよう習ったのか……?」
カイジ、説得……通常の道理は通じない……ならば、相手の道理に合わせる……!
「っむ?」
「もしそう習ってないなら……お前の行為は……お前自身が嫌う……教官の経歴に泥を塗る行為……ってことになるんだぜ……?」
「この私が、教官の経歴に泥を塗るだと!?」
案の定……ボーデヴィッヒは乗ってくる……!
「教え子に満足に物も教えられない……最低限の規則も守らせられない……そう捉えられるってこと……それが嫌なら、引くんだな……」
「ふん、この場は私が引こう。命拾いしたな」
「(素直なんだか……アホなんだか……本当に厄介なことを……押し付けられたもんだ……)」
ボーデヴィッヒが去るのを見送り……オルコットたちの元へ飛んでいく……!
「か、カイジさん……みっともない姿をお見せしますわ……」
「とりあえず、医務室……体に大事がない、ってこともない……歩けるか……?」
「え、えぇ。どうにか……っく、ぅう……」
どうやら歩くのも厳しい、か……抱えていくなんてのは……おれの柄じゃないぞ……
「大丈夫か?鈴!セシリア!」
織斑か……こういうのは織斑が似合うが……凰がいるしな……
デュノアは……女……腕っぷしに不安がある……くそ、手がない……!
「織斑は凰を頼む……オルコットは俺が看よう……」
「あ、あぁ。分かった。ありがとな、カイジ。止めてくれなかったらどうなってたか」
「いいってこと……ボーデヴィッヒの明らかな規則違反だ……さて、セシリア、我慢してくれ……!」
そう言い……首と膝裏に腕を差し込み……いわゆるお姫様抱っこ……羨ましい……!
私もカイジにお姫様抱っこされたい……!
「それでも、ありがとよ。ほら、鈴も抱えるぞ!」
凰、オルコット両名を……連れていく……保健室へ……!
保健室にて……
「お手数をお掛け致しますわ……」
「いいってこと……で、なんで、あんなことになった……?」
「そ、それは……」
「言えない……のか?ボーデヴィッヒは今日……アリーナの使用許可……取ってない……それは、同じアリーナを使うお前も、知ってること……!そんな相手と模擬戦……理由によっては私闘……専用機はお前らの……玩具じゃねーんだぞ……!」
何も反論できないオルコット……考えてみれば迂闊……
いくらボーデヴィッヒが……他者を侮辱したといっても……
専用機をアリーナの使用許可も下りていない相手に……私闘に使った……!
その上2vs1で負けるなど……なんという無様……!
逆に勝っていても……2vs1という事実……!
「っな!?わざわざそんな言い方しなくてもいいだろ!?カイジ!」
「俺は、間違ったことをいっているか……?」
「間違ってるかどうかとか、そういうんじゃなくて……怪我をした女の子を追い詰めなくたっていいだろ!」
「そうか……だそうだ、オルコット……良かったな……で、織斑先生……あんたの教え子が無許可で……乱闘騒ぎを起こしたが……なんか言うことはないのかよ……?」
保健室の扉を開けて入って来た……千冬に真っ先に声をかける……!
「ち、千冬ねぇ」
「ふむ、ボーデヴィッヒは今日……アリーナの使用許可を取っていた……私の方に申請はあったが……反映させるのを忘れていてな……こちらのミスだ……」
「(ふん、それじゃボーデヴィッヒの行為だけが正当化……残る二人が違反行為を進んで行ったことに……変わりはないんだがな……)ふーん、そういうこと……あんたがそういうなら、そうなんだろうな……悪かったな、オルコット……俺の早とちりで、変な事言ってしまって……ボーデヴィッヒが使用許可を取っていたなら……事実上問題ないもんな……!」
「っう、うぅ……」
自身の行為をある種の正当化はできたが……何一つ救われなかった……
「カイジ!」
「嫌われ者は退散しますかね……!それじゃあな……」
「カ、カイジさん……」
「セシリア、あんた……もしかして……」
そういい、カイジは保健室の出口へ向かう……千冬とすれ違う瞬間……
「伊藤……すまんな、助かった……」
「ボーデヴィッヒに……何があった……あいつの過去を……知ってるんだろ……?」
「それは……」
「極秘事項ってもしいうんなら……俺に押し付けんじゃねぇぞ……!」
そのまま、保健室を後にする……カイジであった……!
一応補足しておきますが、千冬はボーデヴィッヒのためだけにアリーナの申請の話をしたわけでは勿論ありません。ちゃんと鈴・セシリアの両名にお咎めがいかないようにするための処置でもあります。